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2004/06/15 産経新聞朝刊
有事7法成立 危機管理に「画期的前進」 「国の役割」法制化急務
 
 日本有事における国民の保護や自衛隊と米軍の協力のあり方などを定めた有事関連七法が十四日の参院本会議で成立したことは、日本の危機管理体制の未整備を補う「画期的な前進」(防衛庁幹部)といえる。ただ、有事などにあたって国の取り組みを規定する基本法や、自衛隊の部隊行動基準(ROE)に関する法制化作業など、国民の安全確保に向けた課題はまだ残っている。
(松本浩史)
 有事法制研究をめぐっては、昭和五十二年に防衛庁が正式に研究に着手して以降、三十年近くを要し、法制の枠組みがほぼ整うことになった。法制整備論議は平成十年に北朝鮮がテポドンを発射したことで弾みがつき、翌年の周辺事態法成立に続き、十三年には当時の森喜朗首相が有事法制検討の必要性を強調。北朝鮮の核問題や米中枢同時テロの発生などを受け、十四年には小泉純一郎首相が有事関連法案の国会提出を正式表明した。
 成立した七法の柱である国民保護法に規定された国民の私権制限などは従来はタブー視されてきたテーマだった。与党と民主党との修正協議を経て、国会の圧倒的多数で成立した経緯をみても、今後の日本の安全保障論議をより充実させる下地は整ったといえる。
 ただ、有事などにおける国の取り組みを規定する基本法の制定が欠かせないため、さしあたり、来年の通常国会で制定することで与党と民主党が合意した「緊急事態基本法」(仮称)の成案を得ることが急務だ。ROEに関しても防衛庁内での検討段階にとどまっており「交戦時での核心部分があやふや」(同)との指摘は多い。
 自衛隊が発足して七月で五十年を迎える。今後の安保論議で、集団的自衛権の行使容認など憲法論議と密接に絡む新段階に入るのは必至だ。防衛問題に対し、国民的議論を展開していくことが問われている。
≪有事関連7法のポイント≫
【国民保護法】
 住民の安全な避難・救援のため、国や自治体、公共機関の役割を規定。民有地や家屋の使用などで知事に強制権
【米軍行動円滑化法】
 日本有事で活動する米軍に弾薬や民有地を提供
【外国軍用品等海上輸送規制法】
 領海や周辺で敵国に軍用物資を運ぶ船舶を強制的に積み荷検査
【交通・通信利用法】
 自衛隊や米軍が空港、港湾、道路、電波を優先利用
【改正自衛隊法】
 災害救援や共同訓練などに従事する米軍に物品・役務を提供
【捕虜等取り扱い法】
 捕虜の拘束、抑留手続きを規定
【国際人道法違反処罰法】
 重要文化財破壊、捕虜送還遅延などに刑罰
≪有事法制の経緯≫
昭和  
40年 2月 統合幕僚会議がまとめた図上演習「三矢(みつや)研究」が表面化
52年 8月 福田内閣で防衛庁が有事法制の研究スタート
53年 7月 栗栖弘臣統幕議長が「法制不備のため超法規的措置を取らないといけなくなる」と発言、解任
9月 防衛庁が「有事法制の研究について」(基本的考え方)を公表
平成  
8年 4月 橋本龍太郎首相とクリントン米大統領が日米安保共同宣言に署名
9年 9月 新たな日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)を日米安全保障協議委員会が了承
10年 8月 北朝鮮が弾道ミサイル「テポドン」発射
11年 3月 能登半島沖で北朝鮮籍とみられる不審船が日本領海に侵入。海上自衛隊に初の海上警備行動を発令
5月 周辺事態法成立
13年 1月 森喜朗首相が「有事法制の検討開始」を表明
9月 米国で中枢同時テロ発生
12月 奄美大島沖の東シナ海で海上保安庁の巡視船が北朝鮮の工作船と銃撃戦、工作船が沈没
14年 4月 武力攻撃事態対処法など有事関連法案を閣議決定、国会に提出
11月 政府が「国民保護法制」の輪郭を提示
12月 与党3党が衆院特別委に修正案提出
15年 4月 政府が衆院特別委に「国民保護法制」の骨子を提示、民主党が対案提出
5月 与党3党と民主党が有事法案の修正で合意
6月 有事関連3法成立
政府、国民保護法制整備本部を設置
11月 国民保護法制の要旨を公表
16年 2月 国民保護法案の要綱決定
3月 有事関連7法案を閣議決定
5月 与党・民主党が修正合意、衆院通過
与党・民主党、緊急事態基本法骨子で合意
6月 有事関連7法成立
(注)肩書は当時
 
 
 
 
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