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1−3−8 国土交通省
(1)大陸棚調査
1)調査の概要
 国連海洋法条約において、200海里を超える海底であっても一定の条件を満たせば、鉱物資源や底魚などの海底資源に関する主権的権利が最大350海里まで認められるが、そのためには平成21年(2009年)までに科学的な根拠資料を大陸棚委員会に提出し、審査を受けることが必要である。
 平成14年度までに、海上保安庁の調査により65万平方キロメートルの海域に可能性があることが判明しているが、平成11年に大陸棚委員会において新たなガイドラインが策定されたことにより、新たに地殻の判定や堆積岩厚の計測等が必要になっている。
2)大陸棚調査に関する関係省庁連絡会議
 大陸棚調査に関する上記のような状況を受け、関係省庁間の緊密な連携を図り、これを着実に推進するため政府では「大陸棚調査に関する関係省庁連絡会議」を設置し、同省は連絡会議の庶務を内閣官房と協同で実施している。構成メンバーは以下のとおりである。
議長:内閣官房副長官補
構成員:外務省経済局長、文部科学省研究開発局長、水産庁次長、資源エネルギー庁次長、国土交通省総合政策局長、海上保安庁次長、環境省地球環境局長
現在、同連絡会議では特に以下の内容について検討が行われている。
・地殻判定に必要なボーリング調査は、海上保安庁では対応不可能であることから、機材を所有する金属鉱業事業団の協力を得る。
・地殻判定には専門家の協力が不可欠であり、文部科学省および経済産業省との連携が必要。
 なお、実際の測量調査等は海上保安庁において実施されており、調査の詳細については海上保安庁の項において紹介する。
 
(2)海事分野における安全対策
 平成13年9月に発生した米国同時多発テロ事件をきっかけとして、国際海事機関(IMO)において平成14年2月から計4回にわたり海事分野のテロ対策の強化についての検討が重ねられてきた。その後、平成14年12月に開催された第5回海上人命安全条約締約国政府会議において、以下の内容を義務化する「1974年の海上における人命の安全のための国際条約」(以下、SOLAS条約とする)の改正、ならびに船舶および港湾の国際保安コード(ISPSコード)が採択された。
(1)船舶自動識別装置(AIS4)の搭載の前倒し
(2)船舶履歴情報の備置き
(3)船舶識別番号の表示
(4)船舶保安警報の設置
(5)政府による保安レベル(3レベル)の設定
(6)各保安レベルに対応した船舶及び港湾施設における保安対策の実施
・船舶に関する保安上の評価と船舶保安計画の作成
・海運会社保安主任の指名
・船舶保安主任の指名
・港湾施設に関する保安上の評価と港湾施設保安計画の作成
・港湾施設保安主任の指名
(7)保安措置に関する船舶検査の実施と条約証書発給
(8)入港国による監督
(9)政府による情報提供
 わが国でも、同条約の改正に伴い、関係する国内法令の改正が進められている。
 
(3)海洋汚染の防止
 海洋汚染の防止は、世界各国が協調して取り組むべきものであるとの観点から、IMOにおいて以下に示す条約が策定されている。
・ロンドン条約
・MARPOL73/78条約5
・OPRC条約6
 
4 Universal Ship-borne Automatic Identification System:船舶が自船の情報を周囲の船舶や陸上局に継続的に発信し、他船から同様の動静情報を自動的に取得するシステム。
5 正式名称は「1973年の船舶による海洋汚染防止のための国際条約に関する1978年の議定書」で、わが国は1983年に批准している。
6 正式名称は「1990年の油による汚染に係る準備対応及び協力に関する国際条約」で、わが国は1995年に批准している。
 
・TBT条約7
・バラスト水中の有害水生生物による環境汚染防止に関する条約
 わが国では、海洋の汚染防止は「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」(以下、海洋汚染防止法とする)により規定されている。
 ただし、同法は主として船舶および海洋施設からの油または廃棄物の排出を規制することを目的としており、周辺国を含めた陸域からの汚染源は対象外となっている。
 以下に、海洋汚染防止の具体的施策を整理する。
1)大規模油汚染対策
 上記OPRC条約の発効を受け、平成7年5月に「油汚染事件に対する準備及び対応に関する関係省庁連絡会議」(事務局:海上保安庁)が設置され、同年12月に「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」が閣議決定した。同計画は、平成9年1月に発生したナホトカ号油流出事故の教訓を踏まえて、同年に全面的な改訂が行われている。大規模油流出事故発生時における政府の対応を図1−8に示す。
 
2)船底塗料問題への対応
 わが国は、世界に先駆けて以下のようなTBT船舶用塗料に係る規制を推進してきており、TBT条約の策定をIMOに対して働きかけ、その成立に大きく貢献した。
・国内造船所でのTBT船舶用塗料塗布の完全使用自粛(1992年)
・国内塗料工場での製造中止(1997年)
 
3)バラスト水中の有害水生生物問題への対応
 船舶のバラスト水中に含まれるプランクトンなどの水生生物が、本来の生息地ではない場所に移動させられることにより、生態系のバランスを崩すなど有害な影響を与えることが国際的な問題になっている。
 わが国では、バラスト水中生物の殺滅や除去を船舶に義務付けることにより、生物の拡散を防止する条約案をIMOに提出し、その策定に大きく寄与している。
 
7 TBT(トリブチル・スズ)等を含む有機スズ系船舶用塗料(TBT船舶用塗料)等の使用を規制するための新しい条約で、正式名称は「船舶についての有害な防汚方法の管理に関する国際条約(仮称)」であるが、通称TBT条約という。
 
 
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図1−8 大規模油流出事故時における政府対応の概要
出典:国土交通省提供資料







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