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1991/01/24 読売新聞朝刊
[社説]湾岸戦争での難民輸送に自衛隊機は必要だ
 
 政府は、湾岸戦争で大量発生が予想される難民を救助するための自衛隊輸送機の派遣と、多国籍軍への日本の追加財政支援について、最終調整を急いでいる。
 このようなケースでの自衛隊機の海外派遣は、初めてであり、追加財政支援規模も九十億―百億ドルとかなりな額にのぼるが、必要なことだ。国連決議の下で、国際社会が一体になって、イラクによる国際秩序の破壊行為を排除しなければならない。
 すでに国際移住機構(IOM)から、航空機、船舶の提供が求められている。早急に事務手続きを進めて、遅滞なく対応できるよう実施体制を整えるべきだ。
 自衛隊輸送機の派遣は、難民救助という人道的な行為であり、武力行使を目的としたものではないのだから、憲法上の制約はない。海部首相は当初、民間航空機の派遣だけを考えていたようだが、戦争地域の周辺には多少の危険はつきまとう。民間航空会社自体が拒否しているし、こうした仕事を民間まかせにするのは不適当だ。
 自衛隊の輸送機を派遣して、安全な地域で待機している民間機にピストン輸送で難民を受け渡す方式の方が合理的だ。
 社会党など野党の中には、こうした人道的な自衛隊の行動さえも、武力行使を目的とする海外派兵と同一視して反対する動きがあるが、これは意図的に議論を混乱させるものだ。
 政府は今回、自衛隊機派遣の法的根拠を国賓などの輸送を定めた自衛隊法一〇〇条五項に求め、同法施行令を改正し、難民を対象に含めて実施する方針だ。
 現実問題として、緊急に対応するには、こうした方法しかないこともわかる。しかし本来、難民輸送のための海外派遣を恒久的な自衛隊の任務として確立させるには、自衛隊法を改正するのが筋だ。
 なし崩しで海外派兵に道を開くのではないか、との懸念を一掃するためにも、より明瞭(めいりょう)な法整備が望ましい。
 政府の方針をめぐる論議の経過をみると、自衛隊機派遣に消極的な首相が、自民党側の圧力に押し切られた、という印象がある。国際的責任を果たそうというのに、自衛隊の最高指揮官である首相の決意や気迫が伝わってこないようでは、せっかくの貢献も十分アピールしない。首相は、見識と指導力をもって取り組むべきだ。
 実際に自衛隊機が行っても、輸送人員が少なく、できることには限界があるが、日本としては、汗を流す必要がある。
 今回の湾岸戦争は、米国とイラクの戦争ではない。クウェート侵略のために武力を行使したイラクに対し、国連の意思として多国籍軍が、平和回復のための行動をとっているのだ。
 追加財政支援に対しても、社会党などは、武器・弾薬などの購入のために支出すべきではないと主張しているが、多国籍軍への支援は、国連が要請していることだ。これにこたえるのが、なぜいけないのか。
 この協力を怠り、多国籍軍の努力が実を結ばない事態になったら、日本はイラクの国際秩序破壊を容認したことにもなる。
 
 
 
 
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