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協力:日本財団
ホームヘルパー3級養成講座通信 第9 10合併号
 
ヘルパーへの道
NPO文化学習協同ネットワーク 2001年12月17日発行
 残りわずか数回となったヘルパー3級養成講座の最大の難関が第9 10回。連日約10時間に及ぶ講義「介護技術入門」。ベッドメーキングから排泄介助などヘルパーの仕事に必要な実技を学ぶ講義である。頭では理解できても、実際に生身の人間を目の前にすると立ちすくんでしまう。1からわかりやすく丁寧に教えてくださったのは、元気な肝っ玉母さんのような三田久子さん。受講生も10時間よく集中して取り組んでいた。
※文中の★は受講生の感想です。
 
 
 
●介護技術のコツ
 はじめに介護技術のコツについての説明が行われた。
<介護技術のコツ>
1. 足を肩幅に広げ、重心を低くして基礎面積を広くして、肩の力を抜く。
→手の力を抜いてブラブラの状態にする。手に力が入ると、それが利用者に伝わって利用者が緊張する。
2. 利用者と密着し、重心をひとつにして重心の移動をなめらかに行う。
→重心をひとつにしないと、余計な力がかかると同時に、力が入らず移動もうまくいかない。
3. ベットで行うときはベットに膝をつけて重心を移動する。
4. テコの作用を利用する。
5. 急に力を入れない。
6. 常に呼吸をし、息を止めない。
→鼻から吸って口から吐く。
7. 常に利用者をコンパクトにして移動する。
→マヒしている手を利用者に抱えてもらったり、マヒしている足を動く足で支えてもらうなど、小さくなってもらってから動かす。
8. ベルトやズボンをもたない。
→おむつをしているのでそうされると痛い。
9. 常に声をかけて次にすることを説明してから行動する。
→ただし、おむつ替えの時は言わない。「起きる準備をしますからね。」など。
10. 移動する時は、「1、2の3」などのかけ声をかけて行う。
→「よいしょ」や「どっこいしょ」は利用者を傷つけるので言わない。やわらかい印象を与えるようにする。
11. 作業上必要な物品は手の届くところに置いて効率よく行う。
→きれいなものは頭のほうに置き、汚れた物は足下におく。(おむつなどは新聞紙にくるんで置く。)
12. イメージトレーニングを行う。
→今日何をやるかをイメージしておくと仕事がスムーズに流れる。
13. 利用者の信頼を得る。
→傍から利用者の家族が見ている時もあり、評価をくだされることもある。仕方のないことなのかと思う。
★基本姿勢は気功の姿勢とにています。力の入れ方までやはり気を遣っているということでしょうか。自分も身体を痛めないようにしなきゃいけないし、相手にも身体の使い方次第でいろんな感じを与えてしまうのですね。呼吸法ひとつで、(人の身体の)重さなどがかんたんにかわること。
 
LET'S ベットメイク
 現在のベットは電動のものが主流で、頭と膝の部分と高さの調節ができる。ベットの配置は、マヒの状態や採光によって決める。片側が壁になっているところが多い。マヒ側が奥にヘルパーが立つ側に健側(動く側)がきているお宅がほとんど。ベットメイクはまず、自分がやりやすい位置(膝にベットが着く位置)にベットの高さを調節することから始まる。利用者がベットから降りるとき、足をつくと膝が曲がるくらいがいい。シーツは、ベットメイクするときに広げやすいように特殊なたたみ方をする。(ある一点をベットの中央に合わせて広げると全体にシーツがバランス良く広がる方法)今までやってきたたたみ方とはちょっと違って、マスターするのに時間がかかる。床につけたり洋服につけたりしないようにたたむよう注意され、身長によっては結構大変な受講生もいた。
★ベッドメイキングをしているとき、老人は何をやっているのか。シーツのたたみ方が難しかったのだが、何度もトライしました。今回一番努力したことです。
 
LET'S 体位交換
 じょくそうは、体圧のために組織が破壊されて出来る。原因としては、湿気や薬を飲んでいる、血液の流れが悪い、または寝返りが打てないなどがあげられる。栄養が十分とれていないことも関係している。医者に診てもらう必要があり、その指示に従って薬を塗る。薬は患部によって違うので、訪問の看護婦さんに確認しておく必要がある。利用者の言葉をそのまま信じて塗ったりすると間違うことも多い。医者の薬を飲まなくなってしまうこともあるので、民間療法も勧めたりしない方がいい。じょくそうを防ぐためにも体位交換が重要である。体位交換には、全介助の場合(寝たままから起こす)と、半身マヒの人の場合(体を横に傾けてから起こす)がある。
 まずは、半身マヒになってしまったときに一人で起きあがる方法をやってみる。自分の利き手と反対側がマヒになったと仮定して、その時どうやったら起きることが出来るのかをやってみた。講師のデモのあと実際に一人一人がやってみる。半身が動かないと言っても、つい動かしてしまって、結構簡単に起きあがっている人もいた。その後、出来ることはできるだけ利用者にがんばってもらって、一人では難しい点を援助するという視点から、この場面ではどこで援助するのが望ましいか考えた。その後、全介助が必要な人(全く自分では動けない)を起きあがらせるための動作を学んだ。全介助の場合、まずは自分の方に利用者を引き寄せてから体を起こす。三田先生のデモンストレーションのあと実際にやってみた。(動けない場合はヘルパーが動かす。)
○●ポイント●○
※利用者を動かす時は二点触りといって、必ず二カ所(両手)で支えるようにする。片手ではだめ。また関節の部分を支える。
※利用者が自分でできることは自分でやってもらうように声をかける。「〜してもらえますか?」また、右左を言うことで、なるべく利用者に頭を使ってもらうことも大切。
※利用者にやってもらうと言っても、必ずそばで見守り何かあったらすぐに動けるようにしておく。
※利用者の状態はその日によって違うので、風邪の日はいつもより多く介助するとか、判断する必要がある。体調によって動作が鈍くなるから。
※移動で大切なのは自分と利用者の重心をいっしょにすること。その為には体を密着させる。
 
★大変だったのは人を起こすこと。言われたとおりにやろうとしても、意外と出来なかった。力の加減がわからなかった。
 
 
 
#1日目の様子#
 楽しんでやっていたが、実際に人の体を触るということで照れていた。「ヘルパーが照れていたら利用者さんはもっと恥ずかしいのよ。」と三田先生に注意されたりしていた。人の体を動かすことは結構難しく、重心をいっしょにするということがなかなかうまくいかなった。ヘルパーは力の必要な仕事だし、専門的な技術も必要であるということがだんだん見えてきている。
 
★“人はやっぱり重い。そして自分も重い。”今日の教訓。本当にそう思った。言われても言われても「わからなーい!!(泣)」のくりかえしだった気がする・・・。やっぱり言われても言われても、身でおぼえないと・・・。いつか自分の体が本当に動かなくなったら、そんなこと考えたら、今のうちから運動しようと思った。
★今回の講義は、長い時間実技をしていたのでつかれたけど、「気持ちのいいつかれ」方だった。利用者を起きあがらせるのが、なかなかうなくできなかったので、16日にがんばろうと思う。
★人は重いし、思うように動くのが人ではない。
 
 
 
<2日目 午前の部>
●身だしなみ 衣類着脱&排泄 尿失禁介護の方法
 パジャマ(なければボタンのついたブラウスのようなもの、脱ぎ着しやすいウエストがゴムタイプのズボン。)と、丸首のかぶり物(トレーナーなど)の着脱を行った。注意する点は、着る(着せる)ときには必ずマヒ側から行い、脱がせる時には動く方の手から行うこと。袖やズボンのすそは、自分の腕にたぐり寄せてから行うとやりやすい。何かの動作を行うときには必ず言葉かけをしてから行うこと。腕の場合は肘の関節を支えたり、足の場合はかかとを支えながら行う。できるところはできるだけ自分でやってもらうよう促し、できないところを手伝う。ボタンかけなどは結構難しかったりするので、半分はやってもらい、半分はヘルパーなどが行うと良い。(臥位の場合はほとんどヘルパーがやる)これはヘルパーがちゃんと見守っているという意思表示でもある。
★利用者の足や手を持つときは、包み込むように持つということ。
★介護されるのは苦。
●車いす&ポータブルトイレヘの移乗
 まず、車いすを選ぶときのポイントの説明、車イスを押すときの説明があった。その後、ベットから車いす、車いすからベットでの移乗をやった。移乗の際には、介護ベルトを使うとそれを引っ張ることができ、便利。介護ベルトは市販のものもあるが、一反のさらしを3つに切って使うこともできる。お風呂の介助の時はそれをウエストの部分にまき、移乗ではおしりに巻くようにする。車いすからベットヘの移乗は難しく注意を必要とする。それは利用者がベットに入るということで、すっかり眠る気になってしまって体の力が抜けてしまっているから。ベットに移すとき気を抜くと共倒れになってしまう。最後まで力を抜かないことが大切。
 ポータブルトイレの介護で、ヘルパーが手伝うときには、でている足の所にバスタオルをかけて場所を離れる。終わったら呼んでもらう。おしりを拭くときは、女性は前から後ろへ。それは尿路感染をふせぐため。男の人はおしりの穴の部分を拭く。マヒしていると自分でぺーパーを切ることのできない人もいるので、その時はちぎっておいておくとよい。ポータブルトイレの中身はバケツに入るようになっているので、排泄したあとは、そのバケツにふたをして水洗トイレに流す。夜の間ポータブルトイレを使う利用者の場合は、朝伺った時にすでに便が入っているので、まず初めにそれを捨てる。においの対策は、消臭剤を使ったり、炭を使うと良い。できれば換気扇や空気洗浄機を使うのもよい。
★麻痺の苦しみはわからない。
★自分の体が動かせるということが、こんなにも楽しいものだとは思いませんでした。
<午後の部>
●食事&口腔ケアの介助
 カップのうどんとヨーグルト、飲み物の介助を行った。うどんはどのくらいの長さにしたらいいのかわかりにくく(利用者によってちがう)、時間がかかるとのびてしまうというくせ者。ヨーグルトはやわらかく介助食向き。飲み物はストローを使って吸い飲みがわりにした。食べさせるときには、利用者の首の所にタオルをかけて洗濯ばさみで止めるとよい。
 スプーンでスープを飲ませるときには口に対してなるべくまっすぐに入れるとよい。スプーンにくっつきやすいものは上の前歯ですくい取るようにするのがよい。量が多いと口の周りからこぼれてしまうし、垂れてくる。この食事介助は実際に介助されてみると食べにくいポイントなどがわかって実際介助する時に役立つだろうと思われた。最後に右手がマヒという設定で、歯みがきの介助をやってみた。まず自分が左手でできるところは磨き、磨き残しのあるところをヘルパーが手伝うというという形にした。磨いてあげる場合は、歯に対して45°に歯ブラシを立て、横にこするようにする。磨くときの力の入れ方は結構難しく、人によってもっと強くという人や痛いという人もいて、利用者に確認しながらすることが肝心。
 他人にやってもらうと、かゆいところになかなか手が届かないので忍耐力が必要。自分がヘルパーを育てていくような気持ちで利用者が接してくれると助かる。不都合な部分をその都度指摘してもらえば、ヘルパーにとってはとても勉強になる。三田先生は、3ヶ月はヘルパーを替えずに見守って欲しいとお願いしているそうだ。
★すごくコミュニケーションが必要だということ。あと、介護される側の気持ち。お互い分かり合えないといけない。片方がいやがれば両方いやになってしまう。
★人にやってもらうより、自分の方がいいと思った。お年よりの人はいつも今日体験したことを思っている。体験することで相手の気持ちが分かった。
 
#2日目の様子#
 介護技術入門も二日目ということで、だれてしまって必要以上に時間がかかったり、ふざけてしまう部分もあったが、受講生みんなよく話を聞き、積極的に実践していたように思う。頭ではなく体で覚える感じの講座だったので、感覚として体に残った部分が多かったのではないかと思う。ヘルパーとしての仕事の過酷さ、専門性、技術の必要性を感じると同時に、利用者側にも立てたことで「相手が気持ちいい介護とは」の視点でも学ぶことが多かったのではないかと思う。三田先生の話は実際の活動をとおした具体的な話なので、とても参考になり、おもしろかった。受講生にとっては、体をふれ合う場面が多かったので、より深くメンバー同士つながることができたのではないかとも思う。普段よりあまり知らないメンバー同士の会話が多い講座だった。介護の場面でなくても、日常生活で役に立つ知識は使っていきたい。
 
二日間、終えて・・・
★力の加減が難しくてどうしても力が入ってしまう。きっとプロのとの差なんだなと思う。でも、やっていておもしろかった。ベット一つでも本当に注意点が多く覚えるのが大変な気がしました。でも仕事でこんなに人と接した仕事はそうなかなかないと思う。
★ホームヘルパーは本当に大変ということ。特にこの二日で少しは想像できたかな・・・?
★介護はもう、本当に大変大変!人が一人普通に暮らすのは、人でもお金もすごくかかるし。福祉は制度もお金ももっともっと良いものを追求していかなければならない分野なのでしょう。
★介護される身というのが少しだけ、実感できたと思えたことと楽しめた。「介護」というのは一言では語り尽くせない難しいものだと思いました。介護とは、信頼することがお互いに大切なんだと思いました。
 
修了式のお知らせ
 1月12日(土)で3級ヘルパー養成講座が修了します。4ヶ月間みんなよくがんばりました(まだ終わっていないけど)。そこでみんなをたたえ合う「いろんなこと学んだね。お互いがんばったね!」と、今までをふり返る会を行う予定です。ゲストをお招きしての交流会を修了式の前に予定しています。
10:00〜11:30 交流会
会食(昼食はこちらで用意します)
13:00〜15:00 修了式
(出欠表の時間が変更されていますので注意してください)







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