3 社会的差別・偏見への認識
了解事項
●精神病は遺伝するというのは、精神障害を正しく理解していず「キチガイ」として忌み嫌ってきた市民の意識を映し出した風評です。
●もともとストレスに弱い体質の人であったり、ストレスの解消が下手だったり、身近にこころを許せる相談相手がいないといったことが重なることを、発病の原因とみるのが最近の見方です。
●精神障害者同士の結婚も珍しいことではなくなりました。子どもがいる夫婦もあれば、自分のことで精一杯だからと子どもを生まないことを選択する人もいます。
●「子どもを生むことが幸せ」という考えをもつ精神障害者の女性が少なくありません。子どもを生むために服薬を中断することや、結婚できない自分をダメな人間と思い込むことで、調子を崩すことがあります。
●地域での子育て支援が希薄になっている現代社会では、子育てに不安をもつ母親が大勢います。児童虐待や夫婦間暴力などは、将来の精神障害者問題につながる課題です。
一般的な関わり
●精神障害者にとって育児や子育ては、大変負担のかかることです。家事援助などのホームヘルプサービスを通した、育児や子育ての間接的支援が必要です。
●サービスの対象者を障害者という枠で見ることは、性を無視した見方です。一人の女性、あるいは男性としての子どもへの関わり方を、具体的に教えることが大切です。
●同性同士の方が性に関することを話題にしやすいので、男性ホームヘルパーが男性利用者にかかわることも必要です。
一般的なリスク
●育児に伴ういろいろな問題にうまく対処できないことがストレスとなって、調子を崩すことがあります。利用者が入院することも起こります。
●ホームヘルパーとしてかかわる中で、自分によくしてくれる人だと利用者が好意をもち、恋愛の対象となることがあります。
●ホームヘルパーとしての行為や言葉が、セクハラと受け取られることがあります。逆に、利用者からホームヘルパーがセクハラを受けることもあります。
了解事項
●家族に精神障害者がいることが、きょうだいの結婚や就職に影響することが未だにあります。精神障害者が結婚式や葬式へ参列することを認めない家族もいます。
●長い間精神障害者を精神病院に入院させたままにしておき、地域の人に知られないようにしている家族もいます。
●本人は障害年金を受けたくても、障害年金や福祉制度の申請窓口で地域内の知人に会うことや、書類から精神障害者のいることがわかってしまうと考えて、家族が利用を避ける傾向があります。
●本人が辛い状況にあっても、家の恥として精神科に受診することを拒否している家族もあります。周囲はわかっていても、それに対して何も言えない状況が未だにあります。
●身内への迷惑を考えて、精神障害者自らが自分のことを隠していることも数少なくありません。
一般的な関わり
●ホームヘルパーが家族と精神障害者の間に入ることで、外の空気を持ち込むことにより、家族の精神的な安定を図ることが大切です。
●ホームヘルプサービスを受けていることを、周囲に知られたくないと思っている家族は多いのです。ホームヘルプを受けていることを家族が隠さなくてもよくなるように、時間を掛けることが必要です。
●高齢者のホームヘルプサービスをとおして、その家族の中に精神障害者がいることに気づくときがあります。精神障害者のホームヘルプサービスが始まったこと等を情報提供し、受診の機会をつくり社会復帰施設等につなげていけるよう配慮することが大事です。
一般的なリスク
●家の中に他人を入れたくないという理由から、ホームヘルプサービスを利用することに家族が反対するといった状況があります。それは、高齢者へのホームヘルプサービスが県内でなかなか広がらないことと共通しています。
精神障害者を抱えている家族の場合には、強い抵抗のあることを予測することです。
●ホームヘルパーが利用者についての愚痴を家族から聞く役になり、家族内の問題に巻き込まれることがでてきます。
●抵抗が強い家族の場合には、ホームヘルパーが家の中のことをしゃべったなどと、近所の噂や陰口として被害的に捉えることがあります。
了解事項
●これまで、精神障害者の通う・住む施設の建設を、地域住民が反対するということが全国的に起きました。残念ながら茨城県でも起きています。その結果、運営や設立場所等に不利な条件が付けられています。
●多くの施設が人里から離れた所や交通の便の悪い郊外にあるのが一般的です。
そのことは、「精神障害者だから」「危ない人の集まり」といった差別・偏見をさらに助長する要因になっています。
●福祉先進国では、大きな施設は人の住まいとしてふさわしくないと考え、施設が住宅街に普通の住まいと同じようにあります。
●福祉先進国の中にも障害者と一緒に暮らしたくない人はいます。その人たちは精神障害者を排除するのではなく、精神障害者と直接かかわらない生活を選んでいきます。
●街中から精神障害者を排除することは、人間として認めないことと同じです。障害者を含めて一緒に暮らすことが、当たり前のことなのです。
一般的な関わり
●ホームヘルパーの方から、サービスを受けている精神障害者が通っている施設と連携をとることで、利用者の生活が見えることを押さえておく必要があります。
●利用者の利用している施設がどういう所かといったことを知ることにより、精神障害者が置かれている状況を理解することは大事なことです。
●精神障害者を特別な人としてではなく、同じ地域の人として、当り前の付き合いをすることが大切です。
一般的なリスク
●施設の利用の仕方によっては、ホームヘルプサービス等を利用せず、施設だけに任せっきりになることがあります。
●ホームヘルパーが利用者と同じ地域に住んでいる場合には、自分の日常生活を知られることにもなります。
●ホームヘルパーが同じ地域内に居住しているようなとき、自分のことが知れ渡ってしまうのではないかと警戒する利用者も出てきます。
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