「芦花ホーム」には温泉だってある?
参加者:施設は暗い寂しい印象があったが、芦花ホームはきれいで明るい印象だった。理髪店があるホームは見たことがあるが歯科まであるとは驚いた。
露木先生:歯はとても重要。歯を大切にすると室内の悪臭を減らすことができる。
参加者:登別温泉の場面が面白かった。
露木先生:お風呂がキライという利用者さんがいてじょくそうが治らず、ヘルパーさんが困っていた。そこで利用者さんの好きなことを聞いてみたら温泉だという、それも登別温泉に行ってみたいという話だった。そこで芦花ホームの中に登別温泉を作り、入ってもらうことにした。入り口には温泉の効用を書いた紙を貼り、秋の季節がいいと言うので秋の絵を描いた。湯もみ女がいるということで、スタッフが湯もみ女に扮したりもした。そこにやってきた利用者は大変感激し、自分から服を脱いでおふろに入り、「神様仏様ありがとうございます」という言葉をもらした。家族も感激し、スタッフの「お顔を洗います。お体を洗います。」という言葉が天使の言葉のように聞こえたと言う。
露木先生の話に耳を傾ける
それからはその利用者が来るたびに登別温泉にしている。この利用者の変化は、スタッフの利用者への思いから生まれた「登別温泉」作りの実践と、それに刺激されて自分から服を脱ぎ「神様、仏様・・・」と思わずもらした利用者の“響き合い”がもたらしたものである。芦花ホームではお風呂での事故がなく、それはスタッフと利用者との間に響き合いがあるから。今は事故にあったりすると損害賠償を求められたりするが、響き合いがあるとそういうことはない。芦花ホーム以外のホームの利用者がお風呂に来たときも利用者さんの好きな温泉にしたらすごく気に入ってもらえた。響き合いはとても重要。その他にも運動会の様子がビデオにあったが、利用者は身体を動かせないので大玉転がしをやっても転がすことはできない。でも周りのスタッフや家族が楽しみながらやることで、身体を動かせない利用者にも楽しさが響いていく。身体は動かなくてもすっかり参加している気分になる。そうすると負けたときはとても悲しがったりする。「悔しいから来年まで生きて絶対勝つ」といった利用者もいた。言葉がけもとても大切。
千住真理子さんのバイオリン演奏会のエピソード
千住さんの演奏を聴いてたとき利用者全員が彼女の音楽で一つになっていた。かろうじて動く手や目を動かしていたり、首を動かしていたり。それが響き合い。
参加者:弁当の配食サービスならわたしもできるかもしれないと思った。
露木先生:できますよ。お弁当の配食サービスはとても大切な仕事で、お年寄りは一時間も前から戸口のところで待っている。一人暮らしだと一日の中でそれだけが人と会う時間になるから。そんなお年寄りに折り紙の作品をつけて持っていくとそれを取っていて額に飾ってた人もいた。そいうところで、言葉がなくてもコミュニケーションが発生し、それが響き合いである。配食サービスは一人暮らしのお年寄りの事故を発見したりすることもあるから大切な仕事。是非やってほしい。
工夫から楽しみを生み出す
参加者:利用者の希望を聞いてそれを実現しているというが、「これは無理」という希望はないのか。
露木先生:ない。工夫でなんとかする。もうこれ以上はできないというところまでギリギリ工夫する。その工夫が大事。工夫することで生活を楽しくすることができる。
参加者:デイホームに行くのを嫌がる人達がいて困っている。行くことがストレスになってしまっている。その人はとてもプライドが高い。
露木先生:いかにその人と仲良くなるかが大切だと思う。少しずつ好みを聞いたりしながら理解していく。お昼ご飯がおいしいから行くとか、趣味の近い人がいるとか、気になる異性ができるとかがきっかけになることもある。芦花ホームでは迎えの車に歌姫を乗せて歌を歌ってもらっている。そういう工夫をたくさんたくさんしている。プライドが高い人に関しては、先生役になってもらう。その人を嫌な面だけで見てしまわないでいろんな視点からその人ができそうなことを探すことが大切だと考える。痴呆の人も健康な部分もたくさんあるわけだから、そういうところをどう活かすかが大事。
参加者:芦花ホームはどういうお金で動いているのか。
露木先生:介護保険の利用料でまかなっている。重度4〜5の方が80人いるのでそこから収入は得られるが、施設がとても大きいので結構お金がかかる。よって、地域交流を促進していくための補助金や、知的障害の方の就労支援の補助金、人材育成事業への補助金などを活用している。
老人ホームに大学まで誕生!
「芦花ホーム」をまちづくりの核に!
いろんな人の集まる老人ホーム
参加者:自分は身体の調子がよくないので音楽を楽しんだり、人と一緒に何かをやったりすることができないと思っていたけど、芦花ホームのビデオを見て、そんなことは決し
参加者:家族やスタッフの他に介護の勉強がしたいという人を受け入れているのか。
露木先生:受け入れている。自分の家のお年寄りが元気になったということで、その家族が芦花ホームに関心を持ち、協力してくれるようになる。そこから地域の人達がたくさん関わるようになり、ホーム内に「生涯青春芦花大学」という大学まで作ってしまった。老人ホームの中にある大学は日本中、世界中で一つだけである。大学は60才以上が無試験で入ることができ、試験もない。大学では楽しいことばかりをやっている。ファッションショーや、料理、パーティー、コーラスや、オペラを聴く会をやったり。一年間、22回で卒業。2万円。立派な卒業証書もあり、それは今まで60年、70年、80年・・・生きてきたことに対する証書で、あとは一年間の大学生活を楽しみ、これから明るく楽しく生きていこうということに対する証書である。メンバーはなかなか卒業したがらない。文化というのは人を自立させていく力がある。これはとても大きな力。文化はとても重要なポイントである。(涙を流した受講生に対して)素晴らしい感受性を持っている。福祉は感受性がないとできない仕事である。
参加者:自分は保健婦をやっているが地域の中にある老人ホームをまちづくりの核に位置づけたいと考えている。どうやったらそれが可能か。
露木先生:町ぐるみでできるだけ多くの人に関わってもらうことが大切なのでは。詳しくは次回に話すことにします。(露木先生は今後も講義あり)
参加者:ボランティアをたくさん受け入れているがどうやったらこんなにたくさんのボランティアを、集めることができるのか。そのネットワークはどうやったら生まれるのか。
露木先生:ボランティアにとってもプラスになる交流があることが大切。芦花ホームは生まれたばかりの赤ちゃんから100才以上の方まで関わりあえる場所にしていきたい。近くの小学校や中学校の生徒たちも芦花ホームに来るとなんか元気がでる言っている。
●受講生の様子
午前中の講義もあったため、受講生の顔には疲れが色濃く出ていた。露木先生もそれを読みとって千住さんのバイオリン演奏を流してくださった。独特の「露木節」に聞き惚れる子と、ちょっと引いてしまう子とそれぞれ。“響き合い”の理解がどれだけできていたのかはわからない。でも露木先生の、利用者の希望にどこまでも添おうとする姿勢はかなり伝わったのではないかと思う。
最後に「マイナスは決してマイナスではない。学校に行かないことも必要だったと思う日がきっと来る」というメッセージがよかった。一人一人がそのままで大切にされていいんだというメッセージが彼らの心に届いてくれれば・・・。
橋本みさおさんからのメール
講座の次の日、橋本さんからメールが送られてきました。講座という限られた時間の中だけで、応えきれなかった質問の応えです。
Q1. なぜ、そうまでして生きるの?
私は告知された時に、火葬される自分が、頭から離れませんでした。すると、父が「一人では死なせない、俺達が先に行って待ってるから」と言い、両親が、相次いで病死しました。その時に、死を恐れない事。大切なものは、無くしてみて気付くけど、戻ってこない事を実感しました。私は両親の娘として、幸福な人生を生きなければなりません。
Q2. なぜ、人前に出られるのか?
私にとって、呼吸器は生きるための道具の1つに過ぎません。でも患者も、医者も呼吸器を選ぶ事は人生最大の難関と誤解しています。私は、もっと別の視点から呼吸器を見て欲しくて、なるべく外に出ています。でも本当は、1年が20日ぐらいなら、朝起きる回数が20回ですむのになあと思うほどグウタラです。
今日のひとこと集
橋本みさおさんのお話を聞いて☆
人間の生命力を改めて感じました。重度の障害を持った方に、初めて“人格”を認識できました。ものすごく新鮮でした。☆今まで考えていた「生きていくというコトの意味」というのはまちがってなかったかなと思った。ちょっと自信ついたかな(!?)☆これから、進路を少しずつ考えるんですが、今回あなたのような方と出会ったことは、どういう方向に行くとしても、すごいパワーになると思います。ありがとうございます。☆実際に会って話したふれあえたこと、楽しかった。☆利用者と介護者の間に信頼があると、あんなにいい感じの空気があるものなんだと思った。☆もう、すべて!存在が常識でないから残るとかじゃない、「残る」のではなく、すべてが印象強だと。☆エネルギーをもらいました。どうもありがとうございました。☆ALSのことをもっと知りたい。☆おもしろい人だったなぁ・・・と。話すのもお互いのことを信頼してないとわからないんだね。☆これからも全国の人に分けてあげてください。すごく生きる力をもらいました。本当にありがとう。
露木悦子さんのお話を聞いて☆
講師の人がとても優しい声で、説明してくれて、わかりやすく説明が聞けた。☆話を聞いていて楽しかった。引き込まれるような感じだった。☆介護にはひびきが大切だということ。☆サービスの提供はこうあるべきって姿がわかった。☆自分を大事にしてくださいという言葉がよかった。☆“ひびき”というものがあること。今の自分を大切にすること。
このヘルパー講座は、資格を取るための講座というよりは、様々な人との出会いの講座でもあるように思います。露木先生が所長を勤める芦花ホームにもぜひ足を運んでみたいですね。
講座スタッフ
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