2.2 地方自治体のSTS関連交通政策の現状
積雪地域である青森県を中心に高齢者・障害者関連の交通政策の現状を整理した。
青森県、青森市、八戸市、六戸町の順で各担当部局別に整理した。
(1)青森県健康福祉部 企画振興部
地方自治体のSTS関連交通政策の現状
1)青森県の概要
・人口減少や高齢化の深刻化:青森県全人口1,475,728人(平成12年10月1日現在、国勢調査)、287,099人(19.5%)が65歳以上の高齢者であり、全人口に占める高齢者比率は全国平均の17.3%を上回り、人口減少や高齢化が進んでいる。
・冬期の交通:冬期には雪の影響を受け、道路では通行不能区間の増加や車線が狭くなり、渋滞の原因となったり、積雪のためにバス停の機能が十分果たしにくくなっている。鉄道、航空では、ダイヤの乱れや欠航などが発生している。
・障害者数の増加:青森県の身体障害者手帳交付者数は58,063人(平成14年3月31日)と年々増加の傾向にある。愛護手帳の交付を受けた知的障害者数は8,656人、精神障害者保健福祉手帳交付者数は4,859人である。また、障害者の約6割が高齢者である。
2)生活交通確保
(1)バス
青森県では、バスに対する国の補助制度(県の負担もあり)以外に県単独の補助制度を設けている。
需給調整規制廃止後の生活交通確保のため廃止代替バスとして、市町村自らが保有する自家用バスを利用して、道路運送法第80条によるバスを運行する事例が増えている。
表2-5は青森県内交通事業者のワンステップバスの導入状況を示したものである。
表2-5 青森県におけるワンステップバスの導入状況
事業者名 |
保有車両数(台) |
H14年度までの ワンステップバス(台) |
導入率(%) |
H15年度導入予定の ワンステップバス(台) |
弘南バス(株) |
332 |
34(20) |
10.2 |
15(15) |
十和田観光電鉄(株) |
109 |
34(29) |
31.2 |
6( 6) |
青森市交通部 |
200 |
15(11) |
7.5 |
0 |
八戸市交通部 |
150 |
5( 5) |
3.3 |
0 |
南部バス(株) |
119 |
25(11) |
21.0 |
5( 5) |
下北交通(株) |
55 |
7( 7) |
12.7 |
5( 5) |
JRバス東北(株) |
53 |
0 |
0.0 |
0 |
小計 |
1,018 |
120(83) |
11.8 |
31(31) |
|
注:( )内はスロープ付き車両の内数 ワンステップバスとは、ステップが一段で、ステップの高さが280〜350mm、床面の高さが530〜550mmのバス。車いす使用者がスロープを使って乗降する際、スロープの傾斜が急で運転手の介助が必要である。
資料:社団法人青森県バス協会「ワンステップバス導入状況」(平成15年2月1日現在)
(2)市町村の単独事業
県下の市町村が、単独事業として行っている障害者の移動関連補助制度を、表2-6に整理した。
表2-6 平成13年度障害者施策市町村単独事業(単位:市町村数)
タクシー利用料助成等 |
16 |
バス利用料助成等 |
5 |
車いす・日常生活用具貸与等 |
4 |
補装具自己負担助成等 |
3 |
自動車運転免許取得助成 |
2 |
自動車改造助成 |
2 |
人工透析患者交通費助成 |
2 |
|
3)今後の展望
・積雪時の山間部地域における居住者の移動対策が必要である
(2)青森市介護保険課、しあわせ相談室
地方自治体のSTS関連交通政策の現状
1)青森市の概要
青森市は、県のほぼ中央に位置し、面積は692.40km2、人口は296,766人(平成15年3月31日現在)で人口密度は428.6人/km2であり、65歳以上の高齢者は54,803人(18.5%)である。
市の福祉施策の特徴として、保健・医療・福祉に関して「保健福祉の総合相談窓口(しあわせ相談室)」を設置して、専門職員や相談員を配置している。
身体障害者手帳所持者は10,015人(うち、身体障害児は221人)、知的障害者(愛護手帳所持者)は1,574人であり、精神障害者は1,211人である。
要介護(要支援)認定者は8,131人であり、そのうち65歳以上の認定者が7,827人である。また、65歳以上の高齢者(55,323人)のうち、介護保険の認定を受けている認定率は14.1%となっている(表2-7、8、9、10)。
表2-7 身体障害児・者手帳所持者数 平成15.3.31現在(人)
障害の種類 |
1級 |
2級 |
3級 |
4級 |
5級 |
6級 |
計 |
割合 |
視覚障害 聴覚・平衡機能障害 音声・言語等機能障害 肢体不自由 内部障害 |
348 0 0 1,535 1,901 |
186 375 0 1,314 1 |
51 106 72 768 459 |
55 144 33 986 433 |
63 10 0 517 0 |
68 371 0 219 0 |
771 1,006 105 5,339 2,794 |
7.7% 10.0% 1.0% 53.3% 27.9% |
計 |
3,784 |
1,876 |
1,456 |
1,651 |
590 |
658 |
10,015 |
100% |
|
※うち、65歳以上は6,040人(60.3%)
表2-8 知的障害者(愛護手帳所持者数) 平成15.3.31現在(人)
|
重度(A) |
中・軽度(B) |
計 |
割合 |
知的障害児(18歳未満) 知的障害者(18歳以上) |
187 606 |
185 596 |
372 1,202 |
23.6% 76.4% |
計 |
793 |
781 |
1,574 |
100% |
|
表2-9 精神障害者保健福祉手帳所持者数 平成15.3.31現在(人)
|
1級 |
2級 |
3級 |
計 |
精神障害者 |
584 |
504 |
123 |
1,211 |
|
表2-10 要介護(要支援)認定者数 平成15.3.31現在(人)
要介護区分 |
要支援 |
要介護1 |
要介護2 |
要介護3 |
要介護4 |
要介護5 |
合計 |
(再掲)第2号被保険者 |
認定者数(人) |
1,211 |
2,386 |
1,695 |
1,142 |
870 |
827 |
8,131 |
304 |
|
資料:青森市しあわせ相談室・介護保険課資料による
(1)移送サービス
身体障害者手帳1級所持者と知的障害者(在宅の愛護手帳A所持者)を対象に、福祉タクシー・移送サービス利用券、あるいは給油券を交付している。利用者はどちらかを選択して使うことができる。
a. 福祉タクシー・移送サービス利用券
一人当たりの年間交付枚数は48枚(4枚/月×12ヶ月)で、年間約24,000円に相当する補助額である。初乗り運賃に対する補助として、タクシーを使った場合は1枚580円、NPOボランティア団体を利用した場合は500円と精算している。
表2-11は、平成14年度の福祉タクシー・移送サービス利用券の年間利用状況(利用件数と支出額)を示したものである。全体発行枚数の約60.7%が使用されており、その殆どがタクシーの利用(99%)である。一方、NPO等ボランティア団体と社会福祉協議会は車両保有台数が1〜2台であるため、全体利用数の約1%と極めて低い割合である(図2-1、図2-2)。
表2-11 福祉タクシー・移送サービス利用券の利用件数(平成14年度)
|
利用件数(枚/年) |
利用率(%) |
支出額(円/年) |
タクシー会社 |
69,007 |
60.1% |
40,011,400 |
NPO移送サービス |
331 |
0.3% |
165,500 |
社会福祉協議会 |
330 |
0.3% |
165,000 |
未利用 |
45,084 |
39.3% |
0 |
総発行枚数(枚/年) |
114,752 |
100.0% |
40,341,900 |
総交付人数(人/年) |
2,482 |
- |
- |
|
資料:青森市しあわせ相談室資料による
図2-1 福祉タクシー・移送サービス利用券の利用率(平成14年度)
図2-2 青森市福祉タクシー・移送サービス利用券
図2-3に、NPOと社会福祉協議会の月別利用件数の推移を示した。
図2-3 NPO移送サービス・社会福祉協議会の利用件数(平成14年度)
表2-12は、NPOと社会福祉協議会の利用件数のうち、市が交付する移送サービス利用券での利用率を示したものである。利用件数の約3割がチケット(移送サービス利用券)での利用である。
表2-12 移送サービス利用券の利用率(平成14年度)
団体 |
年間利用件数 |
移送サービス利用券での利用件数 |
移送サービス券の利用率 |
NPO移送サービス |
1,066 |
331 |
31.1% |
社会福祉協議会 |
929 |
330 |
35.5% |
|
資料:青森市しあわせ相談室資料による
移送サービス利用券が実現できた理由の一つとして、移送サービスの利用者が行政担当者に何回も制度の見直しを要望したことがあげられる。
b. 給油券
平成15年度より、自家用車利用の障害者に給油券を交付している。
・対象者:身体障害者手帳1級所持者、在宅の愛護手帳A所持者
・支給額:年間10,000円(1冊の給油券)
1冊=10枚×1,000円/1枚=10,000円/年
・市内の主なガソリンスタンドで利用可能
c. 介護保険制度の利用
訪問介護サービスの項目別利用件数(平成14年度と平成15年度)を表2-13に示した。介護保険制度の改定に伴い、新たに設けられた「乗降介助」制度を使った利用は1件もない(平成15年10月末現在)。
表2-13 訪問介護サービス項目別利用件数 (単位:件)
|
身体介護中心 |
家事援助中心 |
複合型 |
乗降介助 |
計 |
平成14年4月 |
947 |
997 |
505 |
- |
2,449 |
平成14年5月 |
934 |
960 |
487 |
2,381 |
平成14年6月 |
1,038 |
1,010 |
512 |
2,560 |
平成14年7月 |
1,109 |
1,012 |
515 |
2,636 |
計 |
4,028 |
3,979 |
2,019 |
10,026 |
平成15年4月 |
1,840 |
1,229 |
- |
0 |
3,069 |
平成15年5月 |
1,874 |
1,220 |
0 |
3,094 |
平成15年6月 |
1,925 |
1,282 |
0 |
3,207 |
平成15年7月 |
1,977 |
1,278 |
0 |
3,255 |
計 |
7,616 |
5,009 |
0 |
12,625 |
|
出典:青森市介護保険課資料による
|