(3)フレックス・ルート(スウェーデン、イェーテボリ市)
DRT等の新しい交通システム海外事例
本事例は、交通エコロジーモビリティ財団「欧米主要国における高齢者・障害者の移動円滑化に関する総合調査報告書、平成13年3月」のp.154〜160の内容から抜粋し、作成した。
1)イェーテボリ市の概要
イェーテボリ市はスウェーデン第2の都市で、人口はおよそ50万人である。近年は公共交通の刷新という点で評価を得ている都市でもある。およそ200両のトラムと200台のバスがKOMFRAMというリアルタイム情報システムにより運行・管理される。
2)フレックス・ルートの運行開始の経緯
スウェーデンでは、送迎サービスは社会のコストとして賄うという認識がある。イェーテボリ市では、従来実施されてきたSTSにかかるコストの低減やサービス水準の向上を模索してきた。イェーテボリ市のフレックス・ルートは、1996年10月よりイェーテボリ市で社会実験を経て導入された交通システムで、欧州連合(EU)とスウェーデン政府の支援(KFBからの資金)を受けて、STSの新たな方向性を探るプロジェクトとして取り組まれた最初の事例である。
フレックス・ルートは、フレキシブルなサービス・ルートの呼称である。通常のSTSとは別に運行されている。STSのより効率的な運行方法を検討するために、個別交通のきめ細かな利便性とバス車両による効率性を組み合わせたサービスとして位置づけられる。両者の効率性とコスト面の課題を積極的に解決し、さらに利用者をSTSの利用資格をもった者に限定することなく、これまで公共交通を利用していた高齢者を広く取り込むこともねらいとされた(図2-33)。
図2-33 フレックス・ルートの位置づけ
3)フレックス・ルートの運行システムの概要
(1)利用資格
地域に居住する65歳以上の高齢者は、利用可能である。STSユーザの取り込みも狙っているが、STS利用資格を持つ人に限定するものではない。これまでSTSの利用資格を有しておらず、かつ公共交通機関の利用が多少困難になってきた層の取り込みも視野に入れているためである。また、65歳未満でも通常の公共交通機関の利用では介助を必要とする人ならば利用することができる。
(2)利用方法(予約方法)
利用する場合は、乗車及び降車するミーティングポイント(停留所に類似しているが必ずバスが来るわけではないのでこう呼ばれている:以下MP)の番号を告げて予約を入れる。MPには番号が付されており利用者が認識しやすい。MPには、そこで乗降する利用者の予約が入っていない限りバスが経由することはない。したがって、予約が少なければバスの走行時間は短くなるが、多くのMPで予約が入った場合は、バスの走行時間が長くなる。フレックス・ルートは、終点までの乗降の予約状況により、バスの運行時間が変化するのである。
予約受付は利用日の2週間前から可能である。月曜日から金曜日までの朝7時から夕方5時まで受け付けられている。
(3)運賃
運賃の設定は通常の公共交通と同じで、利用者は定期券またはその都度10Skr(スウェーデン・クローナ1Skr=約14円と換算すると140円)を支払う。イェーテボリ市にはタクシーによるSTSがあり、通院目的でSTSを利用する場合には60Skr(840円)がかかり、通院以外の利用の場合は25Skr(350円)である。こうした既存のSTSの運賃と比較すれば、フレックス・ルートの運賃設定は利用のインセンティブとして働いていると考えられる。
(4)運行時間と運行経路
運行時間は平日の9時から17時までである。同地区には74のMPが設置されている。予約時の利便性を考え、番号表示を付してわかりやすくしている。予め高齢者の居住状況を地理的に把握し、さらにSTS利用者がよく行く利用先の情報と合わせて主な運行エリアを設定した。その上で高齢者の住宅から、最大でも150m歩けばMPに到達できるような配慮がなされている。
運行スケジュールは30分間隔で、中心のショッピングセンターを目指して、ヒュースボー地区の両端(現在は病院)から各1台のバスが発車する。途中で予約があるMPのみ経由してタウンセンターに向かう。起点は定時に発車し、途中で需要のある地点だけを経由するデマンド型の運行である。
運行車両
車両はオムニノバ社のマキシライダーを使用している。シートアレンジにより、10〜16人乗りとして使用できる。立ち席は認められないので、座席定員制である。そのため、どこで何人乗車し、どこで何人下車するかという、予約時の乗降人数の把握が重要になる。
図2-34に、フレックス・ルートの路線図、車両、車内の様子を示した。
図2-34 フレックス・ルートの路線図、車両
|