日本財団 図書館


障害者(児)福祉の制度とサービス
 
●2001年10月6日(土)
●講師 萩原勤也さん(三鷹市役所健康福祉部地域福祉課相談係長)
●全体の流れ
・クイズ形式での前回の振り返り
・市役所で行われる障害者福祉の仕事の説明
・障害の種類についての説明
・受講生からの質問と、その応答を通じての制度・サービスの説明
 
 
 
クイズ形式での前回の振り返り
 前回の講座「高齢者福祉の制度とサービス」の内容を、スタッフから出題されるクイズを答える形式で思い出していく。質問は(1)「65歳以上の高齢者が14%以上の現在は何社会と呼ばれているか。」(高齢社会)(2)「2000年4月から始まった保健・医療・福祉サービスを総合的に受けられる仕組みを何と言うか」(介護保険)(3)「ホームヘルパーを5年後までに35万人程度まで増やすことを盛り込んだ高齢者福祉計画を何と言うか」(ゴールドプラン)(4)「介護保険料を納めなければならない年齢と介護を受けられる年齢は?」(40歳以上が納め、65歳以上が受けることができる。ただし、場合によっては、65歳未満でも受けることができる。)(1)だけは全員が不正解だったが、あとはほとんどの質問に答えることができた。
 
<講義の内容>
1. 市役所での障害者福祉の仕事について
 講師の萩原さんは、三鷹市役所で、建設部での市道の管理、生活保護の仕事、高齢者のケースワーカーを経て、現在では健康福祉部に勤務する。健康福祉部には、地域福祉課と高齢者福祉課があり、地域福祉課が障害者を対象にサービス行っている。三鷹市では市を4つに区分し、4人のケースワーカーがそれぞれ担当した地域で障害者の個別相談を行っており、萩原さんもその1人。また、障害者福祉係では、三鷹市内の中学校を会場に、障害者運動会や市の施設を利用しての障害者水泳大会を企画している。
 
2. 障害の種類について
 障害には、身体障害・知的障害・精神障害の種類がある。身体障害とは、視覚、聴覚、音声・言語、肢体に関する障害で、心臓、腎臓、呼吸器、膀胱、直腸、小腸、免疫などの内部障害もこれにあてはまる。知的障害とは、知的機能の障害が発達期に現れ、日常生活に支障が生じているため、何らかの援助を必要とする状態のこと。精神障害とは、精神分裂病、精神作用物質による急性中毒またはその依存症、知的障害、精神障害病質その他精神疾患を有するものを言う。三鷹市の統計を見ると、近年いずれも増加傾向であることがわかるが、特に60歳以上で身体障害を持つ方の数は極端に高い。
 
3. 受講生からの質問と、それを受けての制度・サービスの説明
Q.障害者手帳を発行しているのはどこですか。
A.三鷹市では、10歳未満の子どもに関しては、杉並の児童相談所が発行している。それ以上の方については、それぞれから提出された申請書と指定医師からの診断書を新宿にある東京都心身障害福祉センターに送り、そこで障害の重度・等級などを判定してもらう。その後三鷹市に返答してもらい、ケースワーカーを通じて申請者に発行される。
Q.障害を持った方が手帳を持っていることで優遇されることってどんなことですか。
A.JRなど交通機関の料金の割引、公共料金の減免など。
Q.自閉症とはどういう症状のことを言うのですか。
A.人間関係が希薄で、コミュニケーションが不足してしまう、またひとつのことに強いこだわりを持つことなどがその特徴。
Q.どうしていけば障害者の暮らしやすい社会になるのですか。
A.障害への考えには隔離の風潮があり、特に精神障害については強かった。昭和59年の宇都宮病院事件での看護者による患者の虐待死は大きな問題となり、以後精神保健法の制定などによって、その基本的な考え方は社会復帰の方向へと転換していった。個人的には現状はまだ過ごし易いとは言い切れない。だが、平成6年のハートビル法や昨年の交通バリア法などが生まれ、動き出したばかりではあるが前進していると思う。
Q.障害を持った方にホームヘルパーはつくのですか。
A.高齢者の場合と同様に派遣される。身体障害の場合は重度、知的障害の場合は重、軽度ともに市役所の管轄によって派遣される。精神障害の場合は、保健所つまり東京都の管轄だが、来年4月から手帳発行やホームヘルプなどのサービスが市の管轄に移行される。また障害者の社会参加を意図したガイドヘルプサービスというものも行われている。ホームヘルプサービスではまかないきれない、利用者の余暇に付き添うサービスで、一緒に映画を観たり喫茶店に行ったりする。18歳以上と年齢制限がある。ボランティア性の強い仕事である。
 
<全体を通して・受講生の様子>
 受講生の多くが講義形式で話を聞くことに不慣れな子どもたちのため、途中集中力が切れてしまうことも何度かあったが、前半の講義を聞いて質問や感想を話し合う場面では、意見交換も活発に行われていた。日常とは少し違う、学ぶ場なんだという気持ちが、こうした参加につながっているように思う。
 講師の方への質問や感想の内容を見てみると、障害の問題の本質的なことに触れるような意見が多く、子ども達の“社会的に弱い立場に置かれている人の問題”への関心の高さを感じる。
 
 
 
 
 
感想 「障害者(児)福祉の制度とサービス」
M.Y 障害という言葉にあまり目を向けようとしない僕が、なんだか真剣に障害者という言葉を考えさせられた。なにをもって障害者となるのか?それはとても難しい問題だ。本人がどのような気持ちでいるのか、どの程度生活支障があるのか?そういうものによって、線引きは難しくなっていると思う。障害を持っている方を理解するためにはそういうことが大切なのだろう。これからも障害とは何かを考えていきたいと思う。
 
I.A 障害の種類や市役所のことなどがよくわかった。講師の先生も細かいところまで説明してくれて、とてもわかりやすく、内容の濃い講座だったと思う。
 
A.T 今回の講義は前回に比べて、話がわかりやすかった。障害者手帳をもっていると税金が免除になったり、乗り物の料金が割引にされることを知った。日本はまだバリアフリーが遅れていると思う。だから一人一人が理解する必要があると思う。
 
T.Y 障害者へのサービスと制度は、生きるためのものばかりでなく、健常者がやっているような楽しんだりするための制度やサービスが足りていないんじゃないかと思った。それはまだまだ、障害者が弱者として扱われているせいなのかもしれないなぁと思った。障害者が楽しんだり、健常者と同じことが出来るような制度・サービスができればいいなと思った。
 
H.Y 今日はいろいろなサービスを聞けて、ためにもなりました。これからもヘルパーについて、もっともっと知りたいな。
 
K.T いやー、あんまり覚えてないんだよね。本当に反省しなきゃ。
 
I.H 今日の講義はわかりやすかったっていえば、わかりやすくてわかったことがいくつかあった。障害の種類はなにげに多くて、大きく3つに分かれている。ひとつは身体障害、次に知的障害、そして精神障害だった。ひとつひとつの障害には、いろいろあるのにびっくりした。精神障害は最近出来たばかりの障害だったのがわかった。しかも手帳制度があり、その制度は障害者の人が手帳を持ち、JRやバスなど交通機関に関する乗り物が半額になったり、ただにするというものだ。手帳の中身は写真、どんな障害か、いつ障害の手帳を取ったかなど細かく載っている。まだまだ、障害者には過ごしにくい状況だと市役所の人がいっていた。去年から交通バリアフリーが出来たといっていたが、何か制度を作るのが遅い気がした。改めて考えると、いろいろ改善しないといけないところがあると思う。駅とか見ると車いすのスペースがなかったり、そのあたりの道でも段差があったりしている。言葉は悪いが健常者と障害者の差別が見えないところでまだまだあるし、なくすことは難しいけど、出来るだけない社会にしていった方がいいと思った。
 
M.K 障害者への偏見の問題について真剣に考えなければならないと思った。私は以前心身障害児学級の介助員をしていたことがあり、知的障害の子どもたちと関わっていたのだが、そのとき一番強く感じたことが、「健常の子どもと何も変わらない」ということだった。でも私がその仕事に就かなければ、ずっと障害者に対する特別感のような思いは消えなかったように思う。
 受験生たちに聞いてみると、やはり触れ合うことの多かった人はその特別感をなくすことができたが、触れ合うことがなかった人からはどう向き合っていいかとまどうというような話が聞かれた。子どもの頃から、もっと障害のある子もない子も一緒に過ごす経験が多ければ、障害のある人に対する見方もずいぶん変わるだろうと思う。学校の外でも障害のある子もない子も自然に一緒に居られる場所をつくっていきたい。あと、精神障害者に対する偏見はまだまだ強く、家族が隠そうとしてしまったりする。悲しいことだ。精神病に対する世の中の意識変革もとても重要なことだと思う。
 
S.S 「障害者」という言葉を聞くと、その人自体が「障害」という感じがして、どうしてもよい印象がもてない。だから行政の方が、「障害者の問題は人権の問題だ」と言っているのを聞いて少々安心した。いつ自分も「障害者」になるかわからない。けがかもしれないし、病気かもしれない、事故かもしれない。いずれにしても、自分の体が不自由になる危険性はごく身近だ。そう思うと「障害者」というくくりではなく「人権」という見方の問題で「障害者問題」を考えてほしいと強く思う。こういう書き方をしている自分は「障害」をまだまだ他人事のようにとらえている気もして、情けなくなるが・・・。
 
I.T 今回の講義はとてもきつかったです。なぜならばぼくはああいうのはどうも苦手です。じっとしているというのが、きつかったです。前半は何とか聞けましたが、後半はもうほとんど聞けませんでした。もう後半は自分でも何しているのかわからない行動をしていました。でも後半聞き逃したのがおしいと思いました。でもこういうのが続くとちょっとまずいかな。
 
I.K 今回の講義は前回より眠くならなかった。それはきっとはばたけ(ボランティアに行っている作業所)の方など身近な人と重ねて物事が聞けたからだと思う。でも眠かった。やっぱ小難しい話は苦手。でも乗り越えられたらなお良し。それにしても障害者手帳はけっこう便利だと改めて思う。いろんな面で安くなるし、TDLでは乗り物も優先で並ばず乗れるって言ってた気がする。確か確か。いちおう、そういうハンデを持っている人への出来る限りのサービスだよね。たぶん。日本もなかなかと思える講座でした。
 
T.N 今回は障害者のことだった。高齢者の福祉よりも親近感があった。周りには精神障害の人や自閉症、ダウン症の人がいるからだと思う。障害者の問題って高齢者より難しいことだと考えている、だからなのかわからないけど、講義の中身が深いというか濃いなぁという風に感じた。私は障害者に対する必要以上な特別な扱いがあると思う。あと差別、わからないから知らないから街でも無視をする人が多い。助けをもとめても知らん顔というのが障害を持っている人にとって一番困ることだしイヤなことだと思う。
 私は親が二人とも精神障害者の作業所のスタッフをしているためいろいろと感じたり考えたりするのだと思っている。ただ最近その障害者(通所メンバー)に対してすごい差別的な気持ちがあると気づいた・・・どうしても一歩引いて、接してしまう、その人たちを知らない方がよかったなんて考えている、家の中にはどうしても作業所のこと、メンバーのことがある。その雰囲気がダメなんだ落ち着かないんだ。それがメンバーに対して差別する理由なのかもしれない、しかし高齢者の方に接するのも難しいが障害のある人に接する方が難しいと感じている。それぞれ問題は違っても、考えていかなくてはいけない。自分の問題として。
 
K.T 今日の話はわかりやすかった。20〜30代の知的障害者が多いということだったがなぜだろう。しかし、風邪気味ということもあり体調も悪かった。体調を整えてから、講義を受けるべきである。次は頑張ろう。障害者の人格という難しいテーマ、誰かが言っていたが口に出しただけで差別的なニュアンスをもってしまいそうな難しいテーマ、考えさせられた。答えはでないが、興味は持たされた。
 
U.A 今回は、あまり私の身近にない障害者の方の福祉やサービスがテーマでした。なので、荻原さんのお話も、基本的な障害者の捉え方や種類や統計などでしたが、講座中は少し物足りない感じがしたものの、なかなかわかりやすかったと思います。同時に、疑問や、皆で話し合ってみたいこともたくさん出てきました。施設、住宅でのサービスの現状や、質問も出ましたが、「障害者の人にヘルパーはつくのか?」ということも、いろいろ話し合ってみたいです。日々のニュースで「おくれている」としょっちゅう報道される教育(普通学級での教育)、雇用(雇用先が希少、セクハラなど人権問題)なども知りたい・・・。高齢者福祉とも通じるのは、「障害者や高齢者の人が暮らしやすい所は、きっと(一応)健康な人も暮らしやすい所である」ということではないでしょうか?ある人が、「障害者なんて人の税金使ってやってるんだから、それなりにするべきだ」と言っているのを聞いたことがあります。果はそんなに自分の力だけで生きているのでしょうか?心臓は動かそうと思って動かしているわけではないでしょう。そもそも、皆どこかしらに障害を持っているように思います。それが表に出るか、運よく出ないかのような気が・・・。
 
A.Y 日頃から障害者と健常者が混じる場をみていて、子ども時代に出逢っておくことが一番大事なことのように感じる。車いすを押すことから、一緒にゲームをするために特別なルールをつくることまで相手の立場に立とうとする。相手の気持ちを知ろうとする経験になるのだと思う。子ども同士が、サポートしてほしいことを考えたり、聞いたり、コミュニケーションしていくことができる。障害が、単なるひとつの個性とみることも、できるのかもしれない。しかし障害があろうがなかろうが、誰もが人間らしく生きる権利をもっている。だが、現実はまだまだ差別というか、障害者=お荷物という社会のように思うこともある。
 障害者が、社会で自立していくためにも、老人が自立して生きていくためにも、必要なサービスを十分に受けることができるはずなのに、それが機能していない。家族に、障害をもった人がいても、ひとり一人が自分らしい生き方をすることができるために、家の中から地域社会に出ていくこと。そのためには、どんな課題があるのか。障害者の声を聞いたり、その家族の声を聞きたい。
 
N.A ほどほどに頑張ろう・・・。
 
T.M 感想交流の時間が多くて講義があまり聞けなかった。感想交流は感想交流で必要だけど、肝心な中身が聞けなくなってしまうのは、ホントにこれでいいのか(ラッキーなのか)なぁと思った。テストとかあったらすごく大変。ただ制度やサービスを勉強するなら1回だけの講義ではダメだと思う。座って頭を動かすだけだとその時は聞いていてもそのうち忘れてしまうから、体も使って覚えていかないとと思った。(実技とかボランティアをしていてとか実際に自分が必要にせまられないと一度には入っていかない)それから障害者(児)がくらしていくにはまだまだ日本は難しい状況にあるという話もやっぱりというか、欠陥人間のように見る人が多いんだろうなぁと思ってしまった。そういう私も正直言ってどう関わっていいのかわからなかったりする。
 
 
 
 
 
 
 
 







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION