高齢者福祉の制度とサービス
●2001年9月22日(土)
● 講師 小関潤一さん(三鷹市役所健康福祉部高齢者福祉課)
● 全体の流れ
・三鷹市役所内の仕事の説明
・高齢社会を迎えた現在の日本の状況についての説明
・三鷹市の高齢者福祉サービスについての説明
・質問&感想交流(グループ討議)
<講義の内容>
1. 三鷹市役所の仕事
三鷹の市役所では福祉職の職員はつまり、地方公務員になるわけだけれど、1200人ほどいる。一般事務が590人、保育士が200人、他に給食調理、土木技術、用務員、栄養士、建築、ゴミ収集、保健婦、幼稚園、看護婦など。毎年、募集は減っている。少し前だと、一定程度の募集はあったが、補充するよりは減らす方向が強い。もう少しすれば採用状況は変わると思うが。
2. 高齢社会を迎えて
高齢者福祉については、まず言葉の使い方だが、老人というのは老いた人というイメージがあってよくないという風潮になってきている。最近では、高齢者という呼び方に変わってきている。今はいろんな役所の名前などもその入れ替えの過渡期にあるようだ。高齢者といっても個人差が大きく、70歳を過ぎても元気な人とがいれば、50歳くらいでくたびれてしまっている人もいる。でも、世界的に見ても65歳からが高齢者だと言われている。しかし、老人医療は70歳からだし、シルバーパスも70歳からと、ばらつきもある。高齢者人口が総人口の7%以上になると高齢者化社会と言われる。日本は14%以上で高齢社会といわれている。その移行は、例えばイギリスの場合だと100年くらいかかったのだけれど、日本の場合は24年で進み具合が早い。だから、社会の制度が追いついていない現状がある。あと14年後には4人に1人が高齢者の超高齢化社会になる。その原因は、医療技術の進歩や公衆衛生、生活水準の向上が考えられる。特に女の人は寿命が延びている。4分の3のヘルパー先が女性になっている。お年寄りが増えるのと同時に、少子化も進んでいる、少子高齢化だといわれている。ほとんど3世代では住まず、核家族が増加している。それとともに高齢者の単身世帯も増加している。寝たきりや、痴呆、痴呆はボケとも言うが、物忘れとは異なり脳の障害で、判断、理解、記憶力が落ちてしまうのだけれども、75歳を過ぎると増えてくる。85歳では、4人に1人の割合で介護が必要だし、長期化するケースが多い。介護するのはお嫁さんであったり、妻であったり、高齢者が高齢者を介護するケースもある。身内が介護することが90%で、そのうち女性が85パーセントを占めている。世帯は別居しているのに、家族で介護する状況。日本は高齢社会で核家族化が進んでいるのにも関わらず、介護を必要とする人は増え、介護者は家族、身内という現状になっている。
3. 高齢者福祉制度の歩み
高齢者福祉制度の歩みを見ていくと、1963年に老人福祉法ができ、もっとも利用されているサービスであるホームヘルプ、デイサービス、福祉用具のレンタルなど基本的な枠組みができた。介護する側の負担が軽くなった。その後、ゴールドプラン21では、ホームヘルパーの拡充、在宅介護が無理であったり、寝たきりになったりした人が入所して、専門的なリハビリ、介護を行っている。
4. 質問・感想交流
・ 介護保険についての勉強会もおもしろいかもと思った。
・ 痴呆の人が多いことを知って驚いた。
Q.ヘルパーの待遇はどうなのか。
A.3級の場合平均時給は、1,160円。2級の場合は、1,235円
Q.介護保険適用の施設の整備が追いつかないということだが、優先的に受けられる基準はあるのか。
A.なるべく入所できるように、平成16年までには36万人が入れるようにする国の計画がある。現在三鷹市では15%の人が介護保険の適用を受け、85%の人が利用することなく暮らしている。それだけ元気な人が多いということだ。
Q.実際には低所得のため、お金がなくて受けられない人もいるのではないか。
A.低所得の人には14年までの無料サービスがある。
Q.日本の福祉レベルはどのくらいなのか。
A.スウェーデンは税金がたくさん徴収されて福祉に回される。アメリカでは民間の自助努力に任せている部分が大きい。日本の保険方式はその中間のようなもの。税金ではまかないきれなくなったため、この制度が生まれた。
Q.介護保険に対する世の中の反応はどうか。
A.高齢者は自分の不満をあまり表にださない傾向があり、まだ現場の声はそれほどあがっていない。これからもっと出てくるだろう。また3年ごとの見直しが決まっている。
講師総評
ヘルパーの他にも社会福祉の仕事はたくさんあり、今回の講座がそれらに出会うきっかけとなればいいのではないか。内容としては大学専門学校のレベルなので、よくがんばったと思う。
<全体を通して・受講生の様子>
全体的に参加者にとっては自分の身近な問題として考えにくいこともあって、講師の方が「できるだけわかりやすくしよう」と話してくださった内容でも、少し頭に入りにくかったようだ。しかし感想交流では鋭い意見も多く、疑問も多く出た。介護保険の問題は普段自分には関係のないものとして意識することもあまりない受講生だったが、今回の講座で介護や福祉を充実させることとお金の問題に関心をもった人もいた。社会への関心が開かれ始めた講座だった。
感想 「高齢者福祉の制度とサービス」
T.M まずいろいろな種類の制度とサービスがあることにびっくりしました。つい最近まで老人ホームぐらいしか知らなかったので、(でもこういう人結構多いんじゃないでしょうか?)一度だけではとうてい覚えられません!なので、もっと詳しく知りたいと思い「社会福祉の知識」も読んだのですが、なんだかよくわかったような、わからなかったような気がします。=もっと時間をかけないとはっきり見えてこないのだと思います。またいちいちつっこんでいったらきりがない気もしますが、実際問題として読んでいて疑問に思ったところがあったので、その事を中心に書きたいと思います。
今年の3月になくなった母方の祖母の話なのですが、祖母は精神障害者の50ぐらいになる息子と静岡で二人暮らしをしていました。10年前に祖母の方は亡くなっていて、2.3年前に祖母は庭で草取りをしているとき腰を痛め、それ以来立って歩けなくなってしまったのです。歩くときはいつもはって懸命にはいはいしていました。大切な足を失ってからは、外にも出なくなってしまい、体を動かせなくなったのと同時に、痴呆も始まり、本格的に介護が必要な状態となってしまいました。
要介護認定を受けたのは去年のことで早々?と問題がおきました。審査の結果は「要支援」だったのですが、実際ヘルパーさんが来てみれば、歩けないわ、食事は作れないわ、お風呂にも入れないわで本当の介護度は「要支援」ではなく「要介護2」なのではないかということでした。(ケアマネージャーさんから大変なことになったと連絡が来ました。)まあ、ものすごく大問題が起こったというわけではないと思うのですが、こういうミスはよくあることなのでしょうか?祖母の状態を一番わかっているのは祖母ですが、祖母の状態を冷静かつ客観的にわかって話せるのは私の母親しかいません。他に家族はいないし、いくら遠く離れているからといって(埼玉と静岡)母が(私の)いないところで決めるというのは疑問です。電話くらいくれてもねえーいい気がするんですが・・・。祖母も祖母でけして頑固な人でもないのに介護のことになるとガチガチの石頭になってしまい「そういうものは受けない!行かない!おまけに話は聞かない!」の3点ばりで困ってしまったものでした。(母が)だから調査員の人にホントはできもしないことをできるできると答えてしまったんでしょう。調査員の人も立って歩くことのできない祖母を「立てる!」と言わせる前にちゃんと立てるかどうか確認してほしかったです。立てない人が立てると判断されてしまったのは、やはりおかしいと思うからです。さっきも書いたように、大問題がおきたとは思っていないのですが、本(社会福祉の知識)を読む限りではもっと詳しく調べるようなことが書いてあったので、不思議に思って書きました。
その後、再審議をし、祖母の家にはヘルパーさんが来ていましたが、祖母は数ヶ月もしない間に亡くなりました。ホントは寂しそうだったので、もっとデイサービスやデイケアもあると母が伝えたかったのですが、それが伝わらないまま亡くなってしまいました。でも最初はヘルパーさんのことに対して批判的だった祖母もやっぱり来てくれると助かるし、嬉しかったみたいで良かったです。祖母には伝えることができなかったけれど、1人になってしまった精神障害のおじさんや父方のずっと一人で暮らしてきた祖母には伝えていこうと思います。彼らの方がきっと母方の祖母より寂しい思いをずっとしてきたと思うから、ぜひ同じような悩みを抱えている人たちと出会って交流してほしいと思います。
N.A とにかくやるしかない!!以上
I.H 普段、高齢者について考えたり、高齢者に対する情報が入ってきたりしないから、今日は勉強になったと思う。その勉強になったことは、年々高齢者が増えてきているということだ。その理由に医療技術が進歩してきて治らない病気も治せるようになったためと言っていた。理由を知ったときは意外だなと思った。後は、介護者の年齢が年輩の人が多いことに気が付いた。高齢者を介護する人が高齢者という事実で、結構、社会問題に近いものがあると思う。しかも、親族の同居している人が介護者になっているっていうことになっている。もっと、社会にこの高齢者の問題を出すことが必要だと思う。だんだん若い介護者が少なくなってきている。後は、高齢者とふれあったり、学校などで勉強する機会をもうけたりしてほしいと思う。
A.T 今回は話しが難しくて、良く理解できないところが多かった。現在、高齢者の占める割合が大きくなってくるんじゃないかと思った。自分が老人になったときのことを考えると、ちゃんとサービスが受けられるのか心配になってくる。
M.K 超高齢化社会っていったいどんな社会なのだろうか。その社会がやってくる2050年には私もすっかり老人な訳だが、果たして私達の世代はそこまで生き抜く体力があるのだろうか。むしろ今のお年寄りより早死にしそうな気もする。医学の進歩というのは元々の土台がひ弱な人たちをも長生きさせられるものなのか。はっきり言って親の70代80代は想像できるが、自分の老後は想像できない。介護される日々がやはり来るのだろうか・・・。3人に1人が65歳以上なんて、よく考えてみたら今とは異なる世界である。街中に腰の曲がった人や髪が白く薄い人ばかりである。世の中のトーンが落ち着いてのんびりしてて、せかせかする人の方が逆に目立ってしまうのかもしれない。それはそれで働き過ぎの人種にはいいのかも。なんて言っている場合でもなくて、どうやら老後をおだやかに心安らかに暮らすのもなかなかムズかしいようなのである。介護する側もされる側ももちろん高齢者同士になっちゃったりするんだろうし、介護用品だってずいぶんお金がかかるんだろうし、介護保険だってお金が必要だし。今のうちから貯金をしなければならないんじゃないの?もしかして。はっきり言ってあまり考えたくない老後のことだけど、やっぱり最後は安らかに暮らしたい。だから今からしっかりと目を向けるべきことなんだろうな、と思った。
I.A 今までは特に日本の高齢化に対して興味はなかったけど、今回の講義で知らなかったことがわかってよかった。1番考えさせられたのが、介護などの高齢者用サービスについてで、前まで考えていた以上のお金が必要ということがわかって、サービスを受けたくてもうけられない人がたくさんいるということがよくわかった。
H.Y 今日は、なんといったらわからないけど、う〜ん・・・なんとなあ〜くって感じにはなしをきいていた。ほんとにただなんとなく。あと、3きゅうにはいったいなにができるのか・・・それがわかったのでよかったとおもいます。
I.K 今回の講座の反省は講座の途中で寝てしまいそうになったこと。話が難しくてすごーっく眠かった。でもあとになってから三鷹市の話だったことを思い出してしっかりきいておけばよかったと思った。理由はおばあちゃんが三鷹市民だから。いまははなかいどうというところに入っている。
しかし要介護認定というのにはびっくりした。みんながみんな受けられるものだと思っていた(希望した人)もし寝たきりの人が介護が必要だと思ったら、どうするんだろう。一人暮らしだったりしたら、どうやって申請するんだろう。介護保健施設に代行してもらえるというが、もしその施設などを知らない人だったら?どうやったらいいのだろう?それが最後まで疑問でした。
T.Y 今日は午後から福祉用具の見学に行った。いろいろ見て回っているうちにあるものを発見した。手の自由が利かない人のためだろうか。カードが挟めるようになっている丸く平べったいものがあった。カードが一枚一枚もてない人のためだろう。なんか意外な感じがした。福祉用具と聞くと日常で最低限出来ないことを補うものだと思っていた。介護を受ける人もカードゲームをする。よく考えてみれば、当たり前のことなんだけどあたらしい発見だった。
I.T 今回はただ聞くだけだったんだけど、きつかったです。しばらく講義っぽい講義を受けていなかったのでくらくらしてしまいました。2時間延々熱く市役所の人が語っていたのでけっこうわかりやすかったです。そしてオプションでいった福祉用具の置いてあるところに行って、電動車いすや食器とかをみてみたら、老人の気持ちとかがわかりました。だって端とかにいろんな工夫ができてて、老人もありがとうって思っただろうと思います。
S.R 先生の話は全くわからなかった。だが、今度はわかりやすく楽しい話をしてほしい。
M.Y 高齢化社会というのは確実に自分に関わってくるという実感がわいていくるのと同時にその介護の難しさについて考えさせられた。高齢者の方々自身の思いというものを想像したとき、やっぱりある程度は自立したいと思うことが普通だろう。そう考えた時に介護の難しさを考えさせられる。介護制度の実態、そういうものをもっとよく知りたいと思った。
H.Y 福祉用具の見学に行った感想。車いすは車いすでも外出用、家用、トイレ用などそれぞれたくさん種類があり、いろんな工夫がされていて驚いた。お風呂やトイレの福祉用具を見ていて思ったのは「介護されている方は私たちが思っている以上に恥ずかしい思いをされているのでは?」ということ。お風呂に入る時も、トイレに行く時も、ヘルパーさんとかに見られて、なかなか介護されている方は複雑な気分だろう。また、日常のちょっとしたことのために、便利なものがつくられていることにおどろいた。特に体の不自由な方のためのゲームやおもちゃには驚いた。体の不自由な方だって遊びを楽しみたいもんなぁ、気づかなかった。
T.N 今回は介護保険制度についてだった。みんな難しいと言っていたけど、私はそこまで難しいとは感じなかった。ただ、〜%とかは、ハァ?って思ったけど。私が難しいと思ったのは高齢化が進んで、制度が追いつかないということ。あまり知られていないこともある。しかも、この制度は利用者にとってわかりにくいということだった。たしかに、1年目だし、これからだけどやっぱりどこか納得いかないんですよ。けど、いろいろサービスセンターみたいな施設が増えているというのもあるし、H/Hなどスタッフがとっても必要というのは改めて感じた。あと、違うことだけど、今まで2回ともこの仕事はいろいろあって一つの職種にはまとめられないとかよく言ってて、(私たちには)可能性が∞みたいなこと言ってたけど、あんまり聞きたくない。事実だし、使うなとは言いたくないけど、なんかこれからも他の講師の人とかに言われると思うとイヤになる。そんなこと、本人が一番感じているしね。「いろいろな仕事をやっている人がいて、みんなが支え合っている」でいいと思う。すっごく個人的だから別にいいけど。でもまだ2回だけど、すごいいろいろ感じて、考えてる自分がここにもいるんだっ!てわかって毎回たくさんのこと吸収できてうれしい。
K.T 話がわかりそうでわからない。わかりそうになってもそこで話が終わってしまう。今回の講義の内容はもっと時間をかけてほしかった。あと福祉用具の見学は行ってよかったと思う。使ってみないと乗り心地まではわからなかったし、今度は外で乗ってみたい。
I.K 介護保険についてはほとんど知識のない自分、その制度の背景にある高齢社会、家族の介護力の低下、そしてそれを家だけでなく社会全体で支えていく必要性。制度が始まって高齢者が在宅で受けることの出来るサービスが多様になった現状など、今までイメージにとどまっていたものをクリアにすることが出来たと思う。
また申請から認定までの過程、保険料を40歳から納めることなど自分の介護保険制度への関わり方についても同様、ただ感想にもあったが介護保険制度のマイナス面、高齢者やその家族の声等を聞き、その実状をもっと知りたいという思いも強くなった。以降の講座で利用者やその家族の話を聞く機会をつくれば、受講生の本当に聞きたいことに応えられることも増えるのではないか。
S.S 行政の方のお話を聞く機会は余りないため、興味深く講義受けた。介護保険制度のことも詳しく説明されていた。しかしながら、お話を聞いているうちに制度を利用する高齢者の方々の側の声がないこともあり、その実際の部分がとっても気になった。保険料のことや医療費のことなどをニュースや新聞などで目にしたり、耳にしたりしている。行政の方々も精一杯仕事をされていると思うが、どうも高齢者福祉といいながらも高齢者の生活に寄り添った制度やサービスになっているとは思いがたい。今後の講義を受けながら、自分なりにどのような制度にしていけばよいのか考えていきたい。
A.Y 高齢者が自立した生活をおくるために必要なサービスを受けられる社会であるはずだが、実際動き出した介護保険制度は明らかに金銭が絡みサービスを受けたくても受けないまま過ごしている人が多いように思う。措置から契約へと介護に質を求められる時代であるとともに家族が介護する時代から、社会で介護するという意識改革が必要となっているのだろう。家族と同居しているとサービスを受けにくかったり、本人負担が必要な医療費も、現状の制度が過渡期の結果起きていることだと思う。病院の待合い室が朝からおじいちゃん・おばあちゃんで混んでいる様子を見ていると、ここは互いの健康を知らせあい、生きるパワーをもらったり集ったりすることであるとともに、身近なかかりつけ医の存在が大きいと思う。自分の体に自由がきかなくなった時、遠くの親戚より近くの他人が助けてくれる。そんな地域社会が日頃から成立していくことこそ、安心した老後を迎えられるように思う。まだ現制度で自立したその人らしい老後を誰もが迎えられるとは言い切れないように感じた。
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