III章 調査成果
(1)地理
(1)地理
図3-1-1 日光市概況
日光市は、栃木県の西北端に位置し、県庁所在地の宇都宮市から西に約30km、東京都から約100kmの距離にある。市域は東西約29km南北約22km総面積は320.98km2で、山林や原野が市域の90%以上を占め、標高300m程度の平坦地から2,000mを超える山岳を有している。また中禅寺湖を中心とした湖沼群、湿原、渓谷、滝など豊かな自然を有し、日光国立公園の中心として、国内外から多くの観光客が訪れている。
本事業の調査対象地域とした「奥日光」は、日光いろは坂、中禅寺湖、湯ノ湖、男体山、戦場ヶ原、小田代原などを含む地域の総称であり、豊かな自然環境が形成されている。
図3-1-2 奥日光周辺図
「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の5万分の1地形図、2万5千分の1の地形図、数値地図25000(行政界・海岸線)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである(承認番号 平14総使、第431号)」
(2)地形
日光山系は那須火山帯に属し、標高がいずれも2,000mを超す白根山、男体山、女峰山、太郎山、大真名子山、赤薙山といった山々は数十万年前の火山活動によって形成された。この火山活動は1.3〜1.2万年前まで続き、噴火によって流出した溶岩が渓流をせきとめ、湖沼群が形成された。中禅寺湖、湯ノ湖、切込湖、刈込湖、光徳沼、西ノ湖はいずれも溶岩が堰止めてできた湖である。なお、五色沼は白根山中腹にある火山湖である。周年冷涼な気候の結果、周囲の高原に堆積した植物の遺骸は分解して泥炭となり湿原へと変化し、戦場ヶ原、小田代原が形成された。表3-1-1に奥日光周辺の山岳名を示す。
表3-1-1 日光市の山岳
名称 |
ふりがな |
標高(m) |
名称 |
ふりがな |
標高(m) |
白根山 |
しらねさん |
2,578 |
金精山 |
こんせいざん |
2,244 |
男体山 |
なんたいさん |
2,484 |
外山 |
とやま |
2,204 |
女蜂山 |
にょほうさん |
2,483 |
山王帽子山 |
さんのうぼうしやま |
2,077 |
錫が岳 |
すずがたけ |
2,388 |
赤薙山 |
あかなぎさん |
2,010 |
大真名子山 |
おおまなごさん |
2,375 |
黒檜岳 |
くろびだけ |
1,976 |
前白根山 |
まえしらねさん |
2,373 |
宿堂坊山 |
しゅくどうぼうやま |
1,968 |
太郎山 |
たろうさん |
2,368 |
三ッ岳 |
みつだけ |
1,945 |
温泉が岳 |
おんせんがたけ |
2,333 |
社山 |
しゃざん |
1,827 |
小真名子山 |
こまなごさん |
2,323 |
半月山 |
はんげつさん |
1,753 |
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注)「ふりがな」は国土地理院(出典:日光市企画課「数字からみる日光」) |
(3)植生
陸の植生をみると、日光市から白根山まで標高差が2,000mに及び、陸生植物の分布も広葉樹林、針葉樹林、湿地性植物、高山植物の種が多い。西ノ湖、中禅寺湖周辺にはミズナラ林を中心とした針葉樹林で、ブナクラス域自然植生を形成し、高度が増すにつれてブナ林が多くなる。戦場ヶ原にはツルコケモモが多く分布するが中心はコケ類である。湯ノ湖西岸周辺はミズナラ林で、亜寒帯・亜高山帯自然植生を形成している(図3-1-3)。
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図3-1-3 植生図 (出典:環境庁)
(2) 気候
栃木県の気候は、全般的には表日本型で年間を通じて比較的雨の多い温帯湿潤気候に属す。内陸のため、気温の日較差、年較差が大きく、夏は雷雨が多く発生し、冬は空っ風が吹く。奥日光地域は、夏は比較的涼しく冬は極めて寒く、2001年の平均気温は、奥日光付近(標高1,292m)で6.8℃、日光市街地(花石町、標高647m)で11.6℃と約5℃の較差がみられる。1年を通しての最高気温と最低気温の差は40℃を越える。
(1) 気温
奥日光地域は、那須、奥鬼怒地域といった北部高冷地と同じく、北海道並の厳寒の地である。1971〜2000年の30年間の月別平均気温を比較すると、いずれの月も東京より約10℃、宇都宮市より約5℃低く、北海道札幌市に近い気候である。(図3-1-4、5)。
図3-1-4 |
月別平均気温の比較(1971〜2000年の30年間の平均値) 気象庁資料 |
図3-1-5 |
平年気温(1970〜1999年の30年間の平均値)の分布 気象庁資料 |
(2)降水量
日光周辺の年間降水量は1,900ミリ〜2,200ミリである(図3-1-6)。
図3-1-6 |
年降水量の比較 (1971〜2000年の30年間の平均値)気象庁資料 |
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