1989/03/22 毎日新聞夕刊
米大統領、FSX共同開発推進を表明 日本に「見解」求める
【ワシントン二十一日河内孝特派員】ブッシュ米大統領は二十一日午後(日本時間二十二日午前)、航空自衛隊の次期支援戦闘機(FSX)日米共同開発計画について「私は、この計画を、いくつかの問題を明らかにしたうえで推進するとの決定を下した」と述べ、新政権が共同開発推進を決定したことを明らかにした。これに先立ち、ベーカー米国務長官は二十日午後二時(同二十一日午前四時)国務省に松永駐米大使を招き、FSX共同開発に関する米政府の「計画推進決定」を伝達するとともに1)開発母機となるF16の姿勢制御などのコンピューターソフト技術保護2)日米交換技術の管理−−に関する米政府の「解釈」を示し日本側の見解を求めた。これに関連して、ホワイトハウスのフィッツウォーター報道官は二十一日「我々は日本側の反応を待っている状態だ。最終決定は今週中に行われよう」と述べ、FSXをめぐる日米折衝は最終局面を迎えた。
ブッシュ米大統領は二十一日午後(日本時間二十二日午前)ホワイトハウスで記者団の問いに「私はFSXの日米共同開発を、いくつかの問題を明らかにしたうえで推進したい」と述べた。記者団が日本側からの反応について質問したのに対しブッシュ大統領は「正式な発表がいつかは分からぬが、私は、この計画をいくつかの問題を明らかにしたうえで推進する決定を下した。日本側の反応についてはまだ聞いていない」と述べ日本からの了解を得られ次第、正式決定し、議会に通告する意向を明らかにした。
一方二十日午後、国務省での日米会談にはチェイニー国防長官、モスバカー商務長官、スコークロフト国家安全保障担当補佐が同席した。席上、ベーカー長官は「FSX共同開発について大統領は、昨年日米政府間で合意した内容を実施したいと考えている。そのためには議会を中心に反対論が高まっている関係上、色々工夫している」として昨年十一月合意した政府間覚書に関する新政権としての解釈、了解をメモ用紙数枚にまとめ提示した。これに対し松永大使は日本の会計年度上の制約などを指摘した上で本国政府に米政府の考え方を伝達、回答を求めると述べた。
二十日、米政府が示した覚書に対する「新解釈」について松永大使は「公表出来ない」としながらも「新条件というより大統領の覚書に対する解釈の表明であり、従来の合意内容の変更を求めたり、枠組みを変えるという性格のものではない」と述べた。関係筋によると、その内容は1)F16戦闘機の特徴である姿勢制御(フライ・バイ・ワイヤー)のためのコンピューター・ソフト技術の保護の確認2)日米で交換する新技術に関するモニター機構に「経済安保」の立場をとる商務省の参加を認める−−などとされている。
FSXの共同開発は昨年十一月、日米政府間で合意したもので、九〇年代後半の実戦配備を前提に当面、六機の試験開発機を三菱重工とゼネラル・ダイナミックス社の共同生産で開発しようというもの。これに対し恒常化している貿易不均衡に不満を高めている米議会から「F16の生産技術を日本側に移転すると、日本の民間航空生産技術に転用され、結果的に日本の航空産業育成に手を借すことになる」という反対論が高まり、ブッシュ新政権は政府間覚書の再検討を約束した。ブッシュ大統領は三月十五、十七、十八日の三回にわたりホワイトハウスで国家安全保障会議(NSC)を開き米政府の対応策とりまとめを急いでいた。
◇日本側、一両日中に対応決定◇
航空自衛隊の次期支援戦闘機(FSX)の日米共同開発問題で、米側が技術保護など条件つきで共同開発推進を表明したことを受け日本側は二十二日中に外務、通産、防衛など関係省庁で検討を進め、一両日中にも日本としての対応を決める。しかし日本側は「日米政府間の取り決めである了解覚書(MOU)は尊重されると思う」(田沢防衛庁長官)との判断から基本的にはこれまで通り、今月中に主開発企業の三菱重工業と契約を結ぶ方針を変えていない。
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