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第4分科会 ボランティア
支え合い 寄り添い 見守った十年
ボランティアほほえみの会代表(熊本県)百田なみ子
 
 御船町から、熊本市南高江の熊本きぼう福祉センターまで20分、車窓から折々の四季を感じ通い続けて約10年経ちました。作業所ヘボランティアに来た第1日目、大きい声で話す人、歌う人、作業はそっちのけでウロウロする人、ボーとする人、作業を黙々とする人・・・あ然としてしまいました。一瞬ボランティアを続けることができるか、不安になったことを覚えています。当時、先輩ボランティアさんから「ボランティアはそれぞれが自分の優しい気持ちで接しながらも、時には社会の厳しい様子も交えながらメンバーさんとの人間関係を築いています」と言われたことは印象的でした。
 作業所のボランティアは、一般ボランティアと家族ボランティアがあり20名の参加があります。ボランティアの当番表をつくるときには、無理せずにマイペースで参加して頂くようにしています。作業所がある地域からも数名の参加があり、地域との接点となっています。
 しかし精神保健ボランティアに参加しても活動方法が見つからないままに離れてしまわれるケースも多くあります。車椅子を押すなどの具体的な行為とは違い、一緒に作業をしながら得られるものや結果が自分ではすぐには確認できない面があるからだと思います。
 多分役に立っているのかどうか自分の行為に判断がつかず、戸惑いながら遠のいて行かれるのだろうと思います。
 当事者の方にとっても、「ボランティアは無責任だ」との思いがあることも否めません。苦しみと心配のなかで過ごしている人から見れば、「自分は安全なところにいて、傷つかない立場だ」との批判が出るのも当たり前だと思います。そんな当事者の痛みや思いに対しては、敏感に受け止めながら接していけるようにしたいと考えています。
 月日は流れても、作業所の雰囲気はあまり変わらず、タオル折り、乾燥しらたきの袋詰め、印刷物の封入などの各作業をメンバーはのんびりと楽しく進めています。
 何があっても私は「頑張りなさい」とは言いません。そばにいて、「元気だった」と言える、肩のこらないボランティアです。
 
第4分科会 ボランティア
地域でささえる精神保健福祉ボランティア
熊本市障害保健福祉課保健師 中野美香子
 
 熊本市では、平成10年度から地域の住民を対象として、精神障害者への理解の普及を図るとともに地域で支えるボランティアを養成することを目的に、精神保健福祉ボランティア養成講座を開催しています。
 講座修了後は精神障害者社会復帰施設や地域の保健所・保健福祉センター等で活動されており、平成13年4月にはボランティア同士のつながりを深め・心の病を持つ方々の良き理解者となる・偏見のない住みやすい地域づくりに貢献するなどを目的に修了生の有志が集まって「熊本ぷりずむ会」が結成されました。平成14年12月には、ボランティアと当事者が準備会を重ね一緒に企画したクリスマスイベントが開かれ、ボランティアと当事者がお互いにより身近な存在として感じられるようになり今後の活動を考えるきっかけともなっています。
 
熊本市の概況
人口 662,123人 世帯数 260,636(平成12年国調)小学校区 80
精神障害者保健福祉手帳交付件数 2,618
通院医療費公費負担承認中件数 5,562(平成14年12月現在)
保健所(1)保健福祉センター(5)総合支所(4)
精神科病院(17)精神科診療所(18)精神障害者生活訓練施設(1)
精神障害者通所授産施設(2)精神障害者福祉ホーム(1)精神障害者福祉工場(1)
精神障害者地域生活支援センター(2)小規模通所授産施設(1)グループホーム(5)
 
精神保健福祉ボランティア養成講座開催及び活動状況
・平成3年度熊本県精神保健センター主催の精神保健ボランティア養成講座修了生が保健所デイケアにボランティアとして参加し活動されるようになる。
・平成10年度〜平成12年度熊本県精神福祉センターと熊本市共催で養成講座開催
・平成11年度〜養成講座修了生のつどいを年4回開催
・平成13年度〜熊本市主催で養成講座開催
・平成13年4月精神保健福祉ボランティア「熊本ぷりずむ会」結成への支援
 
第4分科会 ボランティア
こころの病をもつ人々が地域で当たり前に暮らしていけるために
福岡市共同作業所福祉工房フルハート所長 矢野晴子
 
 平成10年保健所の精神保健ボランティア養成講座を経て、平成11年4月に福岡市内での精神保健ボランティア団体第1号として、「福岡ひだまりの会」を設立しました。
 また、同時に「うさぎの会」という患者会を立ちあげました。
 しかし、「福岡ひだまりの会」は出来たものの、具体的に何をしたら良いのかという一番肝心なことで悩みました。当時の担当だった保健婦さんにその後も相談に乗って頂きながら、まずは保健所のデイケア、病院、作業所での依頼に応じてのお手伝いから始めました。その後、当事者の方達の要望もあってサロン的な交流の場を提供するということで、「ひだまり交流会」を会のメインとすることにしました。
 今年で5年目を迎えますが、当初からボランティアの基本は自由意志で自発的活動だから、決して会員を拘束する活動はしないということで、出来る時に出来る事を出来る所でするというスローガンの下、各自が自由に活動しています。設立当時は、活動の拠点となる場所が欲しい、いつでも活動できるボランティアの受け皿となる所があれば良いのにと願っていましたが、一昨年前、団体加入している「ほっと福祉会」を母体とした小規模作業所「福祉工房フルハート」を開所しました。
 その間、精神障害者に対する世間の人々の認識の低さ、誤解と偏見を肌で感じ、改めてすそ野を広げなければと思いました。作業所を運営するようになってからは、頓に精神保健ボランティアのあり方や資質などの難しさを感じています。行き詰まった時、話しあえる、理解しあえる他の精神保健ボランティア団体の仲間が欲しいと思う時が多々あります。幸い、私の弟が精神科医をしていますので相談役として協力してくれることが大きな力となっています。
 また、私自身も学習が必要と、ボランティアの全国大会に参加したりしてますが、今、精神障害者に対する誤解と偏見を解くカギこそボランティアが握っていると確信しているところです。こころの病をもつ人々が地域で当たり前に暮らしていけるためには当事者、家族、医療関係、行政関係、そしてボランティアが共に手を取り合っていくことに他ならないのではと思っています。
 
全家連の平成14年度事業・活動方針について
I. 諸制度の改革・改善への取り組み
 
1. 心神喪失者医療観察法案
1)新しい制度の導入以前に、責任能力の判定こそ重要
2)「再発のおそれ」要件にするのは問題
3)最も被害を受けているのは家族であり、精神保健福祉施策の抜本的改善が必要
4)昨年の臨時国会で衆議院で可決し、参議院で継続審議中
2. 精神保健福祉施策について
1)平成14年12月19日 精神保健福祉の総合計画(7万2000人の社会的入院解消を明記)
2)平成14年12月24日 新・障害者基本計画(平成15年から10年)の発表
3)平成14年12月24日 新・障害者プラン(平成15年から5年間)の発表
4)作業所国庫補助金のか所数確保(平成15年度予算は88か所減の792か所に)
5)小規模授産施設への移行促進(平成15年度予算大幅増、86か所→213か所)
6)欠格条項の見直し作業および法改正が行われたが、問題を残す
3. 社会復帰サービスニーズ調査の実施(新規・単年度)
1)都道府県連調査説明会の実施(8月27日)
4. アジア太平洋障害者の十年最終年記念フォーラムヘの協力
1)第6回DPI世界会議札幌大会(10月15〜18日)
2)第12回RIアジア太平洋地域会議(10月21〜23日)
3)「アジア太平洋障害者の十年」推進キャンペーン大阪会議(10月21〜23日)
4)「欠格条項」総点検キャンペーン、「市町村障害者計画」策定推進キャンペーン、「情報バリアフリーとIT環境の整備」推進キャンペーン
5. 世界精神医学会WPA横浜大会への協力(8月24〜29日)
1)WPA市民公開講座「多剤大量処方から抜け出す」(8月25日)の実施
朝日新聞・毎日新聞・読売新聞・中日新聞などで詳細を報告
 
II. 啓発事業
 
1. 在宅精神障害者指導番組のラジオ放送(新規・ラジオたんぱ)
広田和子さんをパーソナリティーに起用して、好評放送中
2. 市町村への働きかけ
1)「家族会支援のてびき」の配布を予定
2)ホームヘルプを紹介するポスター・パンフレットの配布を計画するも断念(事業の中止)
3. こころの美術展の開催
今年度は、写真による公募方式(約700点の応募)
10月26日(土)〜10月31日(木)、東京有楽町・国際フォーラムで100点を掲示
4.全国障害者スポーツ大会参加に向けた各都道府県レベルの取り組み強化
1)第2回全国精神障害者スポーツ大会の開催(高知県)
2)ブロック別精神障害者スポーツ大会の開催(日本精神保健福祉連盟主催)
今年度:秋田・長野・千葉・神奈川・山梨・京都・佐賀で実施
5. 青少年を対象にした啓発活動調査研究
1)学校教育への働きかけ
2)中学・高校を対象とした調査を実施(生徒・教頭)
6. ホームページ(インターネット)による情報提供
1)ヤンセンファーマから寄付された中古パソコン約320台を各都道府県連および全国の作業所に配布
7. マスコミとの連携
1)正しい知識の普及。家族・当事者の理解促進
「統合失調症(精神分裂病)」を解説する小冊子を配布
2)病名変更キャンペーンの推進
7月8日日本新聞協会に要望書
日本新聞協会「広告賞」、日本広告主協会「消費者のためになった広告コンクール金賞」受賞
3)病歴報道の是正に向けた働きかけ
 
III. 出版
 
1. ぜんかれん誌を4万部発行へ
2. レビュー誌を年4回3000部発行
3. 単行本
社会資源名簿200−2004
社会福祉法人関係書式例集(CD−ROM付)
精神障害のある人のための就労支援の制度としくみ
4. ビデオの作成
わかちあい、まなびあい、ささえあい〜精神障害者家族会の活動〜
新しい風が吹くまちで〜地域における精神保健福祉の啓発活動〜
5. 販売促進室の設置
 
IV. 研修事業(新規事業他)
 
1. 全国大会の開催
1)京都大会にWFSAD世界大会を併設(10月9日〜11日・京都国際会議場)
2. 職業自立啓発事業として精神障害者就業セミナーを全国5か所で実施
厚生労働省障害者雇用対策課からの委託事業。就労支援への取り組みを開始
障害者雇用促進法改正で見送られた障害者雇用率への参入をめざす(5年後の見直し)
中央セミナー(千葉)、宮城、和歌山、沖縄、神奈川で実施
3. エンパワメント研修会を実施
 今回は、心理教育・家族教室ネットワーク研究集会との合同開催
 
V. 組織強化に向けて
 
1. 「ぜんかれん」誌を広げよう運動
1)「ぜんかれん」誌を読もうパンフの配布
2. ハートピアきつれ川検討委員会
1)将来構想の検討
2)経営改善策の検討
3. ぜんかれんニュースの発行
1)随時発行から年6回程度へ
4. 全国一斉統一要望行動の実施
1)市町村への要望活動強化
2)調査データの整理(全国市町村手帳サービスー覧を作成)
5. 県連会長・事務局長会議の実施(評議員会に連続して実施)
6. 家族会リーダー研修会を実施
7. NAMIとの連携
1)NAMI大会に役職員数人を派遣
2)家族会員交流事業の実施(2人を派遣)
3)日米家族会組織の比較研究
 
VI. 補助事業
 
※国・各助成団体からの補助金を受けて、下記の事業(22事業・昨年19事業)を実施する。
(I〜Vまでに一部重複あり)
1. 小規模作業所運営助成事業(国庫補助事業)※1月17日に送金
2. 精神障害者社会復帰促進事業(国庫補助事業)
1)精神障害者家族会研修会
2)家族会リーダー研修会
3. 精神障害者社会復帰促進研修事業(国庫補助事業)
1)社会復帰施設職員研修会
2)生活支援センター職員研修会
3)作業所・グループホーム研修会
4)職親研修会
4. 精神障害者社会復帰促進調査研究等事業(国庫補助事業)
5. ホームヘルパー研修試行事業(国庫補助事業)
6. 社会復帰サービスニーズ調査(国庫補助事業)※日精協で実施
7. 精神障害者の職業自立啓発事業(国庫補助事業)
8. 精神障害者の雇用事例についての調査研究(日本障害者雇用促進協会研究事業)
9. 芸術活動支援事業(こころの美術展)(社会福祉・医療事業団助成事業)
10. ホームヘルプ普及事業(社会福祉・医療事業団助成事業)※中止
11. 精神保健福祉推進活動研修会(日本財団補助事業)
12. 関東における総合相談事業(日本財団補助事業)
13. 精神保健福祉の啓発活動(日本財団補助事業)
14. 家族会国際フオーラム(日本財団補助事業)
15. ぜんかれん誌発行(日本自転車振興会補助事業)
16. リハビリテーション推進会議(日本自転車振興会補助事業)
17. 在宅精神障害者指導番組の放送(日本自転車振興会補助事業)
18. 精神障害者の相互援助相談活動助成事業(全国社会福祉協議会助成事業)
 
※単年度事業の8.と10.と14.以外の事業は、来年度も継続する方針







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