大蔵省は九日、新年度一般会計予算の防衛費を六十三年度比五・八%増の三兆九千億円台とする方針を固めた。六十一年度の六・五八%増以来三年ぶりの高い伸びとなる。これは、ブッシュ新政権の発足で予想される米国の対日防衛分担圧力の高まりに対応、さらに四月から武器・弾薬・食糧などにかかる消費税分を上乗せするためだ。また景気が順調に拡大していることから、新年度の名目GNP(国民総生産)がかなり大きくなることが見込まれ、「GNP比一%枠突破」をめぐるこの数年間の経緯もあり、財政再建を図る中でも防衛費の高い伸びはやむをえないとしている。
八月末に締め切った概算要求の防衛費は三兆九千二百七十三億円で六十三年度予算(三兆七千三億円)比六・一三%増。その後、人事院勧告完全実施に伴うベア分約三百五十億円が加わっていた。
また四月から税率三%の消費税が実施されると、戦車、航空機、艦船から武器・弾薬、自衛隊員の食糧など人件費を除くほとんどの支出にかかる。新年度の消費税額は二百億円強見込まれるが、政府部内では消費税はすべて価格に転嫁することが基本方針となっているため、防衛費にもそのまま上乗せする。これも防衛費が膨らむ理由となっている。
防衛費の膨張の歯止めとして、昭和六十一年度までは「GNP比一%枠」が使われていたが、六十二年度からは中期防衛力整備計画(六十一−六十五年)の「総額明示方式」が新たな歯止めとなっている。このため、六十二年度以降GNP比(当初予算段階)一・〇〇四%、一・〇一三%と、一%の大台を超えている。政府部内には米国の対日防衛分担圧力を考慮して、新年度もGNP比一%超を維持すべきとの考えが強い。
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