日本財団 図書館


2003/04/06 読売新聞朝刊
[社説]イラク復興 自衛隊の活用に意義がある
 
 イラク戦争が続く中で、日本にとって、はっきりしていることが一つある。
 イラクの戦後復興のため、積極的に協力していかなければならない、ということだ。小泉首相も、その必要性を強調している。
 当然である。イラクが「普通の国」になれば、中東の安定にも寄与する。
 イラクは、民族や宗教が複雑に入り組んでいる。戦後処理や復興は、難しい作業になる、との見方が多い。どのような協力が可能か、具体的な作業を急がなければならない。
 人的協力、資金協力等々、様々な形態が考えられるだろう。とりわけ、大きな役割を期待されているのが自衛隊だ。
 湾岸戦争後、ペルシャ湾における機雷の掃海作業で実績を上げた。カンボジアや東ティモールの国連平和維持活動(PKO)にも貢献し、米政府には、イラクでも自衛隊の協力を求める声がある。
 機雷掃海は現行法で可能だが、PKO協力法に基づく自衛隊の派遣は今回は難しい、との意見が政府内では一般的だ。戦争の決着の仕方にもよるが、紛争当事者間の停戦合意など、PKO参加五原則を満たさない可能性が大きいからだ。
 「9・11テロ」を受けて成立したテロ特措法と同様、今度も自衛隊の派遣を規定する新たな法律が必要となる。自衛隊にどのような任務を与えるのか、などを早急に詰めていくべきである。
 気になる点がある。新法には国連決議が必要、と主張する与党首脳がいる。野党対策や、世論の理解を得やすいといった政治的判断によるものだ。
 だが、イラクへの武力行使を容認する新決議採択を巡り、米英と仏露独が激しく対立した安全保障理事会の亀裂は、今なお修復されないままだ。決議がまとまるかどうかは、予断を許さない。
 決議がまとまらなかったために、日本の本格的な復興支援参加は見送られた、というようなことがあってはなるまい。柔軟に対応すべきである。
 イラク復興支援に限らず、いつでも即応できるような体制を整備しておくことも必要である。
 今回も、自衛隊の派遣を規定した法律の未整備に伴う弊害が露呈した。そうした法律があれば、その都度対応に追われるような事態は解消できる。
 有識者で作る「対外関係タスクフォース」は、昨秋の小泉首相に対する提言で国連決議の有無にかかわらず、自衛隊の医療部隊など、非戦闘部隊の派遣を検討するように求めた。そのような枠組みを作り上げて初めて、国際的な責任を果たす体制が整うことを銘記すべきだ。
 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。

「読売新聞社の著作物について」








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION