2001/11/17 読売新聞朝刊
[社説]自衛隊派遣 国際活動の包括的法整備を急げ
政府は、アフガニスタンでの米軍などの軍事行動への後方支援や被災民救援などを柱とする自衛隊派遣の基本計画を閣議決定した。
この基本計画を受けて、自衛隊の艦艇や輸送機がインド洋などに向けて出動するのは今月下旬になる。
軍事行動が現に行われている状況下で、後方支援ではあるが、自衛隊が海外に派遣されるのは初めてだ。
今回の米同時テロに限らず、国際共同行動で、自衛隊が担う役割と、その重要性は今後ますます高まるだろう。
基本計画に基づく自衛隊派遣はそうした観点から、自衛隊の役割を新たに定めていく上での試金石となる。
来週予定される国会承認では、与野党を超えた多くの政党の賛成が大事だ。テロに毅然(きぜん)と戦う日本の姿勢を国際社会に示すことになる。国民多数の期待が、派遣される自衛官の支えにもなる。
民主党は、事前承認が受け入れられなかったために、テロ対策特別措置法に反対したが、反テロの国際共同行動で自衛隊を活用することは認めていた。今回は党をあげて賛成すべきだ。
冷戦終結後、地域紛争やテロなどの脅威が増したにもかかわらず、国際社会が行う共同行動で、他国と比べ日本が十分な役割を果たしてきたとは言えない。
テロ特措法も、米同時テロを受けて急いで立法化したもので、時限立法にとどまっている。
国際共同行動に自衛隊をどう活用するか。国連活動や多国間協力など、テロや地域紛争といった様々な事態に迅速に対応できるよう、包括的な法制度を整備する必要がある。
テロ対策では恒久立法が不可欠だ。
国連の安全保障理事会は、アフガンの治安維持に向けた事実上の多国籍軍派遣を承認する決議を採択した。
しかし、日本には、多国籍軍に参加・協力するための法律がない。
アフガンでは将来、国連平和維持活動(PKO)が展開される可能性もある。PKO協力法改正は今国会で実現する予定だ。が、武器使用基準は緩和されるものの、PKO参加五原則の抜本見直しは先送りされた。自衛隊が実効ある活動を行うためにも見直しを急ぐべきだ。
包括的な法整備が進まなかった原因には、「武力行使との一体化論」などの従来の憲法解釈がある。国連を中心にした国際共同行動への自衛隊の参加は、憲法の「武力行使」にあたらない。
今回の自衛隊派遣を機に、国際社会での自衛隊の活用の在り方について、論議を深めていくことが肝要だ。
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