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型受け
 棚板を造る前に(舳や戸立を取付ける前も)型受けという大事な作業があります。曲線で構成される船の外側の形(棚)を写す事です。間違って終えばその板棚が使えなくなります。戸立や舳の取付前の敷の工作を申しておりませんでしたので之を付け加えます。戸立や舳は七寸開きとか、八寸の開きとか申しますが勾配と開きの事を少し図示します。
 
8寸の開き
 
5寸勾配
 
 極端に申しますと船大工の方で1尺の開きと云えば水平になって終まいますが、家大工さんの方で1尺勾配と云えば45°の傾斜です。造船所は殆んど水平が無い所で船体は曲面が主ですから垂直に下げた錘りが基準という事になりましょう。
 舳の接手は23の様に開きと平行に造られておりますので敷(又は乗せ盤)に8寸開きの定規を当て、傾斜の線引きをして接手を造ります。戸立ても同様に線引の上、敷の受口を造ります。本来、敷や乗盤の接手部が一般の建築材の様に平滑、角形様であるなら、接手は型板を事前に造って之に合せる丈の仕事で終る筈なのですが、そうは出来ない所が和船です。
 
 
 海具(棚)の型受は色々と流儀があったようですが、私は見習工で只一、后で申し上げる方法より教わりませんでしたが、造船所全体もこの方法丈で施行していた様です。之は糸墨とか縄墨とか申している様ですが、正式の呼名は訳りません。型受は昔から船大工の奥義的な所が有って個人造船所では年季明け頃でなければ詳しく教えられなかったと聞いておりますが、私共の所は、大量生産的な工場ですから、早く一人前にする必要からか(秘)は比較的に少ないと存じてます。只、次の糸に依る型受も多分に経験の数値も入って参ります。之は厚い矧合せの大きな板を曲げるのですから当然と考えられます。鋼船の様に展開図法で得た形は正確と存じますが、あくまで全体が同質の材料=鋼板であり、内、外を熱、冷の差で自由に伸縮出るものであるから自由に曲げられるものであって、木材の如く均質ではなく、且つ厚味の大きいものである丈に、展開図法丈では上手に合わないものと存じます。鋼の様に内面が縮んでくれて、外部が充分に伸びてはくれませんからこそ、長年の経験の依る感と数値が駆使されると思われます。
 更に展開図法で得た形の様に成長した木材も有りません。
 
 糸を用いない型受に板型受(仮称)があります。比較的小型の舟に使われます。それは薄い板を2枚程(巾方向)に継ぎ、且つ、長さは現場長さに合せて継ぎ、現場に持って行き、各金場〃〃の棚の開きに合せて設置し、合せる相手側(敷とか下棚とか)の形状をこの板に写しとり、之を矧合せた棚板上に転写する方法です。
 
全体の様子







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