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協力:日本財団
ホームヘルパー3級養成講座通信 第5号
 
ヘルパーへの道
NPO文化学習協同ネットワーク 2001年10月27日発行
 ヘルパー養成講座も第5回目を迎えた。午前中のオプション講座の「救命救急法」を含めると、朝から夕方まで丸1日に及ぶ長い講座となった。今回は「医学の基礎知識・からだのしくみ」の講師として荻窪の「桃井診療所」所長の伊藤浩一さんに講師をお願いした。14名の受講者でいつもより参加者が少なかったものの、3時間に及ぶ講義を「現代社会」の問題・課題を捉え、たくさんの資料を活用しながら進めていただきました。
◆今の社会はどんな社会?
 私たちが暮らしている社会は、どんな社会なのだろうか。お金のある人の方が健康も保てる社会になっている。ものは豊かになっているが、その一方で貧富の差は拡大している。アメリカなどではさらに拡大、国と国の差も拡がっているのが現状。10億人ぐらいの人が1日1ドルで生活している。地球上の富の85%を全人口の1/5の人が独占している。30年間で裕福な人と貧しい人との差は82倍になっているといわれている。
 所得のない人の方が介護の必要性が高いこともデータ的にあらわれている。お金のある人の方が介護の必要な人が少ない。糖尿病などの場合も、お金のある人はフィットネスジムなどに通うことが出来る。かつてはお金持ちの病気だった糖尿病は、お金がなくて知識もない人たちの病気になっている。日本の若者が21世紀に展望を持てていないことがデータに出ているが、このような状況のあらわれなのではないか。
 
 
 
◆「人」を相手にする仕事
 医者という仕事は「人」を相手にする仕事という面では、「介護」と共通した点がある。医療関連の仕事はたくさんの職種にわかれている。その職種でチームを作って患者に当たっていくのが特徴である。「人」を相手にする仕事では(学校教育はそうではないが)介護、医療関連ではチームでいろんな人たちがその専門の目で一人一人に対応している。
*人を相手にする仕事の大切な点
・利用する人を中心に考える
→その人がどのように自分の状況をつかんでいるのか、その価値観を知ると言うこと。
ex:心筋梗塞の患者さん 煙草をやめた方がいいのに吸い続ける。この人はポックリ死にたいという思いを持っていて、煙草を続けていけばポックリ死ねると考えていた。そのためやめさせることが出来なかった。つまり、その人のこれまで考えてきた価値観を尊重した。
・全体を理解する
→その人の抱えている病気身体の状態をとらえ、その人を取り巻く環境などを掴んだ上で、治療に取り組む。
・共通のグランドを見つける
→その人の価値観を尊重すると言っても、治療側の意見と違うことがある。そのズレのなかで話し合って、一致点を見つけていくことが大切。そして共通の目標を見つける。
・予防や健康増進、生活の質を豊かにする働きかけをすること
→具体的なものを提示していく。
・良好な関係を構築すること
→人との関係は大きなストレスがある。例えば、看護婦の退職理由も人間関係が多い。利用者との関係も出来るだけ良好な関係を保つことが大切となるそれにはまず、相手の言うことを受け止めることが大切。とにかく話を聞いてみる。怒っている人がいたら、よく聞いて、「あなたはこういうことで怒っているんですね」という受け止めが大切である。
☆コミュニケーションの実習
 聞き役と話し役になって、コミュニケーション技術を使いながら1分間のコミュニケーションをとった。
 
 
 
(^一^)/覚えておこう\(^0^)
コミュニケーションの技術
 
初対面では挨拶する→フルネームで自己紹介
向かい合って話しをする
ある程度その入が話を続けられるようにする→30秒は口を挟まない
相打ちを打ったり、オウム返しに言葉を返したりする
質問があるときはYES NOで答えられるようなクローズエンドの質問にしないで、漠然とした、相手の話を促すようなオープンエンドの質問で。
 
◆ADLって何だろう?
 ADLとは、毎日繰り返し生活に必要な基本的な動作、日常的にやっている起きる、食べる、トイレに行く、服を着替えるなどの日常生活活動である。介護が必要になって来るというのは、このADLの部分が、一人で出来なくなったり、見守ってもらわないといけなかったりしてくるということ。またADLには出来なくなる順番がある。「食事」が出来ないのに「入浴」が出来る人がいないというように。入浴→階段→歩行→更衣→トイレ移乗→排便→食事という順番で出来なくなる。そこに介助を入れていくことが、命の保障になっていくという。
・道具を使ったADLは、iADL
 ADLよりも高度な機能となるのが、iADL。電車・バスなどを使った移乗・電話・買い物・食事の準備・掃除洗濯・薬を飲む・お金の管理をする。これらができなくなると介助が必要となってくる。ADLが悪い、つまり、介護が必要な人の方が早く亡くなる。つまり、ADLを保つ保証をしていくことが、命を守ること、人権を守ることにつながる。
・高齢者症候群:高齢者がなりやすい病気。
転倒:おとしよりの場合、偶然ではなくて理由がある。ころぶ要因を取り除いていくことが大切。8回か10回に1回は骨折や脳出血につながるといわれていて、その意味では、狭心症などと同じぐらいに重大な問題。そのほかにも、床ずれ・失禁・痴呆・せん盲・寝たきりがあげられる。また、どういう人が転びやすいのかを調べることができる。継ぎ足歩行が上手くできるか、片足起立が上手くできるか、手のばし試験が上手くできるかなど、バランスが調べられる。
・ADLの落ちた人を介護する側の負担をどのように軽減するのか?
 介護側の負担を減らすことが問題となっている。家族で介護するケースが多く、仕事を辞めて介護する、介護離職という問題、老人だけの世帯の老老介護という問題も出てきている。介護者にとっては経済的・身体的・精神的にしんどい作業。ムリのない介護を援助していく必要性が求められている。
 
 休憩時間には、バイタルサインの「呼吸・脈拍・血圧・意識」を実際に血圧計を使って、自分たちで測定。「低いんだけど・・・」と心配そうな声、「ん〜、とっても健康的な血圧」という声も聞こえてきた。
 
 
 
◆脳細胞もだんだん老いていく
 「脳の十年」アメリカでは、90年から、研究が進められ、解明されてきた。人の遺伝子は30000ぐらいあるといわれている。脳の神経細胞は140億あるが、その一つ一つが1000から10000もの細胞とつながりを持っている。その膨大な量を、わずか30000の遺伝子でコントロールすることはとうてい出来ない。従って、遺伝で決定されることというのはそれほど多くなく、ほとんどが、その他の環境によって作られていっているといえる。85歳以上の老人4人に1人が痴呆の症状がでている。「痴呆」は一度獲得した力をだんだんと失っていく状態。記憶の障害が中心。それが日常の生活にさし障りがあるようだと「痴呆」といわれている。
◆戦争と健康
 アフガニスタンの情勢もあるので、触れておきたいと思う。戦争がどんなふうに命や健康に影響を与えるのか。90年のWHOの調査によると、暴力が全世界の疾病で、2番目にあげられている。その中でも、戦争が大きなウエイトを占めている。もう少し人間が賢くなれば、死なない人が増えると言える。しかも、最近の戦争では、死亡した割合は民間人が90%を占めるようになってきている。
●スタッフのつぶやき
 午前中に「救急救護」の講習があったということもあり、参加者の顔には疲れが色濃く浮かんでいました。しかし、その割にはだれることなくよく聞いていました。これまでの感想を見ていても、また、参加者の直接の声を聞いても、講義形式自体が久しぶり、あるいは初めての経験で、新鮮だったり、自分も普通にこのような講習に出られるのだという自信につながっているようです。
 
救命救急「大切な命を救うために」
 午前中は救命救急法を学びました。「救命の輪」は救急車が来るまでに、傷病者の一番近くにいる自分ができることとして、応急手当となる心肺蘇生法 止血法の講習を受けました。三鷹消防署のみなさん、ありがとうございました。
 
 
 
今日もいろいろ学んだ・感じた・考えた
◎楽しかったよ!!
 タバコを吸っていた人のぽっくり逝かせてほしいという言葉を尊重したという話が印象に残った。人の遺伝子がハエの遺伝子の2倍しかないという話が楽しかった。
●発見!
 自分がコミニュケーションがうまくとることができなかったこと。今の日本では金でしか健康が買えないということ。「ADL」という言葉と内容を発見した。もっとがんばって人と話すということ
○私、考えました
 人を取り巻く環境が、人の寿命や健康や安全にどれだけ深く関わっているかよくわかりました、戦争はもってのほか!!人の生活水準が、こんなに健康に影響しているのは知りませんでした。でも例えばちょっとジムに行けたり、習い事ができたり、補助食品や自然食品が買えたり、というのはひいては寿命、心地よい暮らしができることに密接に関わってくるのでしょう。私もADL、暮らしの設計というのは最低限のラインをどこに引くか、人権の問題だと思います。
▲まだワカランなあ!?
 医療関連の仕事をもうちょっと詳しくやってほしかったかも・・・
◇びっくりしたなあ!
 年間何万人もの人が死んでいるということにびっくりした。
☆講師へのメッセージ
 レジュメが非常に分かりやすく、見やすかった。これからもがんばってください。
 お金を持っている人ほど、安全や健康を買い取ることができるというのはオカシイですね。
 なんとか変えていきたいです。わかりやすくレジュメをつくってきてくれたのに、うとうとしてしまってすいませんでした。
※こんなことしたぁ〜い※
 今日、伊藤先生にいただいた一つ一つの資料がかなり興味深いので、みんなで見ながら検討してみたいです。
 
ご案内
 次回のヘルパー講座は、三鷹労政会館(三鷹駅南口より徒歩15分)で行います。第6回「サービス利用者の理解」は難病のALSという障害と共に生きる橋本みさおさんがゲスト講師。24時間介護を必要とする橋本さんのそばで働くヘルパーさんたちはどんなことを感じているのだろう?介護される気持ち、介護する気持ちを学びましょう。午後の講座「サービス提供の基本的視点も続けて、同会場で行います。
 また、10:00〜12:00までは公開購座として、一般の方も参加できます。ぜひ橋本さんのお話を聞きにいらしてください。







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