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修了式
 
●2002年1月12日(土)
●講座の流れ
午前「大宮さんの話を聞こう」
交流会
午後「学習センターOB川上泰代さんの話を聞こう」
修了式
 
「大宮さんの話を聞こう」
 大宮さんは、脳性麻痺の障害を持って生きる方。いっしょに来てくださった大宮さんのお姉さんとヘルパーさんを囲んで話を聴いた。
1. 外に出ることのなかった40年分、楽しみたい!
 大宮利夫さんは現在45歳。4年前まで40年近く外に出ることはなかったという。4年半前に両親が一度に他界し、ヘルパーさんや周りの人のおかげで、お墓参りや一泊旅行に行くようになった。2年前からはメールも始め、今ではメル友もでき、生活ががらっと変わったという。競馬とカメラが最近の趣味なのだとか・・・。また、WebTVを使って、右足の親指一本で日記やメールを書くというコミュニケーションもしている。言葉の不自由さはあるものの、とっても明るい方。大宮さんはお姉さん達夫婦と暮らし、お姉さんが仕事にでている日中は、ヘルパーを行政から派遣してもらい日常生活を送っている。
 今回はお姉さんの他に4人のサポーターを引き連れて、ヘルパー講座にきてくれた。吉原さんは、4年前にご両親が亡くなったときからのつきあいのヘルパーさん。高橋さんは一年間ボランティアとして北海道から上京。友愛の日協会からヘルパーとして派遣されている。また牧野さんはヘルパー講座の現場実習で大官さんの所に実習しに行ったことがきっかけでお友達に。友愛の日協会の沼田春子さんは、大宮さんのところへ学生が実習するコーディネートをしている。
 
 
 
2. ヘルパーさんが来て、生活が変わる!!
 40年間、外に出ることはなかったという大宮さんは、コレまでの生活に対してはにんなもんかなぁ」と思っていた。高齢になった両親は、外の人に彼の障害を知らせようとはしてこなかった。もちろん学校にも行っていない。突然、一度に両親が亡くなり、お姉さんが保健婦の檜谷さんに相談したところヘルパーさんに家に来てもらうことになった。表に連れ出してくださいと檜谷さんに頼んだので、大宮さんの世界が広がっていくことになった。お姉さんから見れば、弟は40年間社会とふれあっていなかったので不安があったが、本人はどこに行っても明るく楽しんでしまうのでそんな不安も吹っ飛んでしまった。またメールを通して、友達も増やしていった。
 
3. 飾ってあるだけの制度はダメ!制度をどう活かすか!
 昔の人は行政の世話になっては恥ずかしいという意識が強い。だから大宮さんの両親も大宮さんを外に出そうとはしなかった。制度に対しての情報も持っていなかった。また本人やまわりの人が申請しないとサービスは受けることは出来ないこと。
 全身性障害者介護人派遣制度という制度を使えばヘルパーを派遣してもらえると保健婦の檜谷さんに伺うまでは、お姉さんが自分の仕事を辞めて介護をしなくてはならないと思っていた。両親に大切に育てられてきたので、変な癖もなく機能としてはまだしっかりと動く部分も残されていた。障害者手帳と車椅子はあった。手当の手続きだけをした福祉事務所。制度を知っていればこそ、つなぐこともできる。近くに困っている人がいれば、情報を伝えてあげることで、生活が変わる人もいる。
 
4. 大宮さんの1日はヘルパーさんと共に
 朝から夜6時頃までヘルパーさんにいてもらい、夕飯を食べさせてもらう。お姉さんのご主人が帰宅してからは着替えなどを介助してもらい、床につく。
 ヘルパーさんとはどんな日々を送っているのか。
吉原さん(ヘルパー)
 外に出ることで大宮さんはどんどん健康になった。背骨がシャンとするようになった。遠くの公園まで散歩しに行ったり、自宅のある高円寺から荻窪まで行ったり、檜谷さんの誕生日には手紙を渡したいといい杉並の保健センターまで行った。
 大宮さんが40年間も外に出ていなかったというので、自分の知っていることを教えたいという気持ちが強い。バラのにおいをかがせたり、落ち葉の上を歩かせたりと大宮さんの経験したことのないことを感じて欲しかった。障害者という特別視はほとんどない。ケースバイケースだが大宮さんが自分に合わせてしまうような勢いで接している。自分がしんどかったら相手に伝わる。
高橋さん
 利夫さんはありのままの自分でぶつかってきてくれる人で何でも伝わりやすい。自分でもアンテナをたくさん張って、試行錯誤しながら自分も楽しいと思えるヘルプをしている。多少の押しつけもありながら、互いに楽しいと思えることは大切☆
牧野さん
 実習で大宮さんのお宅へ伺うことになって、行く前から緊張していた。大宮さんの書いた日記を見たりして、行く前にどんな環境で過ごしているのか資料を読んで把握していた。だから自然な気持ちで接することが出来た。外で車椅子を動かすことはすごく大変だった。老人施設はバリアフリーなのでまったく段差がないが、一般道路は段差だらけ。肩に力を入れずに車椅子のそばに自分が身体を寄せることや一声かけてあげることが安心してもらうことになる。
白樺湖や千葉に一泊旅行へ
 中野のヘルパーステーションの「在宅患者の会」の人たちと一緒に出かけていく。一人で参加し、家族は同行しない。新幹線や飛行機にもまだ乗ったことがないという。外に出なかった時間を取り戻したいという利夫さん。この先もオーストラリアに行ってみたいという。出来るだけいろいろなことを体験させてあげたいと思うお姉さん。
 
5. 大宮さんに受講生から質問
 もうすぐ大宮さんに関わるヘルパーさんが百人目を達成するという。福祉の専門学校の実習生は実習しながら学ぶことが多い。利用者とその家族、そして他のヘルパーの三者の了解がないと実習などできない。
Q.どんなヘルパーさんだと気持ちよく過ごせるのですか?
A.大宮さんはヘルパーさんと楽しく接触する方法として、ヘルパーさんに点数をつけるという。その基準は、ご飯の食べさせ方、気持ちが優しいかどうか、車椅子を押してもらうときの言葉かけがどうかなどだという。ただしとっても採点は甘く、みんな百点以上がつくのだとか。車椅子を押すときも、意識して声をかけるなど、相手の気持ちになって声をかけられることは大事な心がけ。一緒にやりましょうよと声をかけてくれることはヘルパーとしての点数が高い。点数の低いヘルパーさんというのは何を考えているかわからなかったり、不安を持ってくる人は怖い。また相手の気持ちを考えないままヘルプしようとする人には百点以下となる。
 
 
 
7. 大宮さんからひとこと
 人生気楽に生きてください!やりたいことを見つけて!!
 
「学習センターOG 川上泰代さんに聞く!!」
 現在、有料老人ホームシルバーヴィラ武蔵境でパートとして働いて4年目の川上さん。
 中学1年からセンターに来ていた泰代さんが福祉の道を歩むことになったきっかけは?
 高二の夏に、ボランティアに参加してくるという夏休みの宿題で、三鷹市の障害者の共同作業所「はばたけ」に行った。そこにいた人たちが生き生きしていて、自分も役に立ちたいという思いで福祉の道へ進もうと決めた。福祉の道に進もうと決めたら、それしかもう頭になかった。そんな自分に迷うこともなかった。
 自分で福祉の専門学校を探し入学。2年間介護福祉士の勉強をしてきた。専門的介護技術も習い、実習に4回も行った。他の学科ではやめていく人もいたが、福祉の人たちはやめていく人などいなかった。
 卒業後、どんな現場で働こうか悩んだが、新聞の折り込み広告を見て、今の施設で採用試験を受けた。パートとして採用され、働いて4年目になる。食事・入浴・排泄介助など勉強したことをすべて現場でやっている。
 初めは何もわからないし、学校で勉強したことはなんだったのかと思うくらいだった。つらいこともたくさんあった。出来て当たり前と思われている周りからのプレッシャーも感じていた。ロッカーで泣いたり、いびられることもしばしば。別にあなたに教えることはないと言われたり、辛いこともたくさんあった。
Q.それでもこれまで続けている理由は?
A.やりがいを感じているから。自分のやったことで利用者さんに喜んでもらえるとよかったなと思うし、「ありがとう」と言われると「あーよかったな」と感じる。またがんばろうと次につながる。利用者さんに助けられることもたくさんある。
Q.この先も続けていくの?
A.今の現場では正職にはなれないので・・・どうしようかと揺れている面もある。
 
「修了式」
1. 講師の方、講座企画スタッフから受講生へ
三田さん
 福祉は自分でやる気をだして、自分のモノにする、自分の希望を叶えていくんだというくらい前へ前へいく気持ちが大事。必ず認めてくれる人がいる。どんなことでも手を抜かずに一歩ずつ進もうとしていけば・・・自分の方向に合った道へ自分で自分を育てようとすると、それを応援してくれる人が必ずいる。
 ヘルパー3級という資格を持って、街を歩いたとき、白い杖をついた人や車椅子の方に少し道をあけておこうなど、自然な気持ちで対応して欲しい。
露木さん
 3級ヘルパー資格取得おめでとう!ライセンスを持っていれば働くことはできる。安心して働いてください。受講生の皆さんはみんな目が輝いていました。ステキなセンスをもっています。それぞれの意見もきちんともっています。みなさんと出会ったことを大切にしたい。私自身が学ばせていただきました。一生懸命やっていれば、必ずそれを認めてくれる人がいる。あわてず、今自分の居るところを大切にしてみることが大切。
鴨下さん
 ヘルパーステーションで利用者の所へ行くと「若いのに偉いね」なんて言われるが「若いからこそ出来ることだ」と心で思って欲しい。これからの社会は一つの資格を持って転々と次につないでいく働き方なのでは?長い人生の中でどう自分のモノにしていくか。この仕事は人間理解も深まっていく。醜さや愛しさをたくさん感じて、経験できる仕事だと感じている。
小関さん
 修了証を大切にして欲しい。資格を一つひとつ積み重ねていくことで自分に自信が湧いてくる。次のステップアップもきっと見えてくるのかもしれない。
近藤さん
 3級ヘルパーでの学びや人との出逢いが何か心に響いてくれたかな。一人の人間として生きていける力になれたかな。デイホームも出発してまだ一年経たない。まだ日々模索です。新しい一歩が始まるといいな。
岡村さん
 長い間ご苦労様。裏方として参加してきたが、講義を聴いて、今までの自分の世界が広がっていき、プラスとなった。講師の方からそれぞれの仕事に対する思いも聴けて、ありがとうございました。
高橋さん
 しっかりした顔になったなぁ。一緒に勉強させてもらってよかった。これからは福祉と教育の問題はとっても密接なのではないか。
 
2. 講座を終えて(受講生の感想) 1/2
T.N ホームヘルパーの学びだけど、人としての学びをしているとだんだん思えてきた。嫌になったときもあったが、最後までいけばきっとプラスになると思ってやってきた。デイホームに実習に行って、机ではわかっていたことがいざ現場でどうしていいのかと戸惑った。今までの自分の認識であった高齢者のイメージが変化した。福祉にこの先関わるかどうかはまだわからないが、自分の視野を広げてくれた。自分のやりたいと思ったことと自分の好きなことをどうつなげられるのか。もっと自分を追求して、進路を考えていきたい。自分のやりたいことを叶えていくような人になりたい。
 
T.M 池尻で利用者さんと出会う。厄介そうで、すごく気になった。自分に近い人のように見えた。その利用者さんに怒られたことがうれしかった。ほんと、自分みたいだった。きついことを言ったり、きつい態度をとる。講義では講師の方の思い伝わってきて、多すぎず少なすぎずの受講生で良かった。
 
M.Y あまり意識せずに講座を受けた。自分には知らないことが山のようにあるんだということを改めて感じた。自分がまだまだ勉強不足だなぁと知識のなさを痛感した。毎回講義の最後に話し合うことが新鮮だった。これまで自分はしたことがなかった。講師の方初め、この講座ですべての人と出会えたことも新鮮だった。以前は、自分の身近にない問題としか思っていなかったから、想像もできなかった。この講座で、考えていかなくてはならない事柄を得た気がする。これからもいろんなものを生涯に渡り、吸収していきたい。
 
I.T 最初は学校と同じかもと心配だった。どんどんはまっていった。実習は緊張したが意外とうまくいった。こんなにスムーズにいってしまっていいのかな。最終的に楽しかった。
 
K.T たまに理解できない講義もあった。ヘルパーになろうとはどうしても思えない。自分には向かないかもって思うから。ものの見方が変化し、いろいろ大変だなぁと感じた。もっと実習が多いほうが良かった。実習したことが記憶に残っているから。







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