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(2)鷹巣町お出迎えバス(秋田県鷹巣町)
DRT等の新しい交通システム国内事例
 
 本事例は、金載(2003)「高齢者に配慮したフレックス型バスの適用可能性とその評価に関する研究」東京都立大学大学院都市科学研究科修士論文」より内容を抜粋し、作成した。
 
1)鷹巣町の概要
 鷹巣町は秋田県の県北地方のほぼ中央に位置し、面積は325.97km2、人口は21,820人(平成15年3月31日現在、住民基本台帳による人口)で、65歳以上の高齢者人口は6,157人(全人口に対する高齢者比率は28.2%)である。
2)鷹巣町お出迎えバスの概要
 スウェーデンのフレックス・ルートの運行コンセプトに準じて設計され、鷹巣町、国土交通省東北整備局、東京都立大学、東京大学により、平成14年(2002年)10月、平成15年(2003年)2月に2週間ずつ実験運行されたバスである。
 運行特徴は、起終点がありミーティングポント間を自由に結び運行する。利用者は1時間前まで予約センターへ電話やファックス、携帯メールで予約し、利用できる。利用モニターは主に高齢者が中心である。
(1)実験運行の対象地区
 実験運行の対象地区は、図2-39に示すとおり、坊沢・深関・新田中の3地区であり、中心部から約2〜5km離れている。対象地区の人口は合計約2,139人であり、65歳以上の高齢者は約700人居住している。
 
図2-39 実験運行の対象地区
 
(2)実験運行のモニター
 事前調査により実験運行に参加するモニターに関する基本属性を表2-25に整理した。
 
表2-25 実験運行に参加するモニターの基本属性
性別 男性9人、女性28人
年齢 60歳未満(3人)、60歳代(14人)、70歳代(15人)、80歳以上(5人)
運転免許有無 自動車免許(7人)、バイク免許(4人)、免許非保有者(26人)
歩行困難度
(階段の上下り)
かなり困難(9人)、少し困難(7人)、楽にできる(21人)
外出頻度 週1〜2日(14人)、週3〜4日(7人)、週5〜6日(6人) 毎日(4人)、月2日(5人)
 
(3)実験運行の概要
 実験運行の前に、利用モニターを対象としてアンケート調査を行い、運行ダイヤなどの運行形態を決定した。実験運行の概要を表2-26にまとめた。
 
表2-26 実験運行の概要
実験運行期間 2002年10/21(月)〜11/3(日)の2週間
実験対象地区と
利用対象者
鷹巣町中心市街地から約2〜5km離れた坊沢・新田中・深関地区の住民から選ばれた36名のモニター(主に高齢者)
バスの愛称 「鷹巣町お出迎えバス」
運行ダイヤ
(起点の出発時刻)
予約時刻の目安として片道で約2時間間隔 居住地⇒中心部:8時10時12時15時17時 中心部⇒居住地:9時11時14時16時 但し、予約がない便の場合、運行しない
予約方法 口頭(電話)と携帯電話によるEメール
予約から
運行までの流れ
(1)バスを利用したいモニターが携帯電話等により、利用希望便名と乗車区間等を運行1時間半前までに予約する。 (2)予約センターは予約を集計し、運行経路及び予定通過時刻を計算し、その内容を予約者(モニター)に通知する、同時にWEB上に予定運行経路と時刻を公開する。 (コールバックは基本的に予約センターから電話する。メールによる予約の場合はメールで返信する)。 ※基本的にモニター限定の乗車であるが、 a)モニターとの同乗やb)WEB上に公開した運行経路と同じ目的地の場合、一般の人も乗車可能にした。
経路設定方法 居住地行き、中心地行きともに、予約のあったMPのみを最短で結ぶように経路探索プログラムにより設定
 
(4)ミーティングポイント(MP)
 中心市街地におけるMPは病院やスーパー、銀行等の施設の直ぐ前に設置した。また、居住地のMPは利用者の自宅の近くに設置した(5m〜130m)。図2-40に示すとおりに既存バス停に比べ歩く距離が短くなった。
 
図2-40 モニターの自宅からMPまでの距離
 
(3)中村まちバス(高知県中村市)
DRT等の新しい交通システム国内事例
 
1)中村市の概要
 中村市は高知県の西南部に位置しており、面積は384.50km2、人口は34,647人(平成15年3月31日現在、住民基本台帳による人口)で、65歳以上の高齢者人口は8,499人(全人口に対する高齢者比率は24.5%)である。
 
2)中村まちバスの概要
 中村まちバスはGPSを活用してバスの位置を検知し、リアルタイムで運行情報を提供し、利用者は予約センターに電話(FAX)や専用情報端末を用いて予約し、利用できる自由度の高い方式のバスである。スウェーデンのフレックス・ルートが30分おきに出発地と目的地の方向を決めて運行しているのに対し、まちバスは一人一人の要望にこたえるタクシーに近いサービスを提供している(表2-27、図2-41)。
 
表2-27 中村まちバスの概要
運行主体 中村市(運行委託:高知西南交通バス会社)
運行開始日 平成12年4月10日〜6月30日(実験運行)
平成12年7月1日から継続運行(本格運行)
運行時間帯 8:30〜11:00、12:00〜14:30、16:00〜18:00 (7hrs)
運賃 大人 200円 小人 100円 (均一料金)
乗車定員と車両等 24人乗りのマイクロバス、GPS、DoPa通信網 LED方向幕(行き先の表示)、車載機による制御
一日利用者数 平成14年度現在:平均26.3人/日(6〜49人) 以前の市内循環バス:平均7人/日(7便運行)
出典:金載、秋山哲男(2002)「フレックス型の中村まちバスの利用特性とサービスの質に関する基礎的研究」土木計画学研究・講演集Vol.26
 
図2-41 中村まちバス
 
3)運行ルート
 既存の免許ルート(循環バス路線)にある28ヵ所の既設バス停に加え、新たに市街地の主要道路のほとんどを追加免許区間とし、そこに公共施設などを中心に29ヵ所のバス停を新設した。その結果、「まちバス」は対象地区の全領域にわたってきめ細かに対応できるようになった。図2-42はまちバスの運行ルート図である。
 
図2-42 中村まちバスの運行ルート
出典:地域ITS効果事例集(ver.2.0)国土交通省道路局ITS推進室 ホームページ
 
4)「中村まちバス」の利用手順
 定時運行及び運行順路はなく、デマンド方式(呼出応答方式のバス)に応じてコンピュータの計算により最適(最短距離・時間)として導かれた経路に従って運行するシステムを有するが、実際は運転手の勘で運行している。
 利用者がまちバスを利用するまでの流れを整理すると以下の順序である。
(1)バスの利用者は予約センターに電話やFAXで乗車バス停・利用希望時刻・目的地などを伝える。
(2)予約センターのオペレータはコンピュータにその内容を入力し、コンピュータの計算によるバスの迎え可能時刻を確認して、利用者にバスの到着予定時刻を伝える。実際の運行ルートは運転手の勘によるところも多い。
(3)予約が成立したら、利用者は乗車予定時刻に乗車バス停で待って、バスに乗る。(おおむね中心部10分〜15分、市街地中心部から遠い「トンボ自然公園」でも15分〜45分以内でバスが迎えに来る)
 図2-43はまちバスの予約タッチパネルと車載機器の写真である。
 
図2-43 予約タッチパネル、車載機器
(上)施設内のタッチパネルで予約をすると、
(下)運転席でバス停が確認できる
 
5)国、自治体等からの補助金等
 産業・社会情報基盤整備事業(通商産業省)運行費補助750千円
 「こうち2001プラン」KoCoRo’99(地域ITS)実験事業(高知県)
 委託料 12年度 4,035千円 13年度 13,772千円
 この他、通商産業省からシステム構築のための初期投資が補助されている。
注)中村市はITS関連5省庁(通産省、警察庁、運輸省、建設省、郵政省)による自動車走行管理最適化システムの実験モデル地区に選ばれ、デマンドバスの実験運行が2000年4月10日から6月30日まで行なわれた。
 
6)運営にあたっての留意点(工夫した点、苦労した点)
 システム面では、バスの運行経路にショートカット方式の適用による待ち時間の短縮、FAX及びタッチパネルによる予約受付、回答、ITSを活用(コンピューター・アルゴリズム、GPS、携帯電話のパケット通信、インターネット、GPSを活用してのバス位置情報の取得及び提供等に取り組んだ。
 施設面では、中村市内にバス停を57箇所設置(既存28、新設29)、病院、ショッピングセンター等と連携し、施設内(ロビー等)をバス待合所に設定しており、待ち時間をバスの位置をモニターで確認しながら施設内で過ごせるようにした。
 
7)事業の実績、効果
 3ヵ月間の実験運行を行い、利用客が約5倍に増加、好評のため引き続き廃止代替路線として運行を開始し、乗務員も1名から2名に増やし、休憩等による運行不可の時間の設定をなくしたことにより、徐々に利用者が増加し、平均すると実験運行時の倍の利用者数になった。







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