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三伴船
土海、起、三伴の各船に共通している事は
1. 通り前はカットしてアカの通路にすること。
2. 肋骨の末端と海具との接点、板肋と肋骨の末端の接点などは、下図の様に肋骨又は板肋をカットして、船体捩れ時の材利用相互の食込みに依る損傷を考慮している事。
3. 肋骨組立ボルト、棚板との固着ボルトなど何れも内面ではナット部を埋め込む事。・・・などです。
 
 
 之等諸材の取付は77〜78頁の如く合せる際の色々の工夫も有ります。固着ボルトの孔開は、長さが350m/m程度、経が15φm/m以下の場合は専属のドリル工が居て、電動ドリルで作業を行い職工自身での作業は有りません。長さが350m/m以上となれば、木部の場合には錐がキツクなって作業困難となります(錐は木部用の木くづが出易いものも有りますがドリル作業では弱く、専ら鉄工ドリルの先端の角度を鋭角に替えて、丸鋼に溶接したものでの作業で、之の限度が約長さ350m/mであった訳です。)ですから之以上の長さの孔は長錐といって長い丸鋼に木用錐を溶接したものでの手作業となります。船用のボルト錐は特別のものが有り3分に対して2分8、4分に対して3分8、5分に対し4分8・・・と云う様に1粍程細い孔となっており、水密にも幾分考慮され、構造的にもガタのない様になっています。このボルトも長くなれば打込には大変苦労するものでボルトの頭が曲って終うものも有ります。(オジギをしたと申します。之の場合、之を抜いて新しく打替えます。)特に船底からの打込では大変な難儀をします。
 
 肋骨などの型板は専属の棟梁さんが、材料より木取り、バンドソーで挽かれて有りますから、そこから持って来て、合せる訳です。角度丈合せれば・・・と素人の方は思うでしょうが77〜78頁の様に工夫も必要ですし、堅い椈材を削り合せる事は、なかなか大変なのです。特に冬期は、材料はカリカリの凍り道具は滑る。手足は凍える・・・で細かな作業は仲々つらい仕事でした。
 戸立肋材 は土海船〜2本、起、三伴船〜1本です。下図の様に戸立を船底材に連結するもので私の頃でも未だ天然曲材も有りました。材料厚は3寸程です。
 
 
 この戸立曲木の裏には床曲木が取付けられ、舵床、戸立が更に強固となります。腰当当板、腰当曲木と腰当ばかりに補強が集中されますが、この腰当に船を浜に曳き揚げる際のワイヤーロープ環などが連結される為で現地では下の画の様な方法としていたようです。
 
三伴、起、土海各舩の腰当船宋辺







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