協力:日本財団
ホームヘルパー3級養成講座 通信8号
ヘルパーへの道
NPO文化学習協同ネットワーク 2001年12月3日発行
第8回「ホームヘルプサービスの共通理解」
◆講師・三田先生のヘルパー体験談
H2年からホームヘルパーを始める。事務職は座ってばかりの仕事なので、もっと体を動かして自分の健康にもいいことをしたいと思ってはじめた。介護保険のない当時、国立は身体障害センターなど福祉行政は進んでいた。社会福祉協議会の「あんしんサービス」に入る。非営利団体で、そのころは時給700円、交通費も出ず、全て自転車での移動。ヘルパーだけでは金銭的に苦しかったこともあり、デイサービスヘも行くようになった(週1回、500円)。国立市がお金を出した独自のサービスで、元気な一人暮らし、又は一人暮らしに準ずる人たちの通いの施設。そこでは、プロの講師に指導してもらう陶芸教室や、おりがみ教室なんかをして遊んでいる。陶芸は、習字などよりも上手い下手が出にくく、手先を使うのでよい。婦人会や民生委員などの地域のボランティアの力に支えられている。介護保険制度が始まってからガラッと変わった。ヘルパー、デイサービスに加えて、保険センターのリハビリ介助の手伝いをしても月10万円には満たない。だから、いろんな所に顔を出して資格を取って(運転の2種免許、介護福祉士)今まで来た。ヘルパーもどんどん増えている。介護される方にとっては良いことなのだが、する方としてはどんどん自分の技量をアップさせないと振り落とされてしまう。施設職員として入れればいいが、学生アルバイトでまかなう障害者の方も増えてきている。
◆心の健康管理
対人間の仕事なので、自分の心の健康も大切になってくる。それぞれの家庭内に身内のもめ事などの不和がある。その様な状況の所に他人が入っていくのだから、いろいろと大変。大変なところだからヘルパーを頼むという側面もある。人生楽しく生きていたら、相手も楽しくなる。好きなものを見つけるのも大切なこと。
これまでは、措置で民生委員の方から動いてくれたが、介護保険制度になったこれからは自分から連絡していかないとそのまま流れてしまい、どんどん大変になっていく。どうしたらいいのかというと、自分が勉強していくということ。例えば、痴呆の場合、お金の管理が出来なくなっていく。その様な場合、成年後見制度などの制度がある。その様な知識を身につけていく。
◆家事援助の方法
ヘルパーに行けるまでには、まず、要介護認定を相手が受ける必要がある。介護保険申請をして、ヘルパーステーションとの契約が必要。他人が自分の家に入ってくるのは、とてもいやがる。親戚などからも、自分でできないのかといわれてしまう。介護保険が始まって、「大変なんだ」「困っています」と言える様になったことが大切なこと。
初回訪問の準備について
・利用者の住所確認、氏名、性別、年齢の確認
→お名前で呼ぶこと。おじいさんやおばあさんではなくて、人間として差別無く呼ぶことが大切。きちんとした名前があるということ。
・相手の状態を把握
→薬のゴミも勝手には捨てない。おとしよりの場合、薬を飲んだのかどうか忘れてしまいがち。捨ててしまうと確認が出来なくなる。
・自分で出来ることはは自分で
→食べられるのに食べさせてしまうのでは気分が重い。出来ないことは介助していく。全てをやってしまうことではない。たてる人は立つことによって自信を持ってもらう。ヘルパーの仕事は、倒れたときにどうフォローするのか。
・キーパーソンを把握する
→話しをわかる人としっかりと意思確認をする。
・住居の状況
→「何かお困りのことはありませんか」等の言葉掛けで、相手が話しやすくすることが大切。手際よく、段取り良く作業する。帰る間際に洗濯物を見つけても出来ない。
・服装
→相手の凶器にならないようにする。爪を伸ばしたり、マニキュアなどもやめた方がいい。化粧も少しはして、失礼にならないようにする。
・あいさつ
→第一印象が大切。相手との関係がスムーズだと仕事もしやすい。こちらも第一印象で決めつけないで平等に対応していく。
・その他
→掃除をする場合でも、「隣の部屋掃除しても良いですか」と、自分の行動を確認してもらう。相手に安心感を与えるし、声を出していくことによって、一日中一人でいる老人にとってもリハビリになる。
→こっちが良いだろうと思ってかたづけすぎると、相手にとって何がどこにあるのかわからなくなってしまう。水道の蛇口も閉めすぎると相手が次の訪問まで水道が使えなかったりする。
→時間通りに来て時間どおりに帰る。自分が時間があるからといって、時間外に居ると、他のヘルパーさんにもそれを要求されてしまう。あくまでもチームでの仕事。
→玄関から入ることは少ない。チャイムを鳴らしても聞こえないことが多いし、すぐには出てこれない。
→自分用のタオルを用意する。相手のタオルを濡らしてしまうこともないし、万が一病気を持って帰ることを防ぐことが出来る。きれない家にいくのではなくて、汚れた家にいくことを頭に入れて自分の
ケーススタディー
☆事例 その1 巡回型ヘルプ:普通、介護保険適用は30分と事業所の30分をあわせて1時間で行う。
80才で脳血栓の男性 (要介護4認定)
トイレもおむつが必要となる。ヘルパー派遣30万6千円分。1割負担の3万6千円。おむつもずっとつけているので、おむつ代もかかる。介護にはそれだけお金がかかる。8時に入って挨拶するところから始まる。気難しい男性で、手もとんでくるが、よけきれるので笑って済ます。入ってにおいがしたら、おむつの準備をする。トイレが出来れば一番良いのだが。昼はリハビリパンツ。夜はテープ式を何枚もする。陰部洗浄機などが最近は使われる。尿道感染などを予防するためにも洗浄する。お風呂も入れて週に一回なので、清拭する。ベットでも、気持ちだけでも「寝食分離」でするために、汚いもの、汚くなるものは足下に。何をするにしても、「今から〜します」と確認する。おむつはビニールに入れて外に出しておく。部屋がにおうと、孫が来てくれなくなる。孫の顔が見れることが幸せという人も多い。どちらかというと男性の方が大変。女性の方が順応していくようだ。奥さんがいなくなると2.3年は慣れるまでかかる。ヘルパーさんに妻を要求する男の人が多い。気に入ると自分に縛り付けたがる。だから、自分で生きていく力をつけておいてほしい。妻が帰ってくるまで食べないで待っているのではなく、自分で料理できるべき。これからの時代、自立して生きていかないといけない。
「この仕事をしていて、生きるということについて考えさせられる。自分でものを考えていかに自分が生きるのか。死ぬまで生きるのだから・・・」
☆事例 その2 82才の男性
まだ右も左もわからないヘルパー成り立ての頃についた方。とても大変な仕事で、いつ辞めようかといつも考えていたが、はじめに「気に入った」といわれたことが支えになってずるずると95才でなくなるまで関わった。庭を掃くときも椅子を持ってきてみているような人だったが、「監視されている」と思うのと、「私と話したくて見ているのだ」と思うのとでは、仕事をする上での気持ちがかわってくる。仕事はどう考えるのかという事次第で、相手も変わるし、自分も変わっていく。長く関わったので、家の内部事情まで知ることになってしまうので、精神的な負担にもなる。でも、この仕事を100%好きではないけれど、キライじゃないし、好きになりたいと思う。お金を上げるから自分の所についてくれといわれることもあったりするが、お金をもらうことは自分の気持ちを縛ることにもなるので良くない。この人はずっとおむつ拒否でいつも誰かがいなければならない大変な人だったが、それだけ思い入れがあった。最後は肝硬変で、体中に黄疸が出ていた。そんな時もびっくりした顔をしてはいけない。その事でよけいに相手に負担をかけてしまう。
グループ討論を終えて・・・
グループ1
・仕事的にハードな仕事。家庭の中まで見えてしまう事でも不安。
・介護保険になってから、自分で言わなくてはならなくなっているけれど、どうしたらいいのか。
・お金持ちじゃない人の場合、年金も月3万円ぐらいの人たちの場合、衣食住を保障される人権という問題で考えるとどうか。
・給料のことは、主婦のお手伝い程度なら良いが、職業として成立するのであろうか。
グループ2
・出来ると思っていたことが、できなくなるということはどういう気持ちなのだろうかと考えたが、難しい。すごい絶望感があると思うが、ヘルパーが共鳴してしまったら、さらに絶望が深まると思う。絶望の気持ちを軽視するのではないが。実際に軽いことではないから、そのかねあいが難しい。
・人相手の仕事ではコミュニケーションが大切なのではないか。挨拶をするなどはホームヘルプ以前のことで、人間関係で必要なことなのではあるが。
・自分が良いと思うことでも、相手がいやなこともある、この人ならどうなのかなと考えなくてはいけないのだけれど、決めつけになってしまってもいけない。
グループ3
・ヘルパーが異性の利用者の着替えやおむつを替えるのはなかなか大変なこと。自分が老人になったときに、若い異性のヘルパーさんが来たらと考えるといやな気がする。だから同性のヘルパーが良いと思う。
・ヘルパーの資格の他にも資格を持っていた方がいろいろといかせると聞いた。
三田先生からみんなへ
たしかにヘルパーはなくてはならない仕事で、性を乗り越えてやらなくてはならないこともある。恥ずかしがっていたら、相手も恥ずかしくなる。人間的に大きくなっていかないと、自分に対して相手に信頼してもらえないのかなと思う。今の老人には、お上から何かしてもらうのは恥だという考え方がある。お金を出しているのだから当然だと思えるようになるのが大切だ。自分のことは自分でやるから良いんだ・・・、家族で抱え込んで・・・、というやり方が他人を入れることによって変わっていく。生き方がかわっていくのだと思う。介護保険は悪いところもあるが、政治でここまでかわるのだから、介護保険を見守って、自分たちで声を上げていくことが大切。
わたしの声・きみの声
●楽しかったこと
ゆびの運動。なかなかうまく指が動かず、もどかしい気分。楽しかった。
●考えたこと
ホームヘルパーという仕事は、ちょっと特異な仕事だと思います。この特異性、特異なキツさ、(プライベートに関わる、一対一であり一対一じゃない、家事から身体介護までやる等)やったことのない人には想像の及ばない所がたくさんある仕事なのでしょう。ですが、そういう特異性は、伝えてもらうのも大事だし、福祉の仕事をしている人以外の人にも、知ってもらうのも大切だと思う。
実際にヘルパーとしての話を聞いて、いろいろと思っていたこととちがっていた。
三田さんのいう自立は、今の人間の方ができると思った。昔ほど男は何もやらないという事はないので僕もしっかり家事をやっていこう。
●気がついたこと・発見したこと
ものの考え方は、十人十色。自分がイイ事だと思っても、相手はイヤな事もあるということ。
ホームヘルプという仕事はとてもやりがいがある仕事と思えた。
ヘルパーの仕事は、『人』が相手なので気配りがとても大切だというコト改めてわかった。
ホームヘルプという仕事の難しさ、考えなければいけない基本姿勢、そういう事を考えていかなければいけないという事がわかりました。一時間内に自分のやる事をまとめてやらなくちゃいけない事が大変
●印象に残ったこと
老人からつばはきかけられた。けりを入れられた。それはしょうがないという話。
紙おむつを洗っているという話。薬のゴミを捨てないという話が印象に残った。
あんまり強く、その人と仲良くなりすぎても、別れがツラくなるんだってことヘルパーの立場の気持ち。
講師の方の話し方が好きです。とてもききやすく、ヘルパーの人には大切な事だと思いました。仲良くずっと世話した人が死んでしまった話を聞いたのが残っている。
●疑問・質問?
ヘルパーの仕事の今と昔の違いはどうなのか。
介護保険制度で果たして「よくなった」という言葉を聞いたのは初めてだったので、わからないというよりは半信半疑です。あと、鴨下さん(「ホームヘルプサービス概論講師)の話してくださった「(ヘルパーは)あせらなくていい仕事」という考え方と、今回のお話の感じがどうも一致しません(未希ちゃんが言ってくれた事ですが)。一人一人が普通に暮らすのに、果たしてどれだけのお金、時間、助けがいるのか、それは「焦らなくていい、焦ってはいけない」仕事の内容とどういう仕事の形になるのか、疑問はつきません。
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