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2004/07/01 産経新聞朝刊
自衛隊発足50周年 国際貢献で実力発揮 国土防衛とともに重要任務に
 
 防衛庁・自衛隊が一日に発足五十周年を迎えた。自衛隊は専守防衛の方針の下、冷戦時には旧ソ連軍を「潜在的脅威」として任務を国土防衛に特化したが、冷戦終結後は国連平和維持活動(PKO)への参加を中心とする国際貢献活動で実力を発揮、イラクでは初めて多国籍軍に参加することになった。現在、防衛大綱の見直しが行われているが、戦争放棄と戦力の不保持をうたった憲法九条が自衛隊の合理的改革・活動の足かせとなっている現実は依然として変わっていない。
(榊原智)
 石破茂防衛庁長官は三十日の記者会見で「この五十年間、日本の平和が保てたのは、自衛隊の果たした役割が大きかったからだ。近年は国際社会のために何ができるかという役割も増えている。(自衛隊を派遣した)東ティモール、イラクなどでも現地から高い評価を受けている。この流れが定着するように自重自戒しながら、誠心誠意努力したい」と述べ、国土防衛とともに、国際貢献を自衛隊の重要任務に位置付けた。
 陸海空三自衛隊は北朝鮮の南進に端を発する朝鮮戦争勃発(ぼっぱつ)を受けて、昭和二十九年七月一日に発足。「戦力なき軍隊」と呼ばれながら、国土防衛や災害救助にあたってきた。戦闘行為そのものを経験したことはないが、厳しい訓練や事故で三自衛隊を合わせて千七百四十七人が殉職している。
 憲法九条との関係で専守防衛に徹したにもかかわらず、旧社会党や共産党は声高に「憲法違反」を叫んで存在そのものを批判し続けてきた。だが、大規模災害時の救援活動に加え、湾岸戦争終結後のペルシャ湾への掃海艇派遣、カンボジアやゴラン高原、東ティモールなどでのPKOを通じて国民だけでなく、国際社会においても大きな信頼を受けるまでになった。
 昨年末には弾道ミサイル防衛(MD)の導入を決定、今後はゲリラや工作船など「新たな脅威」への対応や陸海空自衛隊の統合運用が課題となる。また、自民党内では政府が「権利はあるが行使できない」としている集団的自衛権の行使を容認すべきだとの声も高まっており、自衛隊の存在を明記することとともに憲法改正の焦点となりそうだ。
≪自衛隊の兵力≫
 平成15年3月末の陸上自衛隊の現員14万8000人。部隊は9個師団、6個旅団、1個空挺団など。九〇式など戦車は1020両を保有。海上自衛隊は4万4000人。艦隊は4個護衛隊群、7地方隊、6個潜水隊。対潜哨戒機部隊は13。護衛艦は54隻、潜水艦16隻、対潜哨戒機P3C99機など。航空自衛隊は4万7000人。F15戦闘機203機、F2支援戦闘機40機、C130輸送機16機など作戦機480機。自衛隊の新鋭装備はイージス護衛艦、地対空誘導弾パトリオット、F15戦闘機など一流の水準にある。
 
 
 
 
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