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<第4分科会>
「障害者の安心・安定をどう確保するか」
―働き場の開拓、経済的な安心が先決・・・親亡きあと―
 
発表者 長門地区精神保健家族会
共同作業所・指導員/グループホーム世話人
山近 成司
 
1. はじめに
 山口県長門地域は、日本海に面した北部にあり、1市3町(長門市・三隅町・日置町・油谷町)、人口4万3千余人の農林漁業、観光、中小商工業を主な産業とする地域である。この長門地域では長門地区精神保健家族会(会長 岡功)が山口県(長門健康福祉センター)の支援を受けて、家族会活動をはじめ、共同作業所運営事業と精神障害者グループホーム事業を設置運営しています。
 精神障害者の治療は、症状が改善し退院した時点が終わりではありません。幻覚・妄想や興奮などの陽性症状は消えたとしても意欲の低下や引きこもりなどの陰性症状は長く続き、そのために様々な生活障害を持ち続けています。さらには、社会的偏見から仕事や住居の確保も出来ないといった不利な状況にさらされています。こうした問題を解決しない限り、精神障害者が安心して社会復帰・社会参加することは出来ないのです。
 これらの問題を解決するためには、医療がもっとも重要でありますが、この医療の範囲だけでは到底不可能で、地域社会の理解と支援が不可欠になってきます。
 このようななか、長門地区精神保健家族会は2つの事業を設置運営しています。
(1)精神障害者グループホーム“ふれあいアパート”運営事業
(2)長門地区精神障害回復者共同作業所事業
 
 
管内略図
(拡大画面:47KB)
 
(H13.4.1現在)
  長門市 三隅町 日置町 油谷町 合計
人口(人) 24,650 6,429 4,698 8,732 44,509
世帯(戸) 9,141 2,188 1,657 3,236 16,222
面積(Km2 152.40 68.16 44.80 93.18 358.54
人口密度 161.7 94.3 104.9 93.7 124.1
 
医療機関数
(H13.4.1現在)
  長門市 三隅町 日置町 油谷町 合計
病院 4 1 1 0 6
診療所 19 5 2 5 31
歯科診療所 11 1 2 3 17
助産所 0 0 0 0 0
技工所 2 1 0 1 4
薬局 18 1 0 2 21
 
管内市町別精神障害者把握状況
関係資料名等 各市町別 管内状況
長門市 三隅町 日置町 油谷町
【患者数等】          
精神障害者数(推計) 277 94 50 125 546
入院患者数 43 29 12 23 107
入院形態 措置入院 2 0 0 0 2
医療保護入院 36 25 12 19 92
任意入院 5 4 0 4 13
在宅患者数(推計) 234 65 38 102 439
通院医療費公費負担者数 133 34 21 56 244
通院医療費公費負担申請者数          
  平成11年度 73 22 14 34 143
平成12年度 68 25 10 30 133
精神障害者保健福祉手帳所持者数          
  平成11年度 33 14 9 17 73
平成12年度 43 17 6 9 75
相談件数          
  平成11年度 580 80 70 40 770
平成12年度 1317 120 110 95 1642
【社会資源等】          
共同作業所通所者数 13 8 2 1 24
デイ・ケア参加者数 28 10 4 8 50
通院患者社会適応訓練対象者 0 1 0 0 1
(平成13年4月1日現在)
 
2. 長門地区精神保健家族会の行っている事業(その1)
(1)精神障害者グループホーム“ふれあいアパート”事業
   (目的)長門地域において共同生活を営むことができるよう、居室を確保して提供し、世話人を配置して日常生活の支援や相談への対応をはかり、自立と地域交流をめざし、生活援助を行います。
 
設置主体 長門地区精神保健家族会 施設の名称 ふれあいアパート
代表者 岡  功 責任者 岡  功
世話人 中川ツヤコ. 山近成司. 藤本三雄.
事業開始年月日 平成9年4月1日 職員数 4人
所在地
山口県長門市東深川字西港1188番地の9  
山口県長門市東深川宇西港1188番地の33  
  TEL 0837(22)0871
緊急時連絡先
山口県長門市東深川1109番地(湊一東区)  
中川ツヤコ TEL 0837(22)0871
緊急時対応施設等
山口県長門市東深川965番地6  
三隅病院 長門診療所 TEL 0837(22)2440
入居定員 (  )
6人
現員
(  ) (  )
男性6人 女性・人
利用料
  (   )
一人月額 25,000円(共益費 月額2,000円)
建物
土地 390 m2   自己所有  貸借
建物 205 m2   自己所有  貸借
居室数 6室    
(注1)
相互利用運営事業に該当がある場合は( )で別掲で記入すること。
(注2) 知的障害者グループホームに精神障害者が入居している場合は、当該グループホームを利用する精神障害者について記入すること。
 
A. 地域の環境について
 平成9年に民間の方の協力を得て木造2階建の民家2棟を借受けて、世話人3人を配置して、自立をめざす退院者(回復途上者)の生活を援助し、相談に応じて、この地域での普通の生活を送ることができるように「住まい」や食事と就労の援助をしています。
◎この「アパート」のある深川地域とは・・・、
長門市の中心部・・・市街地内
深川湾に面した湊漁港のある集落で・・・
―漁業者を主に190世帯(湊−東・西区)―
◎障害者が生活するのに便利な地域・・・、
長門市駅・スーパーマーケットや商店街をはじめ
郵便局・銀行・病院・長門健康福祉センター・市役所等
◎就労場所が近隣にある
水産加工場・養鶏加工場・木材加工場・・・、
・・・通勤圏内には湯本温泉地・仙崎漁港がある。
 
B. 障害者援助の必要性
 障害者には援助(適切なリハビリ)が不可欠です。不十分な場合、障害者は不安定な生活を強いられ、再発の危険性に身をさらされます。再発のないように予防しながら、その人らしく楽に生きる方法を身につけることが大切です。
 
まず第1. 入居手続及び許可と同時に(事務的にならず、日時をかけて)世話人が手がけることは「世話人台帳」と「家系表」を日時をかけて障害者の話しをよく聞きながら作成することを心がけている。
次に
第2.
(1)機能障害―病気の症状―幻覚・妄想・うつ
 
(2)能力障害―生活障害(生活のしづらさ)を知る。
 〜生活のしづらさ〜
1)
生活技術の不得手:
 
 
食事の仕方、金銭の扱い、服装の整え方、服薬の管理、社会資源の利用の仕方
 
2)
対人関係
 
 
人づきあい、あいさつ、他人に対する配慮、気配り、尊大と卑下のからんだ孤立
 
3)
就労能力の不足
 
 
生まじめと要領の悪さ、のみこみが悪い、習得が遅い、手順への無関心、能率、技術の低さ、協力が下手
 
4)
安定性に欠け、持続性に乏しい
 
5)
現実離れした空想にふけることが多い:動機づけの乏しさ、生き甲斐の消失 
第3.
社会的不利―偏見差別―家や仕事がない。
等に着目して、各人の状態を把握して、出来ることから援助策を講じていきます。
 
C. グループホーム“ふれあいアパート”入居者
 
平成14年4月1日現在
NO 性別 年齢 生活状況
1 57歳 A棟1−1  
2 53歳 A棟2−10  
3 40歳 A棟2−8  
4 42歳 A棟2−7  
5 52歳 A棟2−6  
6 65歳 B棟2−1  
 
D. 社会復帰している元入居者の生活の調査・把握
 3名(市内で生活している者2名、授産施設「夢かれん」入所者1名)
 
 この人達は“受け入れてくれる家族”が少なく、関係がうまくいっていない。
 長い間、社会的入院の状態に置かれていた人達である。







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