介護技術入門2
●2001年12月16日(日)
●講師 三田久子さん
● 全体の流れ
・咋日の振り返り
・体をほぐす運動(ストレッチ・指体操)
〜今日の内容〜
・身だしなみ・衣類着脱の介護の説明→デモ→実際にやってみる
・排泄・尿失禁の介護の説明→デモ
・家具・車いすへの移乗の介護の説明
・食事の介護・口腔ケア
<講義の内容>
1. 身だしなみ・衣類着脱の介護
パジャマ(なければボタンのついたブラウスのようなもの、脱ぎ着しやすいウエストがゴムタイプのズボン。)と、丸首のかぶり物(トレーナーなど)の着脱を行った。まずはじめに三田先生がデモンストレーションを行い、その後各自でやってみた((1)(2)。(3)についてはデモのみ)。
(1)パジャマを自分で着替える方法(右マヒを想定)
(2)ベットの半座位にての着替え介助(右マヒ想定 2人組)
(3)ベットの臥位にてパジャマ交換
注意する点は、着る(着せる)ときには必ずマヒ側から行い、脱がせる時には動く方の手から行うこと。袖やズボンの裾は、自分の腕にたぐり寄せてから行うとやりやすい。何かの動作を行うときには必ず言葉かけをしてから行うこと。腕の場合は肘の関節を支えたり、足の場合はかかとを支えながら行う。できるところはできるだけ自分でやってもらうよう促し、できないところを手伝う。ボタンかけなどは結構難しかったりするので、半分はやってもらい、半分はヘルパーなどが行うと良い。(臥位の場合はほとんどヘルパーがやる)これはヘルパーがちゃんと見守っているという意思表示でもある。
半座位での注意点は、座ったままでズボンなどできるだけ上げてもらい、立ってからの動作はできるだけ少なくするとよい。(立位がとれる人の場合可能な方法)
臥位での交換の場合は、自分の側から着せて、衣類を体とベットの間に押し込み、その後利用者に側臥位になってもらってから反対側を着せる。寝たままでは時間がかかるので、脱がせているところにパジャマをかけておく。汚れた洋服は内側に丸めて足下に置く。
2. 排泄・尿失禁介護の方法
(1)差し込み便器の使い方
差し込み便器は、男性の排便、女性の排便・排尿の時に用いる。男性の排尿は溲瓶を使う。クッションがついているもので、冬場はお湯をはって温めておくといい。中にはトイレットペーパーを少ししめらせたものを入れておき、便がスムーズに水洗トイレに流せるようにしておく。準備に時間がかかるので、我慢ができる人のための便器である。マヒして排泄の感覚がない場合は、おむつに垂れ流す状態になる。使い方は、寝た状態から少し膝を曲げてもらい足を開いてもらったところで、ベットとおしりの間に差し込み、排泄してもらう。座位のほうが腹圧ででやすいので、なるべく座った形で行ってもらう。排泄している間は、別の場所にいくなど配慮する。べットにはビニールシートに古いバスタオルを敷いたものなどを用意し、汚れないようにする。排泄されたものは、すぐにふたをして水洗トイレに流す。その後容器をきれいに洗う。
(2)陰部洗浄
排泄のあとには陰部洗浄を行う。陰部洗浄器というものがあるので、それを使ってぬるめのお湯を陰部にそっとかける。さわる方の手にはビニール手袋をする(利用者の見えないところではめる)。
(3)おむつの使い方
昼用のおむつはほとんどパンツタイプのおむつに尿とりパットを当てたものを使用。おむつは替えずにパットの方を取り替える。一日で7〜8回くらい。パットは男性は前のほう、女性は後ろの方に当てる。
夜用のおむつは厳重にする。テーナというパットの大きくて吸収力の優れたものを当てた上に両脇で止めるタイプのおむつをする。漏れる場合は、パットを併用することもある。
おむつを替える時は、側臥位になってもらっておむつをあて、仰向けになってもらってテープで止める。自分でちょっとうまくいかなかったと思っても、何度もやり直すことはできないので、もれそうなところにパットを当てるなどで対応する。
3. 車いすの移乗
まず、車いすを選ぶときのポイントの説明、車イスを押すときの説明があった。その後、ベットから車いす、車いすからベットでの移乗をやった。(2人組)初めに三田先生のデモがあり、その後、各自やってみた。
手順・・・まず動く側を45°の角度でベットにつける。臥位から昨日の要領でベットに座らせ、おしりを動かして端により立ち上がれるようにする。利用者と重心を同じくして立ち上がってもらい、車いすに座らせる。車いすは動く側の手で支えてもらうようにする。まず一度腰をおろしてもらったあと、フットレストを倒して足をおき、その後おしりを背もたれにくっつけるように腰を持って後ろに引き寄せる。利用者がきちんと乗れているか確認する。
その逆の要領で車いすからベットヘの移乗を行う。移乗の際には、介護ベルトを使うとそれを引っ張ることができ、便利。介護ベルトは市販のものもあるが、一反のさらしを3つに切って使うこともできる。お風呂の介助の時はそれをウエストの部分にまき、移乗ではおしりに巻くようにする。車いすからベットヘの移乗は難しく注意を必要とする。それは利用者がベットに入るということで、すっかり眠る気になってしまって体の力が抜けてしまっているから。ベットに移すとき気を抜くと共倒れになってしまう。最後まで力を抜かないことが大切。
4. ポータブルトイレヘの移乗
三田先生のデモのあと、それぞれ右マヒを想定して各自やってみた。
手順・・・昨日の要領で一人で起きあがり、ベットの端に座る。トイレのふたをはずす。立ち上がる時に動く方の手でポータブルトイレの手すりにつかまり、体を支えながら座る。ヘルパーが手伝うときには、でている足の所にバスタオルをかけて場所を離れる。終わったら呼んでもらう。おしりを拭くときは、女性は前から後ろへ。それは尿路感染をふせぐため。男の人はおしりの穴の部分を拭く。マヒしていると自分でぺーパーを切ることのできない人もいるので、その時はちぎっておいておくとよい。ポータブルトイレの中身はバケツに入るようになっているので、排泄したあとは、そのバケツにふたをして水洗トイレに流す。夜の間ポータブルトイレを使う利用者の場合は、朝伺った時にすでに便が入っているので、まず初めにそれを捨てる。においの対策は、消臭剤を使ったり、炭を使うと良い。できれば換気扇や空気洗浄機を使うのもよい。
5. 食事介助
カップのうどんとヨーグルト、飲み物の介助を行った。うどんはどのくらいの長さにしたらいいのかわかりにくく(利用者によってちがう)、時間がかかるとのびてしまうというくせ者。ヨーグルトはやわらかく介助食向き。飲み物はストローを使って吸い飲みがわりにした。食べさせるときには、利用者の首の所にタオルをかけて洗濯ばさみで止めるとよい。
うどんは箸によってはつまみにくく、長いのでなかなかまとめることができず難しかった。あまり短く切っても食べた気がしないという難点もある。フォークも使ってみたが、フォークに絡ませるのも難しく、箸の方がやりやすいという印象を持った。スプーンでスープを飲ませるときには口に対してなるべくまっすぐに入れるとよい。スプーンにくっつきやすいものは上の前歯ですくい取るようにするのがよい。量が多いと口の周りからこぼれてしまうし、垂れてくる。この食事介助は実際に受けると食べにくいポイントなどがわかって、介助のときにとても役に立つだろうと思われた。
他人に食べさせてもらったあとは自分が利き手がマヒという想定で自分で食べてみた。
利き手と反対の手で箸でうどんをつまむというのはとっても大変だった。また、ヨーグルトなどカップに入ったものは最後の方になるとカップが動いて食べにくかった。
飲み物をストローで飲む体験は、ストローの位置によって飲みやすかったり、飲みにくかったりした。
6. 口腔ケア
最後に右手がマヒという設定で、歯みがきの介助をやってみた。まず自分が左手でできるところは磨き、磨き残しのあるところをヘルパーが手伝うというという形にした。磨いてあげる場合は、歯に対して45°に歯ブラシを立て、横にこするようにする。磨くときの力の入れ方は結構難しく、人によってもっと強くという人や痛いという人もいて、利用者に確認しながらすることが肝心。あごのところにつばを吐き出す容器をあて、つばがたまったらはき出してもらう。のどの方まで歯ブラシを入れすぎると「おえっ」となるので注意したい。
他人にやってもらうと、かゆいところになかなか手が届かないので忍耐力が必要。自分がヘルパーを育てていくような気持ちで利用者が接してくれると助かる。不都合な部分をその都度指摘してもらえば、ヘルパーにとってはとても勉強になる。三田先生は、3ヶ月はヘルパーを替えずに見守って欲しいとお願いしているそうだ。
<全体を通して・受講生の様子>
介護技術入門も二日目ということで、だれてしまって必要以上に時間がかかったり、ふざけてしまう部分もあったが、受講生みんなよく話を聞き、積極的に実践していたように思う。頭ではなく体で覚える感じの講座だったので、感覚として体に残った部分が多かったのではないかと思う。ヘルパーとしての仕事の過酷さ、専門性、技術の必要性を感じると同時に、利用者側にも立てたことで「相手が気持ちいい介護とは」の視点でも学ぶことが多かったのではないかと思う。三田先生の話は実際の活動をとおした具体的な話なので、とても参考になり、おもしろかった。受講生にとっては、体をふれ合う場面が多かったので、より深くメンバー同士つながることができたのではないかとも思う。普段よりあまり知らないメンバー同士の会話が多い講座だった。介護の場面でなくても、日常生活で役に立つ知識は使っていきたい。
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