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湖沼環境の基盤情報整備事業報告書?豊かな自然環境を次世代に引き継ぐために?

 事業名 湖沼環境の基盤情報整備
 団体名 日本水産資源保護協会 注目度注目度5


4)中禅寺湖産ヒメマスの生活史
 
(1)成長
 中禅寺湖では3月から5月にかけて体長約26cmの魚が9月に約29cm、体重330〜350gに成長し、それらの個体が産卵のため遡上して湖から姿を消した後、翌年の5月になると体長18〜19cmに成長した個体から逐次漁場に加入し、9月には加入が完了する過程が推察される。
 
(2)自然減耗
 放流されてから約1年間の稚魚の生残率は、放流尾数が多いほど小さくなっていくと推定された。つまり、稚魚を200〜300万尾放流しても、100万尾放流の時よりも1魚になってから以降の漁獲対象資源は少なくなる。これは放流尾数が多い場合は餌の不足や、ホンマス、ブラウントラウト、ニジマス等のほかの魚種に捕食される率が高くなるため、生き残る割合が減少するものと思われる(石島、1986)。
 
(3)資源動態
 漁獲魚の体長を20cm未満、20〜23cm、24〜27cm及び28cm以上の4段階の体長階級に分けてそれぞれの季節的な出現割合を図4-4-1に示した。ここで20cm未満の魚は新規加入群、20〜23cmは加入完了直後群、24〜27cmは生育群、28cm以上の魚は産卵参加群と考えると、5〜9月にかけて新規加入群、及び加入完了直後群の比較的小型の漁獲割合が増加している。11月になると前月までに加入を完了した魚はそれぞれ成長し、28cm以上の大型魚は産卵に参加するために遡上して漁場から姿を消すものと考えられる。
 
図4-4-1 
ヒメマス各月の体長階級別釣獲割合 1985年3月〜1987年3月
出典: 
水産庁養殖研究所(1989)試験的操業記録からみた中禅寺湖におけるヒメマス資源の動態、中禅寺湖資源調査研究会中間報告書
 
 放流種苗の成長を左右する要因を把握するために、各調査区で捕獲された標本の体長、捕獲された数をみると、体長の変化と最も深い関係が見られるのは捕獲尾数である。大型の魚が多い時には捕獲が少なく、小型魚が多い時には豊漁の傾向が見られる。年級群による放流の尾数とサイズを加味すると、単に、放流時の問題だけではなく、湖水における生活環境の影響が考えられる。例えば、大型魚を放流した1975〜77年級群をみると、それらが親魚となる4年後の捕獲は比較的多い。これは、湖水における自然減耗、特に、放流後の初期減耗が少なかったためと推定される。その原因としては、放流魚の健康状態が考えられる。また、大型サイズであるが故に、大型魚の食害を受けにくいなどが考えられる。従って、放流後の生残率を高めるためには、種苗が健全で、食害を受け難いサイズであることを考慮しなければならない。
 適正放流尾数、及び適正放流サイズを決定するためには、単に、稚魚の健康状態や大きさなど、放流時の問題だけではなく、既に述べたように湖水内における他魚種との係わり合い、即ち、中禅寺湖の生態系の中で占めるヒメマスの位置関係を明確に知ることが重要である。
 
表4-4-1 中禅寺湖産ヒメマスの年級別放流尾数、放流時体重、及び捕獲尾数(1968〜1986年)
年級 放流尾数 放流時体重(g) 捕獲親魚尾数 平均体長(cm)
合計
1968 397,720 (1.7) 673 942 1,615 29.2
69 299,408 (2.0) 456 881 1,337 29.3
70 401,200 (0.9〜2.1) 1,674 2,020 3,694 29.9
71 110,225 (3.6) 2,640 3,902 6,542 32.0
72 352,700 (3.6) 253 553 806 33.2
73 579,000 (1.7) 1,372 1,264 2,636 32.6
74 0 (-) 1,065 876 1,941 28.1
75 310,875 (2.5〜3.6) 1,763 2,652 4,415 28.7
76 968,875 (1.9〜3.8) 1,609 3,911 5,520 30.7
77 540,208 (2.4〜3.2) 886 2,431 3,317 34.1
78 1,239,152 (2.0〜2.1) 1,941 2,640 4,581 32.5
79 1,458,212 (1.5〜2.1) 4,549 6,255 10,804 31.3
80 1,350,700 (1.5〜2.1) 3,049 3,930 7,024 29.5
81 1,222,700 (1.3〜3.3) 841 1,269 2,110 29.5
82 2,739,952 (0.8〜3.9) 968 1,944 2,912 31.5
83 3,550,840 (0.7〜1.1) 490 690 1,180 34.0
84 733,327 (2.2〜3.2) 2,544 3,036 5,580 29.4
85 995,257 (2.0〜2.4) - - - -
86 354,951 (0.4〜4.0) - - - -
 
(4)回帰
 中禅寺湖では、漁業権をもつ中禅寺湖漁業協同組合が、湖への流入河川に回帰するヒメマス親魚を地曳網、ウケ網等で採捕し、稚魚に養成して湖に放流する事業を行っている。
 昭和51年以降のヒメマス稚魚の放流尾数と回帰尾数を表4-4-2に示す。回帰率は0.03〜1.48%とかなりの幅があり、平均すると0.57%である。
 なお、中禅寺湖産ヒメマスの成熟、すなわち親魚の回帰年齢は、標識魚の回収による調査から、雌では3(2)及び4(3)年魚で、その主群は、ほぼ3年魚であることが分った。
 
表4-4-2 ヒメマス稚魚の放流尾数と回帰親魚尾数
放流年 放流尾数(A) 回帰親魚尾数(R) 回帰率(R/A%)
昭和51年 310,875 4,605 1.48
昭和52年 968,375 5,548 0.57
昭和53年 540,208 3,313 0.61
昭和54年 1,239,150 4,739 0.38
昭和55年 1,458,212 10,914 0.75
昭和56年 1,350,700 13,376 0.99
昭和57年 1,222,700 2,935 0.24
昭和58年 2,731,950 3,076 0.11
昭和59年 3,550,840 1,170 0.03
注)
回帰親魚尾数は、放流してから2年後の年の地曳網、ウケ場での漁獲尾数
出典:
中禅寺湖産ヒメマスの再生産関係と持続的生産量 石島等。
 
 放流回数を多くすることが必ずしも資源量の増大に結びついていないと考えられる。
 
図4-4-2 
マス類稚魚放流量の推移(出典:中禅寺湖漁業協同組合総会資料)
 
(単位:千尾)
  平成4年 平成5年 平成6年 平成7年 平成8年 平成9年 平成10年 平成11年 平成12年 平成13年
ヒメマス 1202.5 383 1064.3 463.06 445.749 706.3 1937 1027.6 1118.7 284.7
ホンマス 102.5 146.3 134 48.07 208.4 107 132 0 182.2 61.4
ニジマス 105.4 201 310 176.2 187.8 189.6 164.7 75.1 10.5 218.8
ブラウン 32.3 69.7 45.9 85.8 85.7 86.8 318.7 36.7 141 10.8
スチール 2.7 23.2 16 51.3 10.7 82 34.2 60.2 0 13.8
出典:中禅寺湖漁業協同組合総会資料
 
(5)漁業と漁獲量
 中禅寺湖における地曳網漁業は、種苗生産を目的とした、産卵親魚の捕獲を行うためにのみ実施している。その時期は、母川(放流が行われた河川)に回帰する頃、即ち、9月上旬から10月中旬(その年によって異なる)で、採卵目標に応じた親魚の捕獲を行っている。採捕された親魚は、雌雄に分けられ、体長測定、標識調査、ならびに計数などの生物学的調査を行った後に、採卵に供している。
 一方、流入河川(菖蒲ヶ浜;湯川と人工河川、千手ヶ浜;清水)には簗(うけ場)を設置し、遡上する親魚の捕獲調査を実施している。これらの採捕された魚は、体長、体重などの測定、及び標識の調査を行い、母川回帰に関する資料を得るとともに、採卵に供している。
 地曳網及び簗(うけ場)で捕獲されたヒメマス親魚尾数の採捕量と採卵量の年変化を図4-4-3に示す。
 
図4-4-3 
ヒメマス親魚の採捕量と採卵量(出典:中禅寺湖漁業協同組合総会資料)
 
 組合員による漁獲量と遊漁者による漁獲量の推移については、石島等(1989)が次のようにまとめている。
 
 『ヒメマスの漁獲は、組合員の外に漁期中に同湖を訪れるかなりの数の遊魚者によっても行われている。遊魚には、岸釣りと船釣りがあるが解禁当初を除いて岸釣りでヒメマスが漁獲されることはほとんどないので漁期中の遊魚者による漁獲減耗分は、船釣りによるものとしてさしつかえないと思われる。
 漁協の遊魚券(船)の売上げ枚数は、50年代当初と比較してほぼ3倍となっており、それに伴って遊魚者による漁獲減耗も増加していると思われるが推測の域を出ない。
 一つの試みとして次のように考えた。
 
58年の組合員出漁回数
2,552回
漁獲尾数
25,982尾
58年遊魚券(船)売上げ
6,281枚
 
 
 6,281隻のうち80%がヒメマス釣りをし、そのうち70%が朝、夕の2回釣りを行うとすると6,281×0.8×(1+0.7)=8,542回 出漁することになる。
 組合員は1回出漁して25,982/2,552=10.18尾捕獲しているが、遊魚者はその半分の漁獲としても8,542×10.18/2=43,478尾となり、遊魚者による漁獲は、近年では組合員のほぼ2倍になるものと推定される。
 
表4-4-3 58年以降の中禅寺湖の全漁獲尾数の推定値
組合員(尾) 遊漁者(尾) 合計(尾)
58 26,000 52,000 78,000
59 16,600 33,200 49,800
60 8,600 17,200 25,800
61 18,000 36,000 54,000
*組合員と遊漁者の欄の単位は、原著によれば(人)である
 
 遊魚者により組合員の2倍の漁獲がなされていると仮定すると、58年以降の中禅寺湖の全漁獲尾数の推定値は、表4-3-4のとおりである。
 漁獲尾数は変動が著しいが25,800尾から78,000尾の間となる。漁獲尾数の半分以上を占める1魚の漁場への加入は、実際にはいっせいに加入してくるのではなく、1〜2ヶ月かけて徐々に加入してくるのであるから、その加入を7月中旬としたことで持続生産量が過大に評価されているおそれがある。』
 図4-4-4には、昭和42年度から平成13年度までの遊魚者数の推移を示す。
 
図4-4-4 昭和42年度から平成13年度までの遊魚者数の推移
出典:中禅寺湖漁業協同組合総会資料
 
 専門委員の加藤禎一博士が、中禅寺湖のヒメマスの採卵記録についてまとめているので以下に収載する。







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