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1−2 海洋管理施策の現状調査
1−2−1 調査の概要
 昨年度調査では、本事業の研究委員会を構成する有識者委員の意見をもとにわが国200海里水域の管理に係る課題・論点をとりまとめたが(平成13年度報告書p.6〜p.8参照)、その内容はおおむね以下のとおりである。
○国が主体となった国土管理としての海洋管理の必要性
○海洋管理に関する国際コンセンサス
○関係機関の協調
○海洋管理におけるリーダーシップ
○国際的漁業管理体制の構築
○水産を核としたアジア発「海洋基本法」の制定
○海洋データの連続・リアルタイムデータ収集システムの構築
 これらの課題・論点は、海洋・沿岸域の管理に関して従来から指摘されていた事項がほとんどであり、本事業で改めて整理した形となったが、国が主体となりわが国の海洋管理体制を整備することが国家戦略として最重要課題であることを指摘したものである。
 一方で、1−1で解説した海洋開発分科会答申では21世紀初頭におけるわが国の海洋政策の方向性が示されたが、その中には、海洋の持続的な利用の実現に向けて戦略的な政策および推進方策を示すことが重要であると明記されている。
 しかしながら、関係省庁が取り組んでいる海洋関連施策は、これまで断片的に把握されてはいたものの、省庁間の連携や海洋管理に係る横断的な取り組みなどについては体系的に把握されていないのが現状であり、総合的な管理に向けた具体的な施策については必ずしも明確にされていない。
 そこで、最終提言をとりまとめる本年度は、国が海洋管理にどのように取り組み、今後どのような施策を展開することが想定されるのか明らかにすることを目的に、関係省庁における海洋管理施策の現状を調査した。調査対象・調査方法・調査項目は以下のとおりである。
 
(1)調査対象
○海洋開発関連省庁連絡会議を構成する省庁:
(内閣府、文部科学省、総務省、外務省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)
○上記省庁以外でわが国のEEZおよび大陸棚等において何らかの施策を展開している省庁:
(防衛庁、海上保安庁、気象庁、国土地理院)
 
(2)調査方法
○ヒアリング調査:事前に質問事項を担当者あてに送付し口頭による説明および関連資料の提供を受けた
○資料収集調査:事前に質問事項を担当者あてに送付し関連資料の提供を受けた
 
(3)調査項目(各省庁共通のもののみ記述)
○EEZ管理に係る所掌事務
○EEZ管理に係る関連法令の整備状況
○EEZ管理に係る重点施策
○EEZ管理に係る事業予算(当該年度)
○EEZ管理に係る関連業界・関係者からの改善要求・要望事項等およびその対応
○EEZ管理に係る新たな施策
(とりわけ、科学技術・学術審議会海洋開発分科会答申を受けて検討している、あるいは検討の余地があると考えられる政策、施策について)
○他省庁が行っているEEZ管理に間接的に協力している事項
※省庁個別の調査項目は巻末に添付
 
 
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図1−3 わが国における海洋政策の推進体制
出典:海洋開発分科会運営委員会資料を一部修正 
 
 
1−2−2 回答状況
 今回実施した調査の回答状況を表1−2に示す。
 
表1−2 調査結果
対象省庁 担当部署* 回答結果
内閣府   回答なし
防衛庁海上幕僚監部 監理部総務課総務班 回答なし
総務省情報通信政策局 技術政策課 回答あり
外務省経済局 海洋室 回答なし
文部科学省研究開発局 海洋地球課 回答あり
農林水産省水産庁 増殖推進部漁場資源課 回答あり
経済産業省資源エネルギー庁 資源・燃料部鉱物資源課 回答あり
国土交通省総合政策局 環境・海洋課 回答あり
国土交通省海上保安庁 総務部政務課 回答あり
国土交通省気象庁 総務部企画課 回答あり
国土交通省国土地理院 地理調査部企画課 回答なし
環境省地球環境局 環境保全対策課 回答なり
*担当部署は、調査開始時にコンタクトした部署。
 
 今回の調査では、調査対象12省庁のうち8省庁から回答があった。水産庁および海上保安庁については、所掌事務の多くが200海里水域の管理に関わるものであるため、それぞれ水産白書および海上保安レポート等の既存資料をもとに事務局で概要を整理した上で、EEZおよび大陸棚の管理に関連して重点的に取り組まれている施策等について、提供を受けた資料をもとに補足を行った。
 一方、国の政策立案において重要な役割を担う内閣府(内閣官房)や、EEZおよび大陸棚の管理において沿岸国や関係諸国との窓口となる外務省からは、残念ながら回答が得られなかった。
 また、わが国周辺海域の海洋データを豊富に有し海上の安全を守る上で大きな役割を担う防衛庁、国土データを管理する国土地理院など、わが国の海洋管理に欠かすことのできない省庁からも回答が得られなかった。これら回答の得られなかった省庁の施策については、公開されている文献・資料類や、回答の得られた省庁から提供を受けた資料等の関連する部分を参考にして、可能な範囲で整理した。
 調査期間が年末、年度末にかかったことに加え、特に防衛庁や外務省については、北朝鮮問題やテロ対策特別措置法に基づく中東へのイージス艦派遣等の重要な案件と時期が重なったことが少なからず影響していると考えられるものの、これら省庁において海洋政策の重要性に対する認識が不足しているとの指摘もできよう。
 世界第6位のEEZ面積を有するわが国で、海洋政策において重要な役割を担う省庁から回答を得られなかったことは、今後、わが国で海洋政策論議を進める上で大きなマイナス要因であるといえ、今後も引き続き本事業のような海洋政策に関わる調査への協力を依頼しながら、これらの省庁が海洋管理の重要性に対する認識を高める努力を継続することが重要であろう。







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