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2.4 DRT等の新しい交通システム
2.4.1 海外事例
 
(1)デマンド・レスポンシブ・システム(ベルギー、ハッセルト市)
DRT等の新しい交通システム海外事例
 
1)Hasselt市の概要
 ハッセルト市はベルギーフランドル地方リンブルグ州の都市で、人口7万人。ブリュッセルから鉄道で80分の距離に位置する。州の人口は約80万人で、ハッセルトと隣接のゲンクを合わせてリンブルグ都市圏を形成している。伊丹市と姉妹都市である(図2-27)。
 
図2-27 ハッセルト市の位置
©Lonely Planet
 
2)公共交通、移動の特徴
 ハッセルト市の交通は、国鉄と市内のバスのみである。この地域の公共交通はフランドル地域公共交通会社が運営している。
 1997年から市内の公共交通(=バス)は全て無料化となった。利用者相当分の費用は市から交通局に支払われている。
 フランドル地域には、主として、農村、工業地帯にスプロール的に点在した人口2〜3万の小都市が多く、利用者のトリップが分散化している。ハッセルト市における世帯当たりの自家用車保有台数2.36台である。
 
3)Demand responsive system導入の背景
 DRS(Demand responsive system:基本ルートを持ち、電話予約により迂回する運行システム)の導入経緯は次のとおりである。
・オフピーク時間帯の過疎地のバス運行維持が困難になり、廃止代替交通が必要。
・様々な個別の目的地ニーズに対応できるシステムが必要。
・幹線ルートをいちいち経由しないで、目的地間の移動時間を最小化できるシステムが必要とされた。
 
4)システム概要
 1992年運行を開始し、基本ルートを持ち、電話予約により迂回する運行方法を取っている。ドア・ツー・ドアではないが、予約は1時間前までにすればよく、誤差は5分程度。障害のある人に対しては、ドライバーが玄関までの迂回を行う。
 DRSの基本的な停留所は400m間隔で設置されており、州政府基準の最寄りバス停までの許容距離が750m以内(但し図上の直線距離)に適合する。
 18市町村35のエリアで32台のバスが運行中で、そのうち48%は予約によるトリップ。予約トリップの迂回運行で、1人あたりの乗車時間が長くなるものの、細かい目的地ニーズへの対応と乗り継ぎの利便性にも考慮し、小都市や大都市のオフピーク時間帯の交通手段として機能している。反復トリップ、長期トリップの予約も可能であるが、概ね2ヵ月までを目途にしている(図2-28、2-29)。
 
図2-28 ハッセルト市 De Lijnの車両
 
図2-29 ハッセルト市 De Lijnの予約センター
 
5)プランニング
 ルートの検討に際して、理論上の停留所設置位置を現地調査により検証し、ダミーの予約を入れて実際に運行する等、最適化のための調整を行っている。実施後もサービスの見直しを行い、営業開始後もダミー予約による検証を続けている。
 
6)その他(アクセシブルな路線バス車両の有効活用)
 ハッセルト市内の路線バスは90%が低床車であるが、停留所の整備は16%に止まっている。そのため、アクセシブル車両に確実に乗車するために、電話予約により配車することが可能となっている。全体の予約のうち3%だけが対応できないが、それはDRSの車両で対応している。現在はそうした予約を利用して、28人の固定利用者が平均週に16回利用している。予約方法はインターネット予約対応のシステムであるが、高齢者が多いので実際はほとんどが電話予約である。
 SAMPOからの補助金を活用し、オリジナルのソフトウェア(RING)開発を実施した。







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