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1989/11/28 毎日新聞夕刊
防衛費、初の4兆円台 90年度予算で大蔵省方針
 
 九〇年度(平成二年度)予算を編成中の大蔵省は二十八日、防衛関係費を前年度比六%弱増の四兆一千億円台前半に抑制する方針を固めた。来るべき“マルタ体制”を背景としたデタント・軍縮ムードの国際情勢を考慮しながら防衛庁の概算要求(前年度比六・三五%増)を厳しく査定するものの、防衛予算は初めて四兆円台を突破、当初予算段階での対名目GNP(国民総生産)比では八七年度以降四年連続して一%をわずかながら上回る見通しが強まった。人事院勧告に基づく給与改善やドル高・円安による目減りなど新たな歳出増要因が大きいためだ。これに対し防衛費の突出に対する批判の声が強まることも予想される。
 来年度の防衛予算の査定に当たっては、デタントのほか、米議会からの在日駐留米軍の日本側負担増要求もあるが、大蔵省は「現行の地位協定を改定しなければ無理」と判断しており、九〇年度予算に米側要求を直接的な形では反映させない意向だ。また、デタントについては、極東の軍事情勢への影響を見極めながら予算編成を行う。こうした情勢の中でも、防衛費が四兆円を突破してGNPの一%を上回ることになるのは、人事院勧告の完全実施で国家公務員の給与が今年四月にさかのぼって三・一一%引き上げられるため。これが九〇年度の人件費にもハネ返るわけだが、八月末の概算要求ではこの人件費アップ分を考慮しておらず、防衛庁、自衛隊の職員給与は概算要求に比べて六百億円程度増えることになる。
 また、概算要求時の為替レートは一ドル=一三三円で設定したが、その後ドル高に転じ、最近は同一四〇円台半ばで推移している。防衛費のうち海外からの機材購入など外貨建ては全体の五%程度で、為替レート変動に伴う“差損”は百億円前後になり、この分を考慮する必要がある。
 
 
 
 
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