防衛庁は二十九日までに、「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)を、全面的に改定する方針を固めた。一九九六年中にも作業に着手、一、二年以内に新ガイドラインの策定を目指す。日米安保体制の信頼性向上を強調した新「防衛計画の大綱」(十一月閣議決定)策定と、来年四月の日米首脳会談での「安保再確認」を受けて行われるもので、検討の主題は日米安保条約第六条の「極東有事」になる。だが、集団的自衛権を禁じた憲法解釈に抵触する問題点が浮上するのは必至。沖縄などの在日米軍基地の在り方も絡み、政府・与党内で論議を呼びそうだ。
現行の指針は、内容のほとんどが「共同防衛」を定めた五条に関するものになっている。「日本に対する武力攻撃がなされた場合」には「日本は原則として、限定的かつ小規模な侵略を排除し、独力で排除することが困難な場合は米国の協力を待つ」と、旧「防衛計画の大綱」の基本構想に基づいている。「作戦構想」では、陸、海、空の各部隊の日米共同作戦を明記。自衛隊と米軍が調整機関をつくり「作戦、情報、後方支援で相互に緊密な調整を図る」としている。
しかし、「極東条項」の六条に関しては「日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合の日米協力」として「法的枠組みの範囲内で米軍に対する便宜供与の在り方をあらかじめ相互に研究する」「米軍による自衛隊の基地の共同使用その他の便宜供与の在り方に関する研究が含まれる」などと記すにとどまっている。
防衛庁は(1)新大綱で日米安保体制が「わが国周辺地域の平和と安定を確保」すると規定(2)日米安保の再確認で、アジア太平洋地域の安全に寄与すると意義付けする――などから、極東有事における日米協力の在り方について具体的な検討が必要と判断。また新大綱では「限定的小規模侵略の独自排除」を放棄、当初からの日米共同作戦を前提にしており、現行指針では整合性がとれない面もある。
しかし、わが国以外で発生した事態に対する自衛隊の出動や米軍への基地提供、装備の補修などの便宜供与は、集団的自衛権との絡みで「どこまで出来るか難問が多い」(防衛庁幹部)といい、検討作業は難航することが予想される。
わが国への武力攻撃など有事の自衛隊と米軍の共同対処に関する基本方針。1978年11月、閣議了承された。東西冷戦の激化、旧ソ連の脅威を背景に、日米安保協議委員会(2プラス2)の下の防衛協力小委員会で約2年間かけて策定され、「日米安保条約に魂を入れた」(防衛庁首脳)といわれた。
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