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1−3 省庁別の調査結果
 前節で、各省庁の調査結果に基づいたわが国のEEZ管理施策に関する考察を行ったが、ここでは、省庁別に今回の調査で明らかになったEEZ管理を中心とした海洋関連施策を整理した。
 
1−3−1 内閣府・内閣官房
 内閣府については回答が得られなかったため、他省庁の回答結果をもとにとりまとめた。なお、今回の調査では調査対象を内閣府としたが、関係省庁連絡会議等に参画しているのは内閣官房であることから、両者を対象に記述する。
(1)海洋政策に関する関係省庁連絡会議
 今回の他省庁の回答結果で明らかになった範囲では、内閣官房は以下に示す関係省庁連絡会議の庶務等を担当している。
(1)海洋開発関係省庁連絡会議
(2)同連絡会議沖ノ鳥島作業部会
(3)大陸棚調査に関する関係省庁連絡会議
(4)油汚染事件に対する準備及び対応に関する関係省庁連絡会議
 
(2)総合科学学術会議
 総合科学学術会議は、内閣総理大臣および内閣を補佐し、わが国全体の科学技術を俯瞰し、各省より一段高い立場から、合的・基本的な科学技術政策の企画立案および総合調整を行うことを目的として、平成13年1月に内閣府に設置された。
 同会議の議長は内閣総理大臣であり、関係省庁大臣や学識経験者、民間企業関係者等から構成されるが、海洋分野の関係者は含まれていない。
 
1−3−2 防衛庁
 防衛庁については回答が得られなかったため、防衛白書および関係資料などをもとにとりまとめた。
(1)不審船などへの対応
 警察機関では対処が不可能または著しく困難と認められる事態が発生した場合には、海上警備行動1や治安出動2により自衛隊が対処する。さらに、事態が外部からの武力攻撃に該当する場合には、防衛出動により対処する。
1)海上警備行動
 平成11年に発生した能登半島沖の不審船事案では、北朝鮮の工作船と思われる2隻の不審船に対し、自衛隊創設後初めての海上警備行動が発令された。この不審船事案を踏まえて、海上自衛隊では特別警備隊の新編や艦艇・ヘリコプターの武装強化などの事業を進めている。
 また同年、海上保安庁との間で「不審船に係る共同対処マニュアル」を策定し、不審船が発見された場合の初動対処、海上警備行動の発令前後における相互間の役割分担などについて規定するとともに、情報交換および対処要領などに関する共同訓練などを行い、連携の強化を図っている。
 
2)九州南西海域不審船(工作船)事案への対応
 平成13年12月に発生した九州南西海域不審船事案では、海上自衛隊の哨戒機が通常の警戒監視活動中に一般の外国漁船として確認し、海上幕僚監部において写真解析作業が行われた。その後、不審船と判断され、官邸などへの連絡開始とともに、発見から約9時間後に海上保安庁に連絡を行った。
 事後、不審船事案への対応について政府で検証作業が行われ、防衛庁については以下の措置が講じられた。
○哨戒機の写真伝送能力の強化
○早期対処体制の整備(不確実な段階から、内閣官房・防衛庁・海上保安庁間で不審船情報を共有する)
○自衛隊艦艇の初動体制整備(工作船の可能性の高い不審船の場合、当初から自衛隊の艦艇を派遣する)
○遠距離に対応した武器の整備など
 なお、EEZで発見した不審船を取り締まる法的根拠およびEEZで発見した不審船に対する武器使用条件の緩和については、国際法上の制約などを踏まえつつ政府としてさらに検討することとされている。
 
1 海上における人命もしくは財産の保護または治安の維持のため特別の必要がある場合に自衛隊がとる行動。内閣総理大臣の承認が必要。
2 間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもっては治安を維持することができないと認められる場合などに、内閣総理大臣の命令により自衛隊がとる行動。命令による出動と都道府県知事からの要請による出動がある。
 
3)自衛隊法の改正
 平成11年に関係閣僚会議で了承された「能登半島沖不審船事案における教訓・反省事項について」において、危害射撃のあり方を中心に法的な整理を含め検討することとなり、内閣官房が事務局となって関係省庁で検討が行われた。その結果をもとに、平成14年11月に改正自衛隊法が施行され、同時に改正された海上保安庁法を自衛隊法で準用することとなった。改正の要点は以下のとおりである。
○海上警備行動時などにおいて、一定の要件に該当する事態であると防衛庁長官が認めたときは、船舶の進行を停止させる手段が他になく、合理的に必要と判断される場合において武器を使用することができ、その結果人に危害を与えることとなって、法律に基づく正当行為と評価される。
 
(2)海洋調査
 防衛庁、特に海上自衛隊が行っている海洋調査については資料が不足しているため、正確な情報は把握できなかったが、一般的には、XBT(投げ捨て型水温センサー)をわが国で最も多く投入しているのが海上自衛隊といわれる。
 なお、文部科学省のホームページ上で公開されている、平成13年11月に開催された海洋開発分科会第2回海洋研究・基盤整備委員会の議事録には、防衛庁に関する議論についての記録があり、おおむね以下のような内容であった。
○国内で最も多くXBTを投入しているのは海上自衛隊であり、海底地形調査も行っている
○わが国の海洋観測船等の一覧によれば、南極観測船「しらせ」を含め5隻の自衛艦が海洋調査を行っている
○JODCに送られてくる防衛庁のデータは、観測後2〜3年経過した水温のプロファイルデータのみである
○海洋審議会時代から通じて、政策論議の対象が平和利用であるため、防衛庁はこの枠組みに入っていない







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