はじめに
トラック運送事業は、貨物輸送を支える基幹産業として、経済活動や国民生活の向上に大きな役割を果たしております。一方、自動車の走行に伴い、大気汚染、騒音、地球温暖化等の環境問題が深刻化してきており、トラック運送事業者自らの環境改善への積極的な取組が期待されています。
(社)全日本トラック協会では、「環境基本行動計画」を作成し、取組を進めています。環境保全活動を進めるひとつの方法として、環境マネジメントシステムに関する国際規格ISO14001が注目され、認証を取得する企業が増えておりますが、中小事業者が大部分を占めるトラック運送事業者では、経済的・人的負担が大きい認証取得は容易ではありません。
そこで、交通エコロジー・モビリティ財団では、平成13年度に日本財団からの助成金を受けて、国土交通省、(社)全日本トラック協会の協力を得ながら、運送事業者の自主的な環境改善への取組を支援・推進するための「グリーン経営(環境負荷の少ない事業運営)推進マニュアル」を作成しました。本マニュアルはISO14031(環境パフォーマンス評価に関する国際規格)の考え方に基づき、取組むべき環境保全項目の各々について、その具体的内容を明らかにするとともに、目標の設定と評価が容易にでき、これを通じて経営のグリーン化が進められるようになっています。
平成14年度は全日本トラック協会と本マニュアルを活用した取組を事業者に普及するための講習会を開催いたしました。
実施にあたり、全日本トラック協会、都道府県トラック協会の方々、ならびにご協力をいただいた多くの皆様方に深く感謝を申し上げる次第です。
平成15年3月
交通エコロジー・モビリティ財団
会長 大庭 浩
トラック運送事業における環境負荷の少ない事業運営(グリーン経営)の普及講習会を次のように開催した。
主催:全日本トラック協会、各ブロック及び都道府県トラック協会、交通エコロジー・モビリティ財団
開催日 |
対象地区 |
開催場所 |
参加人員 |
平成14年10月10日 |
兵庫県 |
兵庫県トラック会館会議室 |
83 |
平成14年11月7日 |
中国ブロック |
山口グランドホテル |
210 |
平成14年11月13日 |
和歌山県 |
和歌山県トラック会館会議室 |
132 |
平成14年11月27日 |
沖縄県 |
沖縄県トラック会館会議室 |
60 |
平成14年12月4日 |
北海道ブロック |
京王プラザホテル札幌 |
95 |
平成15年2月14日 |
中部ブロック |
愛知県トラック会館会議室 |
80 |
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1. 基本カリキュラム
各講習会については、次のようなカリキュラムで開催した。
1. 開会挨拶 開催地トラック協会
2. 地球温暖化問題の現状と運輸部門における地球温暖化対策 (30分)※1
国土交通省総合政策局環境・海洋課地球温暖化対策係長 塩入隆志
3. 環境問題へのトラック協会の対応 (60分)※2
(社)全日本トラック協会専務理事 豊田榮次
4. トラック運送事業におけるグリーン経営推進について (40分)
交通エコロジー・モビリティ財団交通環境対策部長 加藤信次
※ 1 平成15年2月14日中部ブロック講習会でのみ実施
※ 2 平成11月27日沖縄県講習会では未実施
(1)地球温暖化問題の現状と運輸部門における地球温暖化対策
(国土交通省総合政策局環境・海洋課地球温暖化対策係長 塩入隆志)
((社)全日本トラック協会専務理事 豊田榮次)
<配布資料>
(1)レジメ「環境問題へのトラック協会の対応」(巻末 配布資料に掲載)
(2)リーフレット「いよいよ待ったなし!NOx・PM法と条例への対応−計画的な対策を考えるために−」
(3)東京都指定の「粒子状物質減少装置」ガイドブック
(4)リーフレット「環境基本行動計画 社会との共生とトラック運送事業の持続的発展を目指して」
<講義要旨>
(1)はじめに
環境保全活動を評価推進する方法としてISO14001がありますが、中小事業者が取組むのは簡単ではありません。そこで、中小事業者が多いわれわれ業界として環境問題への対策を進めるうえで、容易に取組めるものを作って、推進していかねばならないという思いがあって、交通エコモ財団さんに協力してこのグリーン経営推進マニュアルを作成しました。地球温暖化問題だけでなく、環境保全活動全般に取組み環境にやさしい経営をおこなうことがグリーン経営です。
そのため、本講習会では会員の皆さんにその趣旨を理解していただいて、実際に取組んで欲しいということで開催しているものです。
(2)NOx・PM法と条例の相違点について
平成15年10月に時を同じくして二つの法令が実質的に施行されます。ひとつはNOx・PM法、東京都を始めとする首都圏の環境条例です。これらが生まれるきっかけになったのは、尼崎公害訴訟であり、石原東京都知事がペットボトルを振って一躍有名になったPM(粒子状物質)です。
そして、旧NOx法はいろいろな議論を前提にして施行されたが、今回のNOx・PM法も条例も殆ど議論がないまま法令化されました。車種規制についても、旧法は10年という猶予期間、今回は、9年になっている。現在普通トラックは12年以上の使用年数であり、非常に厳しいものであったが、業界からの意見をぶつけて、 資料(2)の3ページのような激変緩和措置が作られることになりました。
しかしながら、条例の運行規制の猶予期間は一律7年間というものであり非常に厳しい内容のものです。協会では各自治体に対して、要望書を提出し対応しています。
○NOx・PM法
・車種規制・・・ |
使用の本拠地が特定地域内にある車両が規制の対象で基準を満たしていない車両は車検が通らない。 |
・猶予期間・・・ |
普通貨物自動車 9年、小型貨物自動車 10年 |
(但し激変緩和措置あり) |
個別の車両の状況については車検証を確認する |
○東京都他環境関係条例
・車種規制・・・ |
内容は運行規制であり、使用の本拠地とは関係なく、地域内を走行する車両が規制対象となる。 |
・猶予期間・・・ |
一律7年 |
(3)環境条例への対応における現状と問題点
協会として考えている条例への対応をする上での問題点は次の通りで、それぞれの問題についてレジメに掲載しているように各自治体に要望書を提出し対応しています。
○ 車両供給は大丈夫なのか?
年間7〜8万台の代替がピーク時は19万台の代替需要となる。
現在販売しているものの主力は長期規制車であり、平成14年秋以降新短期規制車の販売となるが、長引く需要低迷のため、生産能力を絞っています。今後、短期間に発生するであろう需要に対しては、極端な増産体制は望めないと考えていて、希望してもユーザーに供給が応じられなくなることを懸念しています。
○ 排ガス減少装置は?
装置の内容については 資料(3)を参照。これは、東京都の資料では内容が不十分のため東京都トラック協会が各メーカーにヒアリングしわかりやすくしたものです。問題点は次の通りです。
・後付けDPFメーカーの供給、装着、メンテナンス体制は確立されていない。
・生産能力も需要に応えられていない。
・自動車メーカーが対応するとしている比較的安価な酸化触媒もセラミックの供給に限界があり、需要に応えられない。
・酸化触媒の耐久性のチェックが不十分。
・取付費用が高い(あるいは車両によっては取り付けられないものもある)。
○ 低硫黄軽油について
低硫黄軽油については、当初はその供給体制の地域差(平成15年夏には切り替えが完了する予測)や従来品との価格差(およそ1円と想定)が問題と認識し、要望書に盛り込んでいたが解決されそうな状況にあります。
○ 流入車両に対する支援策について
条例では、他道府県から乗り入れてくる車も規制対象となっているのに、導入費用の支援策については、現在実施されているのは、都県に使用の本拠を置く車両についてのみであり、他県からのものについては全くない。支援策のないままの一方的な規制を加えた排除は理解できません。
(食料自給率東京1%神奈川3%という例を挙げて要望しています)
○ 自家用トラックの存在について
自家用トラックのユーザーに対して条例についての広報が殆どなされていないのではないか。営業用貨物自動車に比して5〜7倍ある自家用貨物車について規制の公平性の確保と車両や排ガス低減装置の供給問題とあわせてきちんと対応して欲しいと要望しています。
(4)今後の対応
今後の車両メーカーの動向、排ガス減少装置の動向等最新の状況を各都道府県の協会を通じて、お知らせいたしますし、現在兵庫県で車種規制が伴った新たな環境条例の制定の動きも出ていますが(14年度議会では見送りとなった)、これら新しい動きに対しても意見書や要望書の提出等により対応していきます。
また、全日本トラック協会で積み上げてきた基金を取り崩し、排気ガス減少装置導入助成金を確保していくことも検討しています。
厳しい状況が続きますが、今後も協会としても頑張っていきますので、ご理解ご支援のほどよろしくお願い致します。
以上
(3)トラック運送事業におけるグリーン経営の推進について
(交通エコロジー・モビリティ財団交通環境対策部長 加藤信次)
<配布資料>
(1)トラック運送事業におけるグリーン経営推進マニュアル
(2)トラック運送事業におけるグリーン経営推進チェックリストと記入の手引き
(3)チェックリスト結果記入表
(5)グリーン経営広報チラシ
(6)講義レジメ「トラック運送事業におけるグリーン経営推進について」
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