協力:日本財団
ホームヘルパー3級養成講座通信 NO.3
ヘルパーへの道
NPO文化学習協同ネットワーク 2001年10月6日発行
障害者の制度とサービスについて考えました。
第3回ホームヘルパー3級養成講座は、前回の振り返りクイズから始まりました。基礎的なことを確認する簡単な質問だったと思うんだけど・・・。「65歳以上の高齢者が14%以上の現在は何社会と呼ばれているか。」の質問には、大半の人が不正解。“高齢社会”ですよ、高齢社会!日本の場合は、1994年以前が“高齢化社会”、そして2050年には人口の3分の1以上がお年寄りという“超高齢社会”を迎えるということです。わかりました?その後福祉機器展示場の見学に行ってきた人の感想を聞いたあと、本題に入りました。
今回の講座は「障害者福祉の制度とサービス」。フリースペースコスモのメンバーの中には福祉作業所にボランティアに行っている人もいるのですが、ほとんどの受講生にとってはあまり触れることのなかった世界。初めて知ることが多かったようです。
講師は三鷹市役所健康福祉部地域福祉課障害者相談係の萩原さん。ご自身の市役所内での仕事の変遷なども交えながら、おだやかでわかりやすい講義をしてくださいました。
三大障害って何?
まずはじめに、障害の種類について話していただきました。障害には、3大障害と言われる「身体障害」「知的障害」「精神障害」があり、その中でも「精神障害」は最近になって認められるようになった障害であるということでした。それぞれの障害ごとに「障害者手帳」が発行され、それによって運賃などの面で優遇されるということでした。
その後グループごとの討議に入り、感想や疑問点を話し合い、前半の講義を終了しました。
障害者手帳はどうやったらもらえるの?
後半の講義は、受講生からの質問に答えていただく形で進みました。「障害者手帳はどうやったらもらえるのか。どこが発行してくれるのか。」など、手帳についての質問が多くありました。現在三鷹市では10才未満の子どもについては杉並の児童相談所が発行していて、それ以外は新宿にある東京都心身障害者福祉センターで判定をしているということでした。手帳をもらうためには、本人もしくは家族の申請書と指定の医師による診断書が必要で、それにより障害の重度や等級が判定されるということでした。
「障害のある方にもホームヘルパーはつくのか」の質問には、三鷹市では身体障害の重度の方と、知的障害の重度・中度・軽度の方に派遣されるという事でした。精神障害については、来年の4月から管轄が武蔵野保健所から三鷹市に移行され、それによってホームヘルプサービスも始まるということでした。「学習障害は障害に分類されるのか」と言った難しい質問もあり、講師の萩原さんもちょっとお困りの様子でした。
障害者問題は人権問題
その他にもグループ討議では、精神障害者に対する世の中の偏見についての意見が述べられたりと、“社会的に弱い立場におかれている人の問題”への関心の高さが感じられました。「自分は障害者のことに関して全然知らなかったことに気づいた。」と言ってショックを受けて帰った受講生もいました。「もっと障害者と触れあう場面があっていい。ボランティアをやってみたい。」という感想もあり、今回の講座が障害者に対する意識が変わっていくきっかけになればいいな、なんて思いました。萩原さんのおっしゃった「障害者問題は人権問題だ」の言葉は深く心に刻んでおこうと思いました。
講座が終わって
・障害者の問題は人権の問題というのが、なんかおぉ!と思った。
・障害者手帳を持っていると乗り物料金が割り引きされたり、税金が免除になったりすることを知った。
・まだまだ障害者にとって過ごしにくい状況であるが、建物に障害者のためのバリアフリーをつくる制度(ハートビル法)ができていることを知った。
・精神障害というのが最近になって認められているという話が印象的です。
・精神障害のための制度やサービスが充実していないのがわかった。
・障害と言われる状態が思っていた以上に多かったのを発見しました。
・福祉というものに対する漠然とした手応えは、障害者の基本理念も高齢者も具合の悪くなった人も、社会に適応できなくて悩んでいる人も、福祉はすべてに通じる?という事でしょうか。
・障害者の方やその家族の方が問題を抱え込まなくてもいい制度やサービス、少しでも精神的重圧を軽くする制度やサービスが必要だと思いました。
〜スタッフのつぶやき〜
「ホームヘルパー3級養成講座」も3回目が終わりました。これでほぼ4分の1が終了!前回に続き今回も講義形式の講座で、結構つらかったメンバーも多かったのではないかな?,でも、スタッフの間では思った以上のみんなのがんばりに驚きの声があがっています。若い受講生にとっては、高齢者や障害者の問題は身近に考えにくいことかと思っていたら、結構鋭い意見が出てきて、みんなが真剣に考えているんだな、と関心しています。これからの講座も、新しい世界をいっぱい吸収してくださいね!
ホームヘルパー3級養成講座通信 NO.4
ヘルパーへの道
NPO文化学習協同ネットワーク 2001年10月22日発行
ヘルパー3級養成講座も4回目を迎えました、今回の講義「ホームヘルプサービス概論」の講師は、多摩地域で活躍している北多摩医療生協「ケアセンターのがわ三鷹事務所」の鴨下富美子さん。クイズ形式で前回の講座を振り返った後に、鴨下さんの「介護の歴史」について、最も身近な問いかけから講義は始まりました。
「介護・ヘルパー」誕生話
はじめに受講生に対して、お年寄りと同居しているか、おじいちゃんやおばあちゃんは元気か、また祖母や祖父が亡くなった時の気持ちを覚えているかの問いかけから始まった。お年寄りと同居している受講生は少なく3、4人。受講生にとっては、介護を要する人は身近な存在ではないのかもしれない。わたしたちにとっては、介護はいまや当たり前の言葉になっているが、実は30年前に生まれた言葉で、それ以前は「人生50年」の時代だったので介護は必要なかった。「人生80年」の時代になって、「看護」と「介助」を組み合わせて「介護」という言葉が生まれたと話してくれました。
ホームヘルパーの前身は長野県で始まった「老人家庭奉仕員」。「ホームヘルパー」は1989年に生まれ、昨年4月から「介護保険制度」が始まり、ヘルパー1級、2級、3級の制度がつくられたのです。それ以前の「措置制度」だった時代には、お金のない人でもヘルパーを派遣してもらえていたが個人負担の金がかかるようになって、ヘルパーを頼めなくなったという。お年寄りになると見捨てられ、山に捨てられていた時代も昔はあったというが、老いや病は誰もが抱える問題となった今だから、どうしたら一緒に生きていけるかを、みんなが考えていかなければならないと語ってくれた。それはきっと今ある制度が最良(の制度)とはいえないからなのだろう・・・。
「いま、水が飲みたいですか?」
コップの水を、隣同士で飲ませあう体験。飲ませあった後で、講師の方から「今相手が本当に飲みたいかどうか聞いた人?」との問いかけがあった。聞いた人はゼロ。講師の方に言われたままに水を飲ませてしまっていた。そのことから、介護の場面では、家族に頼まれたり自分が必要と思っても、利用者に確認しない限り何かをしてはいけないということが強調された。飲ませてもらって「おいしくなかった。」「飲んだ気がしない。」との声も聞こえてきました。
ヘルパー4つの心得とは?
「個別化」「自立支援」「プライバシー」「チームワーク」
水を飲ませる体験に関連して、ヘルパーが大切にしなければならない4つの点の話があった。1つ目は「個別化」それは利用者一人一人が求めるものが違うから、それぞれが求めることに答えなければいけないということである。自分勝手な思いこみや自分のやり方で掃除をしたり、片づけをしたりしない。例えば買い物も、安いからと言って頼まれたものではないものを買ってしまうと利用者の期待を裏切ることになる。利用者は別のものを買われたことがショックなのではなく、自分を大事にしてもらえなかったことがショック。「どちらがいいか」の判断ではなく、「利用者が何を望んでいるのか」という利用者の気持ちを基準に援助を決める。その人が自分のやり方を大切にされることで、自分を大切にされたという思いが生まれ、それによってそれぞれの利用者さんが輝けることが介護のあり方であるという。
また「自立支援」も大切で、自分のできることは自分でやることが基本。ヘルパーがやってしまえば簡単なことも、その人が自分のやり方でゆっくりとでも自分でやるのを見守る。お年寄り体の不自由な人であっても「自分の幸せを自分でつかむ」権利があり、それを支えるのが援助。「こうしたほうがいい。」という勝手な判断で決めつけず、時に辛抱強く見守る。でも、本人に任せっきりで放って置くのではなく、専門的な判断も必要で、ヘルパーにとっては専門性も必要なこと。また、「プライバシー」の問題も重大。電話もかけずに利用者の家に行ったり、派遣先のことを他人にベラベラしゃべるのはいけない。とても重い問題を抱えてしまうこともあって、誰かに話をしないともたないこともあるので、話すことすべてが悪いのではなく、同じヘルパーステーションの仲間と話しあったりして解消する必要がある。現在は「プライベート漏洩」についての保険もあり、秘密をもらすことには注意しなければならない。もう一つ大切なことはヘルパーは「チームワーク」が基本であるということ。一人で利用者宅への直行直帰をくり返していると、個人ワークのような形になりがちである。問題が起こっても一人で抱えてしまって、周りがどう協力したらいいか見えてこなくなったりしてしまう。介護が独りよがりになる危険性もある。それを避けるために、常にチームワークであることを頭に置いて置かなければならない。介護保険が始まってから記録をとることも強制されていて、往診や訪問看護の人につなぐためにも記録をとることは重要だと語ってくれた。
ちょっと休憩 折り紙講師「折り姫」登場
鴨下さんは折り紙講師という別の顔も持っている。休憩時間に希望者に今までつくったことのない折り紙の折り方を教えていただきました。息を吹きかけて回すこまは、息を吐くリハビリにもなるそうです。それからもう一つ子どもからお年寄りまで遊べる「アクロバットホース」を習いました。
ヘルパーステーションの立ち上げ・・・
鴨下さんがどうしてヘルパーステーションの立ち上げに関わったのか、介護保険制度の問題点を絡めながら、説明してくれた。介護保険制度は高齢者のための制度なのだが、一号保険者(65歳以上)は判定によっては制度を利用せず、保険料の払いっぱなしになってしまう。二号保険者(40歳以上)は病気にならなければ保険料の払いっぱなしになる。定年退職後も保険を払わなくてはならないので、低所得者にとってはかなりきつい。利用者は利用料もあるので2重どりと言われる状態になる。また、限度利用額内では充分なサービスが受けられない事が多いなど、介護保険には問題点も多い。北多摩医療生協ではそのような問題の多い介護保険にのってヘルパーステーションを立ち上げることについて疑問もあったが、その介護保険の問題点を解決していくことを理念に掲げて、立ち上げることになった。利用料については自治体によって低所得者の利用料の減免などの制度もあるが、期間限定だったりする。問題点を解決するために、三鷹でお金がなくても利用できる(無料サービス)を広げていく運動をしていこうかと考えている。
みんなが行きたいデイサービスを考えるグループ討議
お年寄りがあまりデイサービスに行きたくもないのに家族の都合で行かされたりしている現状についての話や、施設に行ってやりたくもないことを強要されたり、みんなと一緒に行動させられたりすることに苦痛を感じているお年寄りの話があった。また脳卒中などで40代や50代で家にいることが多くなってしまう人もいるので、そういう人も通いたくなるようなデイサービスはどういうところか考えて欲しいという話があった。その後グループ討議に移り、それぞれのグループで、お年寄りや体の不自由な人、また自分たちも行きたくなるデイサービスとはどういうところかという話をした。出てきた案は紙に書いてはり、自分たちの考えたデイサービスのおおまかな像を発表しあった。最後に講師である鴨下さんから、受講生からでたようなデイサービスを一緒に実現して行きましょうという呼びかけがされ、講義が終了しました。
私の疑問に答えて!!
「ヘルパーと家政婦はどこが違うの?!」
家政婦はモノが相手だが、ヘルパーは人が対象。掃除も利用者が使う場所を掃除するという感覚。利用者が家にいなければ家にあがることもできない。
わたしの声 きみの声 みんなの声 感想集
●おもしろかったぞ!
デイサービスを「自分が行くとしたら」で、具体的に考えてたり、水のませた後に「本人の意見を聞いた?」と言われたり、忘れられないことがたくさんありました。隣の席の人に水を飲ませてあげることが楽しかった。
●わかったぞ!気づけたぞ!
今まで何となくヘルパーというものが「特別なもの」だった気がするけど、今回はそうでないことに気づいた。これだけ、「もし自分が行くとしたらデイサービスは・・・」「もし自分が介護されるとしたらホームヘルパーは・・・」どうしたらいいのか、真剣に突きつけられたのは新鮮でした。デイのところで、「お金はただ」と出ていましたが、税金を払っているからただで十分と思うのです。おとしよりの気持ちがわかった。すっごくよくわかった。ホームヘルパーは相手の気持ちを確認しながらヘルパーをしなければならない。
●まだまだワカランなぁ
よくわからないというか、例えば例で話しの出た、最低の6500円の払えない人はどうしているのでしょうか。
●発見!
鴨下さんがわかいひとがいるとおとしよりがうれしいといっていた。デイサービスについての話し合いがとても楽しかったです。介護サービスというものは、まだまだ発展途上なんだということが発見だった。
●講師の方に一言
ホームヘルパーについては、今までやったけど、事務的なことでわからなかったけど、なんかわかりやすくて、すーっと入ってきた感じです。ありがとうございました。ぜひ、16才こえたら、いっしょにデイサービスセンターをつくりましょう。自分自身の思いを語ってくださってどうもありがとうございました。
スタッフのつぶやき
講義が中心となる講座に飽きてきたのか、はじめは反応もあまりよくなく心配されたが、講座が進むにつれ、鴨下さんの現場の生の声に関心が高まっていった。鴨下さんが受講生の意見を現場に活かしたい、いっしょに考えていきたいという思いを最後まで伝えてくださったので、より現実的にこの問題を考えられたのではないかと思う。介護保険の問題点や、デイサービスのマイナスの面などについても話が聞けたので、制度をよりよいモノにするための問題意識のようなものが生まれたのではないだろうか。自分が行きたくなるようなデイサービスを考える場面では、柔軟な発想で意見がどんどん出てきて楽しんでいた。どのグループからも、「一人一人が大切にされる場所」であって欲しいという意見が出ていた。「フリースペース」に通う自分と重ねながらこの問題を考えていたように思う。実際、自分がサービスを受ける側に立つことを想像したことによって、よりいっそう介護の問題が身近になったように思う。
|