家事援助の方法
●2001年11月17日(土)
●講師 河島かずさん(有限会社「老いを共に生きる会」代表 ケアマネージャー)
●講義の流れ
・家事援助の調理について注意すること
栄養素の話・今日作る献立について・食品衛生・食事介助の方法
・バランスを考えた献立で実際調理してみる。
・家事援助の中の洗濯・掃除について注意すること
・調理したものを相手に食べさせたりしながら試食
<講義の内容>
1. ケアマネージャーになった経緯
以前は日赤の看護婦をしていて、姑との関係などから介護の勉強をしようと思った。石橋をたたいて渡るタイプではなく「橋を渡りながら考えるタイプ」なので、介護の世界にすぐに飛び込んでしまった。45歳8ヶ月のこと、その後病院をやめて訪問看護の仕事をしているときに、老夫婦の食事を作ってくれるように頼まれ、3年間一食300円で作り続ける。その後婦人会の講演があったときに、その場にいた主婦年齢の方たちと一緒に給食サービスができれば素晴らしいと考えた。それがきっかけとなり、日本で3番目の給食サービスを開始した。その頃は週2回の配食だったが、毎日やってほしいとの要望があり、現在は自宅で事業者指定をとり、配食サービスをしている。ケアマネージャーの資格が始まったときも、第一回の試験を受けたら合格し、東京都で最高齢の合格者となった。現在は、ケアマネージャーの仕事、ヘルパーの仕事、配食サービスの仕事、介護予防の仕事など、精力的に活躍している。
2. 調理に関することの注意
(1)栄養素の話
三大栄養素とは、たんぱく質、炭水化物、脂肪のことである。たんぱく質は主に体をつくるもので、一日50g〜60gはほしい。たんぱく質を分解するとアミノ酸になる。必須アミノ酸にはおよそ10種類があり、それぞれに働きがある。(資料を見ながらアミノ酸の説明)それぞれのアミノ酸をとるにはバランスのよい食事が大切である。脂肪は避けられがちであるがとる必要がある。脂肪には動物性と植物性のものがあり、それぞれ悪玉コレステロールと善玉コレステロールになる。動物性脂肪は冷えると固まる性質のものであり、血液の中に栄養素を運ぶ働きをしている。多すぎると動脈硬化になってしまう。善玉コレステロールとなる植物性脂肪は、血液の中からいらない栄養素を肝臓に戻す働きをしている。それがうまくいかないと余分な成分が血管の壁に付着したりして病気になってしまう。たんぱく質と炭水化物にはほぼ1gあたり4.4キロカロリー、脂肪は9キロカロリー発生させる。ビタミンは体の調子をよくするための潤滑油のような働きをし、体を円滑に動かすために必要である。食物繊維は体内でビフィズス菌を増殖し、腸内の老廃物を出す働きをしている。無機質もとる必要がある。活性酸素は体に溜め込むとよくない。ビタミンCは一日に50gはとりたい。しみやそばかすを消すにはその10倍くらい必要である。ビタミンEも若返りや動脈硬化の予防に必要である。テレビなどの情報を頭に入れておくといろいろ使える。いろんな栄養素をバランスよくとるには、一日30食とるのが望ましい。また赤、黄、茶、白など、彩りよく食べると栄養素も幅広くとれる。薬などはヨーグルトにまぜて飲ませると飲みやすいようだ。
(2)今日の献立について
白身魚のホイル焼き 大根菜ご飯 ブロッコリーのごまみそマヨネーズかけ キョーザ サツマイモの茶巾絞り きゅうりわかめの酢の物 磯辺もち(いももち) ババロア
今日の献立では、大根の葉にビタミンCがたくさん含まれていて、ブロッコリーにはカルシウムやビタミンCが含まれる。さつまいもはのどに詰まることがあるので、お年よりは自分ではあまり調理しなくなってしまう。茶巾絞りなどでやわらかくして食べさせたい。ババロアなどは流動食として使える。おもちはのどにつまってしまうことが多いので、芋もちで代用したりできる。
(3)食品衛生
O157の事件以来食品衛生についてはかなり神経質にしている。主な食中毒を引き起こす菌としては、腸炎ビブリオ・サルモネラ・病原性大腸菌・ウェルシュ菌、カンピロバスター・黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌などがある。黄色ブドウ球菌は人間が持っている菌で、傷口のある手で食品を触ったりすると感染することがあるので、手袋をしたり、食品を触らないことが大切である。消毒の方法は、逆性石鹸で手を洗ったあと中性洗剤に手をつけるなどする。アルコールを脱脂綿でつけたり、噴射したりすることもある。
(4)食事介護のときの注意
食事の前の体操というのがあり、少し体を動かして体を目覚めさせたほうがいい。口に運ぶときの量に注意し、食べるペースも考える。自分が急いでいるとつい急がせてしまったりするので注意したい。視覚や聴覚、嗅覚を刺激するような食事を用意することも重要である。きざみ食にする場合は、魚だったら、きざんだあとに魚の形に盛り付けるなど、どんなものを食べようとしているのか意識してもらうことを考えている。目の高さを合わせて、無理な体勢で食べさせることのないよう注意したい。のどに詰まってしまうこともあるから。固形物だけではのどに詰まるので、水やゼリーなどで口の中を滑らかにしながら食べてもらうことも大切である。においを発生させないためにも食後の口腔ケアも大切。お年よりはあまり水を取らなくなってしまうので、脱水症状になってしまうことが多く、注意したい。
健康的な生活を送るためのポイントはいくつかあるが、ストレスについては「自分がこなせる分はこなし、それ以外は横に置いておく」気持ちでやっている。思い煩うことがないように「ケセラセラ」の気持ちが大切。
2. 調理実習&試食(受講生の様子)
今日の献立を4つのグループで分担して調理した。受講生の様子は、日ごろの講義ではあまりしゃべることのないようなメンバーもお互いにぎやかにやっていた。あまり調理などしたことのないメンバーなのでたどたどしい場面もあったが、全体的にうまくやっていたようだ。作ったものがほとんど普通食だったので、それほどお年よりのことを意識することなく調理していた。実際にできたものはご飯が硬くてお年より向きではなかった。また、サツマイモの茶巾絞りは皮が入ってしまったり、硬いままのところがあったことを指摘された。それ以外は簡単な割においしく、芋もち(磯辺焼)は大好評だった。お互いに食べさせてみる揚面では、口に運ぶ量が思ったより少なくしなければならず、自分が食べるときとは勝手が違う様子だった。
3. 洗濯について
一番時間がかかるので、利用者の家に伺って初めにすることが多い。今はいろんな洗濯機があって、使い方に困ることもあるので、家電やなどにいって観察して、店員に売れ筋を聞いたり操作方法を聞いたりするといい。粉の洗剤と液体の洗剤があるので、それぞれの家の方法に従ってやる。洗濯機で洗えるものかどうかの確認も大切。迷った揚合は表示を確認する。実際自分の家にあるものを見てどんなものが洗濯機で洗えるのか確認しておくといい。ネットを使うかどうかも利用者にきく。洗濯物を干す場所や干し方も、たたみ方も利用者に確認する。利用者本位の姿勢を忘れない。
4. 掃除について
掃除の仕方はヘルパーの業者によっても違い、丁寧なところ雑なところあるが、自分はしっかりときれいにするんだ、という気持ちが大切。何かを落として割ったりした場合は素直に謝り、業者によっては保証制度があるところもあるので相談する。掃除は介護保険では本人が使っている部屋のみとなっているが、時給が高いので庭の手入れやガラス拭きまでもやったほうがいいという人もいる。それは判断にまかせる。ゴミだしはいろいろと問題があり、市の方で対策を検討中。汚くて気になるようなところは、普段の掃除を簡単にしてそこをその日は集中してやるなど工夫が必要。
5. 温度・湿度の管理について
老人は温度などについてあまり敏感でないので、ヘルパーのほうが体感で覚えておいて、湿気などについても気を配る必要がある。温度は22℃〜18℃、湿度は60%ぐらいがちょうどいい。
6. 現在の仕事について
ヘルパーとして一番大切にしていることは、「相手の気持ちになってみること。」自分がどうしたいかでなく、自分だったらどうされたいかを基準に考える。そうすると面倒くさい気持ちや嫌な気持ちもなくなる。相性が悪い人とあっても、めげることなく相手が心開いてくれるように和ますなど工夫が必要。前回の露木先生の講義にあった「響き合い」が、まさしく重要である。
配食サービスは東京都の助成金を受けてやっているが、助成金はけずられつつあって大変。他の業者がぞくぞく参入しているので、ボランティアサービスは止めたほうがいいと言われたこともある。でも保健婦さんには「河島さんのところが一番おいしい」と言われている。」
7. 受講生からの質問
Q.時間内で買い物までしなければならないのか。
A.時間内に買い物も済ます。人によっては少しでも安いところで買おうとするので、店を回るのも大変。時間が足りない。自分はよく時間オーバーしている。
<受講生の様子>
調理はみんな楽しんでやっていたようだ。手を抜くこともなく、悪戦苦闘している様子が伺えた。出来栄えについても満足いくものになった。しかし、彼らは日常的に調理したり掃除したりすることは少なく、またあまり栄養や洗い方など意識せずに行っていることも多いのでどれだけ身近に考えることができたのかはわからない。受講生の関係が近づいたのは確かでよかったと思う。
<全体を通して>
今回の講義は、調理や掃除洗濯など、実際にやってみないと学べないことが多かった。でも、日常的にやっていれば、あえて勉強しなくても身に付くことでもある。3級のメインである家事援助は、主婦など日常的にやっている人にとってはそう難しくないかもしれないが、今回の受講生のように日頃の経験がないと難しいようにも思った。74才にも関わらずバリバリと活躍している河島さんのすごさには圧倒され、感じたものは多かったのではないだろうか。もしかして受講生よりずっとエネルギッシュ!?講師にきてくださる方が常におっしゃることが「相手の気持ちになってみる」「相手の意向にどこまでも従う」ということ。そのことに関しては、かなり根付いてきているのではないだろうか。残り少ない講義をますます充実したものにしてきたい。
感想 「家事援助の方法」
M.Y 今日は家事援助の方法ということだったが、あまりその内容をつかむことができなかった。それは料理を作るのに、集中していたからだ。ただ河島さんの話を聞いていると介護というものの大変さをつくづく感じることができたような気がする。しかしそれだけやりがいのあるしごとなのだと感じた。料理はうまかった。
I.T 今回は食事介助と言うことで老人が食べやすい料理をやりまして、僕はさつまいもの茶きん絞りときゅうりとワカメの酢の物を作りました。Kちゃんと。まずは、きゅうりを切っていました。しばらく切っていて、交代でさつまいもを潰しをしていました。これがほんとに大変でした。腕が疲れました。だけどものすごくおいしかったです。
T.Y 今日は家事援助の学習のため食事をつくった。終わった後に思ったのだが、例えば今日作ったメニューを一人分しかも食べやすいものを作るとなるとかなり大変なのではないかと思った。それとたべさせるのは予想以上に急がせたくなる。相手のペースに合わせなければいけないのに、ついつい急がせてしまいそうだ。大丈夫だろうか?
I.H ボランティア活動をしている河島さんの体験を聞いた。河島さんは昭和55年ぐらいからずっとこの仕事を続けているらしい。凄いと思った。よくやるなと感心しながら聞いていた。ヘルパーで介護の時の注意みたいなのを聞いたが、それはその家にはその家のやり方があるらしくひとりひとりにあった接し方をしなくちゃいけないことを言っていた。それに壊したものは保険が出るみたいなのだ。介護するには2時間という時間が限られていてこの短い間に買い物、洗濯等をやると言っていた。やっぱり自分が相手だったらどうしてほしいかを最初に考えてから仕事にかかると言う。こういう仕事は本当に自分は2番目っていうふうに考えないとできないと思った。これから介護という仕事をやったりするかもしれないけどなんとなく不安な気がした。
I.K ごはんが凄くおいしかった。あんなにおいしいごはんが届けてもらえたらおじいちゃんやおばあちゃんはうれしいだろうな。ごはんを食べて元気になる。いいことだ。パワフルな方だなと思いました。老人の方へごはんを届けるといってたけどあの講師の方もきっと年は近いですよね。そんな方でも、元気に毎日ごはんを作り、届けているそのパワーはぜひたくさんの方に受け継いでほしいと思います。
H.Y 今日は料理をしながら、学ぶことができました。もともと料理がすきな私は、とても楽しくできました。またこういう機会ができるといいと思う。勉強になりました。
A.Y 食べることは生きること。健康であることと大きなつながりを持っているのだと再認識しました。食欲があるからこそ元気な生活もおくることができるのだろう。自分が食べたいものを自分で買ってきて、作れることがベストだが、それができなくなってしまった時ヘルパーが自分の健康を保つのに必要となる。河島さんの自分が相手の立場であったら、どうして欲しいかを考えると言うヘルパーの心得こそヘルパーと利用者が気持ちのよい関係を作っていくのに大事なことだと思う。介護支援として配食サービスなどこれまでボランティアとして永年続けてきた河島さんの一言一言に経験と重み、そしてパワーをもらった気がした。食事の献立づくりから清掃の仕方、洗濯どれも自分が生きていく上で必要となる力である。自分の健康を維持することさえ忙しくなればいいかげんになりがちな私生活だが、少なくとも食については絶対大切にしなくてはと肝に命じました。好き嫌いは老いとともに増加するのだろうか?嫌いなものを食事の献立に入れないように配慮するのかを聞いてみたかった。祖父は魚も豆腐も嫌いなのだが、ヘルパーさんは入ったメニューで作っている。祖父が言ってないのかもしれない。
M.K 河島さんのパワーに圧倒されました。疲れて、やめてしまいたいと思うことはないのだろうか?ストレスの対処法は自分のできる範囲のことをやって、他は横に置いておくようにするとか、思い悩まず「ケセラセラ」の気持ちでということだったが、私なんかはそれがあまりうまくできない。河島さんのパワーの秘けつをもっと聞きたかった。また栄養に関する知識はさすがで年令を感じさせない知識量と解説に感心しました。話の中で印象に残ったのは「家事援助」は毎日の暮らしの中にいろんなヒントがあるということ。ちょっとした暮らしの知恵が役立つことが分かりました。例えば、栄養に関する知識はテレビ番組から得られるものも多いし、日頃役立つ情報を集めた番組もよくあります。また家電屋さんで洗濯機など最新情報を集めたりするとか有効だということでした。そういうアンテナを張り巡らせている河島さんはやっぱり凄い。
T・N 今日は、反省しなくちゃいけないです。自分勝手な態度を取ってしまいました。(みんなががんばっているのに)いくらつらい状況でもそれを表にだして他の人の迷惑になってしまうようなことは、してはいけないことです・・・。自分のことも、まわりのこともみえなくて、わからなくて、人に言われて気付くなんて・・・最低ですね。もっと大人にならなくちゃ、もっともっと、頑張らなくては、いけないと改めて考えました。今まで何をやってきたんでしょ・・・また最初からやりなおします。(意識改革)何かを待っているのではなく自分からやらなくてはダメなんです!だれかに頼っていては、ダメ、自分の力でやらなくては、仕事なんてできないんです!まだ答えが出るまで時間がかかるだろうし、大変だと思いますが・・・口先だけの人にはなりたくないデス!!本当にみなさんの気を悪くしてしまうようなことをしてしまって申し訳ありません。これからは気持ちをきりかえて頑張っていきます。
今回は、調理をして、楽しかったです。色々やることがあってヘルパーは本当に大変な仕事なんだと思いました。後半の講義に入ってきて、ここからが本番!って感じです・・・がんばらないと・・・マジに。
自分がとった態度を反省して、自分が同じことをされたらスゴイショックですよね。だからこれからは気をつけます。ちゃんと相手を考えて行動しなくちゃ・・・。(ああ、本当、河島先生ごめんなさい)今日イチバン学んだことです。
補講「実際に介護食を作る。」(12月1日)
U.A 私は家事援助の回を休んでしまったので、補講として料理(酢の物+きざみ1品)を作ってきました。普段から割と料理は好きなので、楽にできる課題でした。しかし、いざ人に食べてもらうものを作ろうとすると緊張しますね。酢の物の味は、一応資料を参考にしつつ、ちゃんと大さじ小さじで加減しました。
きざみは・・・実は家の夕食用のものをきざんだのですが、好評をいただけてうれしかった。栄養分的には自信のある煮物です。栄養学(いわゆる栄養士さんのカロリー計算とか)は勉強したことはないのですが、今現在、私は「薬餌」という、中国の医学思想に基づいた食事での養生漢方薬の取り入れ方など勉強していまして、そんな技術もいつか役に立てばいいなあと思っています。人に出せるものを作っている人の料理を間近で見られるという点でも、料理の会に出られなかったことが悔やまれます。
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