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2001/09/14 産経新聞朝刊
【主張】日本のテロ対策 有事即応の態勢をいそげ
 
 米国中枢への同時テロは日本の「有事即応」態勢の不備をさらけ出した。自民・公明・保守の与党三党は十三日、自衛隊による米軍基地警備を可能とする自衛隊法改正案を二十七日召集予定の臨時国会で成立させる方向で一致したが、具体的な改正内容については結論を持ち越したという。
 日米安保条約第六条で日本は米国に基地供与を約束しているが、実は横田基地などの米軍専用基地については、自衛隊は首相が治安出動を発令しない限り、警備できない。今回も米側から米軍関連施設の警備強化を依頼されながら、自衛隊は動けなかったという。同盟国としての最低限の責務すら遂行できないのが、この国の現実の姿であることを認識すべきだ。
 こうした問題は、基地を襲撃するゲリラにどう対処するかという有事法制の整備と絡んで以前から指摘されてきた。しかも警備が可能になったとしても、武器使用については警察官職務執行法が準用されるため、直接攻撃されない限り、自衛隊は武器を使ってゲリラ鎮圧はできない。テロリストに毅然と対応することもできない法の不備を放置してきた政治の不作為の責任は極めて大きい。
 衆院は十四日、首相が出席する閉会中審査としては三十五年ぶりの予算委員会を四時間開会する。参院選があったにせよ、通常国会終了後、三カ月近くたっての本格論戦というのでは国会は怠慢のそしりを免れない。与野党の徹底論議によって国の方向を決めるという国会の本来の機能を取り戻すことが、テロ事件が起きたこの時期、国民の不安や不信感を払しょくするためにも必要だろう。
 平成二年八月の湾岸危機のときも、日本の国会は十月に至るまで開かれず、「ツー・リトル、ツー・レイト」という批判を浴びた。小泉純一郎首相の記者会見が事件発生から十二時間過ぎていたように、今回の政府・与党の対応は相変わらず鈍い。湾岸の教訓はまったく生かされていない。
 北大西洋条約機構(NATO)は集団的自衛権を発動することを決めた。日本も同盟国の一員として座視は許されない。有事法制を整備し、集団的自衛権の行使問題に結論をつける時期が来たのである。
 
 
 
 
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