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1−3−11 国土地理院
 国土地理院については回答が得られず、関連資料も入手が困難であったため、海洋管理における位置づけは十分には把握できなかったが、国土データを管理する役割から考えれば、重要な位置を担うものであると考えられる。
 以下、同院ホームページに掲載されている海洋関連の施策を整理した。
(1)潮位観測
 国土地理院は、全国に設置されている潮位観測施設10の観測記録を収集・公表する「海岸昇降検知センター」の事務を担当している。同センターは、国や地方自治体、民間の機関がそれぞれの目的で設置している潮位観測施設の観測記録から地殻活動を検出し、地震予知研究に役立てるため、これらの資料を統一した方法で迅速にとりまとめて公表することを目的としている。なお、同センターは図1−12に示す機関等により運営されている。
 
 
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図1−12 海岸昇降検知センターの組織
出典:海岸昇降検知センターホームページ
 
10 国土地理院は「験潮場」、海上保安庁は「験潮所」、気象庁は「検潮所」と、所管によって呼称が異なる。
 
(2)GPS連続観測システム
 同院では、高精度の地殻変動計測として、全国約900点に設置したGPS連続観測局(電子基準点)からなるGPS連続観測システムを測地観測センターにおいて運用している。
 この観測システムは、通信回線を通じて送信されるデータを解析し、リアルタイムに近い状態で全国の地殻変動の状況をモニタリングすることが可能である。
 わが国のEEZを保全していくためには、国土の変動をこのようなシステムで管理していくことは重要であり、特に、離島に設置されるGPS連続観測局は同システムにおいて重要な役割を担っている。
 
(3)地理情報システム(GIS)
 政府は、GISの利用を支える地理情報(地図データ、統計情報等)の整備と相互利用の環境づくり等に計画的に取り組むことを目的として、平成7年に「地理情報システム(GIS関係省庁連絡会議」を設置した。
 同連絡会議では、平成8年12月に「国土空間データ基盤の整備及びGISの普及の促進に関する長期計画」をとりまとめ、現在は、平成14年2月に策定した「GISアクションプログラム2002−2005〜GISにより豊かな国民生活を実現するための行動計画〜」に基づいた施策が展開されている。
 GISで海洋がどの範囲まで含まれているのかについては、今回の調査では明らかにできなかった。
 
1−3−12 環境省
(1)海洋環境モニタリング調査
 環境省では、国連海洋法条約の発効に伴い、EEZの海洋環境保全の観点から平成10年度より「海洋環境モニタリング調査」を実施している。この調査は、昭和50年度から平成6年度まで実施されていた日本近海海洋汚染実態調査で得られた成果を基礎として、その内容を拡充したものとなっている。
 実際の調査は、平成9年度に当時の環境庁がとりまとめた「海洋環境モニタリング調査指針」に基づいて行われており、以下の2項目について海洋汚染調査が行われている。これらの調査では、水質および底質の調査に加え、重金属類や化学物質の生体濃度調査も行われている。
 なお、同調査は対象海域を1年でカバーすることが困難であることから、わが国周辺海域を3〜5年で一巡することを目安とした調査計画が立案されている。
(1)陸域を起源とする汚染
 特に大きな汚染原因が存在すると考えられる沿岸や内湾から沖合に向かって汚染物質の分布と濃度勾配を把握している。なお、本調査において、海上を漂流するプラスチック類のゴミ分布調査も行われている。図1−13〜図1−15に平成10年度から平成12年度にかけて行われた調査位置を示す。
(2)廃棄物などの海洋投入処分による汚染
 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」および「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」において海洋への投入処分が行われている海域を対象に行われる調査で、主に重金属類や有機塩素化合物等の化学物質を調査対象としている。
 なお、海洋汚染防止法で規定されている排出海域のうち、A海域(水質および底質)を前出の海上保安庁が、A海域(水質)およびB・C海域(水質)を環境省が調査している。図1−16に廃棄物の排出海域を示す。
 
 
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図1−14 海洋環境モニタリング調査の実施位置(平成10年度)
出典:環境省提供資料
 
 
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図1−15 海洋環境モニタリング調査の実施位置(平成11年度)
出典:同前
 
 
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図1−15 海洋環境モニタリング調査の実施位置
出典:環境省提供資料
 
 
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図1−16 廃棄物の排出海域
出典:同前







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