1992/06/12 読売新聞朝刊
[社説]「PKO」を整然と成立させよ
国連平和維持活動(PKO)協力法案が、衆院国際平和協力特別委員会で自民、公明、民社三党の賛成多数で可決された。
「徹底審議」を唱える社会、共産両党はこの採決を不満とし、再び牛歩などの物理的抵抗により、同法案の衆院本会議での週内成立を阻止する構えだ。
しかし、審議はすでに尽くされており、これ以上埋め難い対立点については、議会制民主政治のルールに従って、多数決原理により決着をつけるべき段階に来たと考える。社、共両党が、前時代的な抵抗に走るのをやめ、同法案が混乱なく成立することを期待する。
同法案が成立すれば、日本は、平和維持のための国連の活動に対し、資金面の協力だけでなく、人的協力の面でも実効ある役割を果たすことが可能となる。
衆院の社、共両党などは、参院における自、公、民三党による再修正は「同法案の根幹にかかわる重大な修正」だとして衆院での徹底審議を要求する一方で、廃案を求める根拠として「再修正によっても同法案の本質は変わらない」と、矛盾する主張を重ねてきた。
参院で再修正されたのは、平和維持隊(PKF)の「参加凍結」と、派遣に当たっての「国会の事前承認」の二点だ。これらはPKO法案に対する一部の不安感を取り除くと同時に、社会党や連合参議院との接点を求めようとする公明、民社両党の考えによるものだった。このことは、社会党なども十分わかっていたはずだ。
それなのに、反対派の意向をくんだこれらの修正がなぜ「重大」なのか。
PKO法案は、すでに三国会にわたって審議され、衆院では計七十二時間にわたる審議のあと、前国会で可決、参院へ送られた。PKOに参加する自衛隊は、現職のまま併任とすることが活動の実効を上げるうえで最適だ、という衆院での結論が出されたわけで、その時点で、自衛隊参加をめぐる論議は決着がついている。
今回、同法案が参院から衆院へ送付された際、社、共両党は、まず本会議にかけるべきだと要求した。これは明らかに審議の引き延ばしをねらった主張だ。参院での修正によって法案が再び衆院へ戻った場合、委員会に直接付託することは、衆院の先例として確立している。
社会党などは「国論は二分している」と言うが、国論を代表する国会で、自、公、民三党の多数が一致してPKO法案を支持している。この多数を否定しては、代議制民主政治は成り立たない。
結局、社会党などが言う「徹底審議」を満足させるには、自、公、民三党の多数側が、社会党の掲げる「廃案」に同調する以外に方法はないようにみえる。こんな少数派の横暴を認めることはできない。
PKO法案をめぐる国会の一連の混乱のあおりで、宮沢首相の地球サミットへの出席も困難となった。こうした重要な会議に欠席せざるを得ないようでは、日本の国際信用にかかわる。法案を速やかに成立させ、首相が出席できるよう要望する。
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