(2)パーソナルバス(イタリア、フィレンツェ市)
DRT等の新しい交通システム海外事例
1)フィレンツェ市の概要
イタリアの北西部トスカーナ地方の首都。人口約45万人の都市。
2)公共交通、移動の特徴
ATAF(Azienda di Trasporto Area Fiorentina)がバスを運行しており、フィレンツェコムーネの交通事業体として9市をカバーしている。9つの自治体地域の面積は538km2、人口は約600,000人である。ATAFコンソーシアムはフローレンス地域での全ての地域公共交通を統括している。
フィレンツェ市街地は自家用車が多く、慢性的な渋滞がある。(図2-30)
図2-30 フィレンツェ郊外のCampi Bisenzio地区
3)DRS(Demand responsive system)の導入背景
DRSは5市で導入されており、いずれも郊外部のバス便確保のために、一般路線バスがカバーできない低密度な地域などをパーソナルバス(Personal Bus)として運行している。郊外からの車の乗り入れ抑制を導入目的のひとつとする等都心部の渋滞対策も考慮したシステムである。
4)システム概要
「パーソナルバス」サービスは、平日の朝6時半から夜7時半まで運行されている電話呼び出し式のバスサービスであり、1997年から運行開始された。
Campi Bisenzio地区内(地区内人口4万人)におよそ200の停留所を設け、利用30分前までに電話をしてリクエストする方式である。一年前から乗車5分前予約を導入し、バスが運行中であれば待たずに乗れることが多い。同地区は全人口に対する高齢者比率が30%を越える。
車両は現在小型バス8台で、申し込みの電話では乗車停留所と降車停留所を知らせ、希望の利用時間を知らせる。オペレーターは利用者に予想される範囲で正確な乗降時刻を伝える。予約電話はフリーダイアルで料金はかからない。
予約のある停留所にバスが来る際、今のところ車載コンピューターはなく携帯電話で連絡をとっている。ただし、現在は電話予約件数が多くなり、ドライバーが対応しきれず問題になっている。11月からINVETEというジェノバで既に導入された車載端末システムを使用し、運行管理する。
運賃は通常のATAFの路線と同様で、1時間チケットが1ユーロである。(図2-31、図2-32)
図2-31 フィレンツェ市ATAF「パーソナルバス」と 路線バスの両方が発着するバス停
図2-32 「パーソナルバス」バス停に停車中の フィレンツェ市ATAFのバス
5)プランニング
停留所へは概ね200m歩けば到達できるように配慮されている。ルートは、住宅地内から大型ショッピングセンター、幹線バスルートがある道路などを結んでいる。
6)その他
同地区には以前は2路線の一般路線バスがあったが、1日に100人程度の利用者しかなかった。パーソナルバスの導入で1日の利用者が4,000人を超えている。
現在はSAMPOよりも予算が多いFAMS(Flexible Agency for collective demand-responsive Mobility Services)プロジェクトでシステムの改善に取り組んでいる。テクノロジー開発はEU資金で進むが、運営には国や自治体の協力と資金提供が必要となる。
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