2−5 サポート資源提供システムの試験運用成果
システム開発のワーキング(2−2節)で検討を進めた資源提供システムが具体化し、また、各種セミナー(2−3節、2−4節)などで企業・NPO向けの告知が進んだ結果、2001年秋より、実際のサポート資源提供が始まり、実質的にサポート資源提供システムの試験運用が始まることとなった。
当初の計画としては、試験運用期間内に、物品提供30件、パソコン提供30台、資金提供200万円という目標を挙げていたが、結果として、2002年3月まで約半年間の試験運用期間内に、物品約1,100点(のべ40団体)、パソコン79台(のべ31団体)、資金提供230万円(のべ19団体)の提供を行うことができ、目標を大きく上回る成果となった。
表2−4 サポート資源提供システム試験運用実績
(2002年4月末までの集計)
物品提供
提供者(敬称略) |
提供資源 |
提供先団体数 |
提供点数 |
提供時期 |
(株)岡村製作所・仙台市医師会 |
什器・備品 |
4団体 |
24点 |
2001年9〜10月 |
仙台青葉ライオンズクラブ |
FAX |
1団体 |
1点 |
2001年12月 |
(有)菊地会計事務所 |
什器・備品 |
2団体 |
11点 |
2001年12月 |
せんだい・みやぎNPOセンター |
FAX |
1団体 |
1点 |
2001年12月 |
三井住友海上火災保険(株) |
什器・備品 |
15団体 |
119点 |
2002年2月 |
(株)ベネッセコーポレーション東北支社 |
学習辞典 |
5団体 |
45点 |
2002年3月 |
(株)ベネッセコーポレーション東北支社 |
什器・備品・消耗品 |
12団体 |
約900点 |
2002年4月 |
東北電力(株) |
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のべ 40団体 |
約1100点 |
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パソコン提供
提供者(敬称略) |
提供資源 |
提供先団体数 |
提供台数 |
提供時期 |
(社)宮城県情報サービス産業協会 |
デスクトップ |
7団体 |
11台 |
2001年10月 |
10団体 |
18台 |
2001年12月 |
13団体 |
36台 |
2002年2月 |
1団体 |
14台 |
2002年3月 |
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のべ 31団体 |
79台 |
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資金提供
提供者(敬称略) |
提供資源 |
提供先団体数 |
提供総額 |
提供時期 |
宮城労働金庫 |
資金 |
16団体 |
200万円 |
2001年11月 |
仙台青葉ライオンズクラブ |
資金 |
3団体 |
30万円 |
2001年11月 |
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のべ 19団体 |
230万円 |
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以下、各資源提供メニューごとの詳細についてまとめた。
2−5−1 物品
物品・場所ワーキング(2−2−1節参照)では、当初、以下のような、直送型の物品提供システムを想定していた。
図2−3 物品提供システム 第1案 スキーム
2001年9月〜10月にかけて進めた、仙台市医師会・(株)岡村製作所から寄贈いただいた物品(オフィス什器・備品など)の提供については、この方式に沿って行った。その結果、このスキームには、サポート資源提供システム側で在庫を抱えるリスクがない利点があるものの、
(1) |
NPO側で事前に提供される物品を見る機会が取りにくい(事前に写真を送付するなどの工夫をしていたが、それでも情報提供として不十分であった) |
(2) |
企業からNPOへの個別配送となるため、1点あたりの配送料金が高くなり、NPO側の手数料負担が大きくなる(輸送会社の協力で、通常より安価な料金設定としていただいたが、それでも、例えば机1台配送するのに数千円かかってしまい、通常の中古市場での販売価格と大差なくなってしまった) |
などの問題点があることがわかってきた。実際に1団体から返品が発生した(想定していた物と、あまりに状態に差があったため)。
この状況を受けて、急遽システムを見直し、下図のようにシステムで一旦物品を預かる仕組みをあらためて構築した。
図2−4 物品提供システム 第2案 スキーム
この第2案のスキームに沿って、(有)菊地会計事務所、仙台青葉ライオンズクラブ等から寄贈いただいた物品(オフィス什器・備品等)について提供を行った(2001年11〜12月)。物品を一旦せんだい・みやぎNPOセンターの事務局内で預かり、実際に提供を希望するNPOの担当者に現物を見てもらってから提供する(NPOへの輸送は各団体で手配)、という手順である。その結果、
(1) |
実際に物品を見てから、提供を希望するかどうかを決めることができるので、情報提供不足によるトラブルは回避できるようになった。 |
(2) |
提供企業からの輸送が一括となったため、配送費用が圧縮され、結果的にNPO側からの手数料が低く(1点あたり1,000〜2,000円)設定できるようになった。
|
などの改善があった。
一方で、依然として輸送に関わるコストがかかること、システム側で在庫を抱えるリスクがあること、など問題点は残った。
その後、検討を重ねた結果、以下のような内覧会方式のシステムに至った。
図2−5 物品提供システム 第3案 スキーム
提供企業・団体の物品保管場所までNPO(とシステム担当者)が直接出向いて、その場で物品の引き取りを行うこのスキームに沿って、2002年1月に、三井住友海上火災保険(株)から提供いただいた物品(オフィス什器・備品)について提供を行った。
物品提供内覧会の様子
その結果、システム側の輸送コストが基本的にかからなくなったので、NPOが支払うコストは大幅に軽減し(NPOからシステムヘの手数料支払は廃止した)、実際に物品も見ることができることで、大幅なシステム改善につながった。
このスキームでは、NPO側からの手数料を取ることが難しいため、システム運営上、提供企業・団体より、一定(物品の廃棄手数料相当分程度)の寄付金を物品と合わせてシステムにいただく必要がある。また、企業側に保管をお願いできるかどうかも提供の可否を大きく左右する。ちなみに、この三井住友海上火災保険(株)の事例では、倉庫の保管期間を延長していただくなど配慮いただいたこともあり、寄付金はいただかないこととした。
このような課題はあるものの、現状では、図2−5の第3案が最も効果的な案ではないかと考えている。同じ廃棄手数料相当分のコストを支払うのなら、単に廃棄するよりも、NPOへ提供できたほうが得だ、と考えていただける企業・団体を増やしていけるかどうかが、今後の物品提供システムの成功のカギであろう。
また、この後も物品提供は続いた。まず、(株)ベネッセコーポレーション東北支社より提供いただいた小中学生向け学習辞典を2002年3月、子ども関連の団体等5団体に寄贈した。さらに、同じく(株)ベネッセコーポレーション東北支社からの呼びかけによって、年度末・年度始めに不要となる物品・消耗品を複数の企業からまとめて提供する共同の物品内覧会が企画され、2002年4月に、(株)ベネッセコーポレーション東北支社および東北電力(株)からの物品の提供が行われた。
2−5−2 中古パソコン
パソコン提供システムの立ちあがり状況などを勘案しながら、提供は、以下のぺースで実施した。最終的に、23団体(のべ31団体)に計79台の提供となった。
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第1次提供 |
2001年9月末募集締切(10月提供)。 |
提供数11台(7団体)。 |
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第2次提供 |
2001年11月10日募集締切(11〜12月提供)。 |
提供数18台(10団体)。 |
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第3次提供 |
2002年1月15日募集締切(1〜3月提供)。 |
提供数36台(13団体)。 |
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臨時提供 |
団体指定の提供(団体の施設開設に伴うもの)。 |
提供数14台(1団体)。 |
提供に際しては、提供するパソコンのスペックや、NPOへの輸送のシステムなどについて、微調整をしながら、提供を進めた。また、第2次提供終了時点で、提供先のNPOヘアンケートを実施するなど、NPO側のニーズ把握についても努力を重ねた。
パソコン提供については、関連サービスの開発と合わせて、今後とも、MISA側と密接な連携を取りながら、進めていく計画である。
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