日本財団 図書館


9. 沈、脱出
 カヌーに沈没(通称、沈)はつきものです。初心者は沈をしてはじめてカヌーCストと呼んでもらえる、あるいは、沈をしてやっと男になった、女になったと認められる、といわれるほどです。沈を恐れることはありません。
 沈の理由は様々です。激しい流れの中の沈もあれば、まったく流れのないところでの沈もあります。風での沈もあれば、橋の上の女の子を眺めていたための沈もあります。ここでは沈の理由うんぬんよりもそのあとのことを考えていきます。つまり沈後の対策です。
 とにかく落ち着くのが第一。初めての沈で落ち着けというのも難しいことですが、パニック状態になることが一番危険です。
 ロール(沈の際、カヌーから脱出せずに起きあがる技術)で起き上がれば、それにこしたことはありませんが、様々な条件でそれもままならないことが多くあります。そこで、まずカヌーから脱出することからはじまります。
 
 
 
(1)パドルをしっかりにぎったまま、艇を押さえ、もう一方の手でスプレーカバーのストラップ(パニックループ)を引っ張ってカバーをコーミング(コックピットのへり)からはずす。
(2)両手でコーミングを押えるようにして腰をコックピットから抜き、脱出する。このとき、あわてて腰より先に足を抜こうとしてもからだが引っ掛かって脱出できないので要注意。
(3)脱出したらカヌーを起こす。カヌーの中に入る水を最小限に抑えるためにも、速やかに起こすこと。
(4)パドルをコックピットの中に突っ込んで、バウかスターンのどちらかの端をつかみ、岸へと泳ぐ。
 では流れが速いと多少流されることは覚悟しなければなりません。不幸にも流されたまま次の瀬に突っ込んでしまうときは、無理をせず、からだをリラックスさせて、両足でカヌーに抱きつくようにし、次のトロ場まで我慢して着岸しましょう。
 
 
 
 
 
 
 
10. ロール
 沈して、カヌーから脱出、びしょ濡れになって泳ぐつらさは、一度体験すればイヤというほど身にしみるはずです。かといって、沈を恐れていては思いきったアクションもとれず、いつまでたっても無難に水遊びを楽しむことしかできない。
 思いきった艇の突っ込みを要求されるテクニックの練習には、沈しても必ず起き上がれるエスキモーロールのマスターが必須となってきます。カヌーの総合技術の向上はエスキモーロールマスターなしでは考えられません。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION