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介護技術入門1
 
●2001年12月15日(土)
●講師 三田久子さん(国立市社会福祉協議会「ふれあいクラブ」寮母 介護福祉士)
●全体の流れ
・介護技術のコツについて
・ベットメイクについて
・体位交換について
・清拭の説明
 
<講義の内容>
1. 介護技術のコツについて
 まずはじめに介護技術のコツについての説明が行われた。
1. 足を肩幅に広げ、重心を低くして基礎面積を広くして、肩の力を抜く。
→手の力を抜いてブラブラの状態にする。手に力が入ると、それが利用者に伝わって利用者が緊張する。
2. 利用者と密着し、重心をひとつにして重心の移動をなめらかに行う。
→重心をひとつにしないと、余計な力がかかると同時に、力が入らず移動もうまくいかない。
3. ベットで行うときはベットに膝をつけて重心を移動する。
4. テコの作用を利用する。
5. 急に力を入れない。
6. 常に呼吸をし、息を止めない。
→鼻から吸って口から吐く。
7. 常に利用者をコンパクトにして移動する。
→マヒしている手を利用者に抱えてもらったり、マヒしている足を動く足で支えてもらうなど、小さくなってもらってから動かす。
8. ベルトやズボンをもたない。
→おむつをしているのでそうされると痛い。
9. 常に声をかけて次にすることを説明してから行動する。
→ただし、おむつ替えの時は言わない。「起きる準備をしますからね。」など。
10. 移動する時は、「1、2の3」などのかけ声をかけて行う。
→「よいしょ」や「どっこいしょ」は利用者を傷つけるので言わない。やわらかい印象を与えるようにする。
11. 作業上必要な物品は手の届くところに置いて効率よく行う。
→きれいなものは頭のほうに置き、汚れた物は足下におく。(おむつなどは新聞紙にくるんで置く。)
12. イメージトレーニングを行う。
→今日何をやるかをイメージしておくと仕事がスムーズに流れる。
13. 利用者の信頼を得る。
→傍から利用者の家族が見ている時もあり、評価を下されることもある。仕方のないことと思う。
 
2. ベットメイクについて
 現在は電動のものが主流で、頭、高さ、足下が上がるようになっている。ベットの配置は、マヒの状態や採光によって決める。片側が壁になっているところが多い。ヘルパーが立つ側に健康な側がきていることが多い。マヒ側が奥。
 ベットメイクはまず、自分がやりやすい位置にベットの高さを調節することから始まる。膝がベットにつく位置がいい。利用者が立ち上がるとき(ベットから降りるとき)足をつくと膝が曲がるくらいがいい。
 まずシーツの畳み方からマスターする。シーツは、ベットメイクするときに広げやすいように特殊な畳み方をする。ある一点をベットの中央に合わせて広げると全体にシーツがバランス良く広がる方法。今までやってきた畳み方とはちょっと違って、マスターするのに少し時間がかかる。床につけたり洋服に付けたりしないようにたたむよう注意され、身長によっては結構大変な受講生もいた。
 シーツの畳み方と並行して、ベットメイクの方法も学ぶ。手順は、
1. 体をベットの中央の辺りに位置付ける。
2. 畳んだシーツを中央に置き、シーツを全体に広げる。
3. 自分側の頭の方からシーツをマットレスの下に入れていく。シーツの入れ方は、シーツの端の一点をつまんで、端が垂直に下に垂れるようにして折り畳み、マットレスの間に挟む。
※挟むときは、手の平を下に向けて入れ込む。それはベットとマットレスの間に何が挟まっているかわからないので、手を傷つけないため。
4. 足の方に体を移し、シーツをピンとはり、同じようにシーツをマットレスの間に挟み込む。
5. 反対側の頭のほうに移り、ピンと張ってから同じように挟み込む。
6. 最後に残った角を対角線でギュっと引っ張り、同じように挟み込む。
※片側が壁になっている時にはベットにのってシーツをはる。自分の側をピンと張って伸ばす。
※手でシーツのゴミを払ったりするのは手が汚れていることが多いので、余計に汚すことになるからしてはいけない。
※マットレスなどのゴミはベットブラシで掃いて取る。
※なるべく利用者には車いすなどに乗って移動していてもらう。
※シーツのしまい方は、折り畳んだところの輪になっている部分が自分の方に向くようにしまう。そうすると出すときに出しやすい。
 
3. 体位交換
 休憩をとった後、じょくそうの写真を見る。ただれて目を覆うような写真が多い。受講生から驚きの声がもれる。じょくそうは、体圧のために組織が破壊されて出来る。原因としては、薬を飲んでいるためや、湿気や血液の流れが悪くなっているため、または寝返りが打てないためなどがあげられる。栄養が十分とれていないこともある。ひどくなったら医者に診てもらう必要があり、その指示に従って薬を塗る。薬は患部によって違うので、訪問の看護婦さんに確認しておく必要がある。利用者の言葉をそのまま信じて塗ったりすると間違うことも多い。民間療法も勧めたりしない方がいい。そのために医者の薬を飲まなくなってしまうこともあるから。
 じょくそうを防ぐためにも体位交換が必要である。
 体位交換には、全介助の人を起こす方法と、半身マヒの人を起こす場合などの体を横に傾けて起こす方法がある。
 まずは、半身マヒになってしまったときに一人で起きあがる方法をやってみる。自分の利き手と反対側がマヒになったと仮定して、その時どうやったら起きることが出来るのかをやってみる。まずは三田先生のデモンストレーションを見て、その後自分でやる。
 手順は、
1. まくらを移動し、顔を傾けるとやりやすい。
2. マヒしている手を動く方の手で胸の前で押さえる。
3. 動く方の足をマヒしている足の下に入れて支える。
4. おしりを少しひく。
5. 動く方の手で自分の体を支えながら起きあがる。その時同時に足もベットから下ろす。
6. 動く方のおしりを左右に動かしながら、足がしっかりとつくまでベットの端による。
7. マヒしている足を少し後ろに引いて、その足と動く方の足をそろえて、動く手で支えながら顔を下に向けて立ち上がる。重心は動く方に傾けながら。
 デモのあと実際に一人一人がやってみる。半身が動かないと言っても、つい動かしてしまって、結構簡単に起きあがっている人もいた。その後、出来ることはできるだけ利用者にがんばってもらって、一人では難しい点を援助するという視点から、この場面ではどこで援助するのが望ましいか考えた。
 
 その後、全介助が必要な人(全く自分では動けない)を起きあがらせるための動作を学んだ。全介助の場合、まずは自分の方に利用者を引き寄せてから体を起こす。三田先生のデモンストレーションのあと実際にやってみた。手順は、
1. まず足を開いて立ち、介助の姿勢をつくる。
1. 枕を手前にひく。
1. マヒしている方の手を胸の前で抱えてもらう。
1. マヒしている足の下に動くほうの足を入れ、支える。
1. 肩の下と腰のくびれの辺りの下に腕を入れ、重心を下に下ろすような感じでひっぱる。(おしりをひくような感じ)この時手には力を入れない。体全体で移動させる感じ。
1. 腰のところの手を交換し、一方の手を今度は膝の下に入れ同じように移動させる。
1. もう一度肩の所に腕を入れ、体を密着して自分の側に引き寄せるような感じで起こす。もう一方の手は支えとして利用者の体の外側に置き、体が起きたらその手で足を移動させベットの下に足を置く。
1. 立ち位置を確認し、おしりを動かしながら手前にひいてくる。
1. 動ける方の手に体重をかけて起きあがってもらう。(動けない場合はヘルパーが動かす。)
※利用者を動かす時は二点触りといって、必ず二カ所(両手)で支えるようにする。片手ではだめ。また関節の部分を支える。
※利用者が自分でできることは自分でやってもらうように声をかける。「〜してもらえますか?」また、右左を言うことで、なるべく利用者に頭を使ってもらうことも大切。
※利用者にやってもらうと言っても、必ずそばで見守り何かあったらすぐに動けるようにしておく。
※利用者の状態はその日によって違うので、風邪の日はいつもより多く介助するとか、判断する必要がある。体調によって動作が鈍くなるから。
※移動で大切なのは、自分と利用者の重心をいっしょにすること。その為には体を密着させることが大切。
 
 その後側臥位(横になること)をやった。これは片側のマヒで、一方は動かせる場合にやることが多い。おむつを替えたりするときに横になってもらう。全介助の場合は、横になるのもむずかしい。三田先生のデモンストレーションのあと、2人組みでやってみた。
1. 介助の姿勢になって足を開いて立つ。
2. 頭を少し浮かしてもらって枕を動かす。
3. マヒした手を動かせる手で支えてもらう。
4. 動かせる足でマヒした足を支えてもらう。
5. 肩とおしりのところに手をそえて、自分の方に体を起こす。(横にする)
6. おしりを少し後ろにひいて、少し体がくの字になるようにする。
7. 上に乗っている足の膝を少し手前に出しバランスをとる。
8. おしりの手は離さずに、おしめを替える。
9. 半身マヒの場合この姿勢から体を起こす。
※側臥位をずっと続けるのはよくない。体圧がかかるから。
※おしりに置いた手は離さない。
 
4. 清拭
 清拭については、解説と乾いたタオルで腕を少し拭いてみることをやった。タオルはあついお湯(60℃)で絞ったものを使う。ビニールの手袋をかけ、ビニールの袋に入れてお湯につけておく。(温度をさげないためと、いちいち絞ったりすることで時間がかかるのを防ぐため。全身清拭では5、6本使う。)タオルの畳み方は端が真ん中に来るようにたたむ。端は冷めやすく、肌触りもよくないため。
 拭くときは心臓に向かって拭く。少し力を入れた方が案外気持ちいい。顔はハンドタオルのような柔らかいもので拭く。温度は少し低めにする。特に目頭は目やにがついたりしていてていねいに拭かなければならない。目やには固まっているので、目薬をさしてふやかしたり、顔の他の部分を拭いている時にふやかしてから拭いたりする。座れる場合は座ってもらって拭く方がよい。足は足湯をして、バケツにお湯を入れてそれをゴミ袋に入れ、その中に足をつける。袋の口を締めると温度が下がりにくい。足は綿の軍手で洗う。頭には暖めたタオルをターバンふうにまき、肩にはバスタオルをかけると寒くならない。頭のターバンは頭を拭いてからはずし、すぐに乾いたタオルで拭く。手はベットにビニールを敷いてその上に洗面器をおいてお湯を張り、その中に入れて洗う。石けんはあまり使わず使う場合はベビー石けんを使う。できるだけ入浴サービスを使ってさっぱりしてもらうのがいい。つめは清拭のあとに切ると柔らかくなっている。固いまま切ろうとすると割れることがあるので注意する。親指は特にヤスリを使ってなめらかにする。ひっかかったりすると傷になって化膿したりすることがあるので気を付ける。
 実際に清拭するときは、やんわりと手をもってていねいに拭くこと。
 
<全体を通して・受講生の様子>
 楽しんでやっていたが、実際に人の体を触るということで照れていた。「ヘルパーが照れていたら利用者さんはもっと恥ずかしいのよ。」と三田先生に注意されたりしていた。人の体を動かすことは結構難しく、重心をいっしょにするということがなかなかうまくいかなった。ヘルパーは力の必要な仕事だし、専門的な技術も必要であるということがだんだん見えてきている。
 
 
 
 
 
 







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