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コラム
サケの放流(里親制度)
 現在、千葉県で唯一サケの捕獲ができる河川は、九十九里海岸に流れ出る栗山川(利根川にも遡上しますが漁業権はありません)です。栗山川でサケが捕られ利用されてきたことは、芝山町白桝祭祀(さいし)遺跡出土のサケを模したものと考えられている魚形埴輪や、山田町山倉大神のサケ祭りに供えられたサケからもその存在が古くからのものであることがうかがえます。また、この栗山川は、現在千葉県で唯一サケの稚魚放流が行われ、そのサケが回帰している川でもあります。
 千葉県のサケ放流事業は昭和51年度から栗山川で開始され、昭和52年度に夷隅川、昭和56年度に加茂川へと拡大されました。昭和55年には栗山川で回帰が確認され25匹が捕獲されました。その後栗山川では順調に回帰数が増え昭和61年には1,655匹に達しました。その後も栗山川では62年1,884匹、63年1,066匹と千匹を超える回帰が続きました。千葉県としての放流事業は平成5年度から栗山川に集約して行われ、県としての放流事業は平成10年度で終了しました。これは、種苗放流などの努力によっても、数千匹程度の回帰しか望めず漁業として成立するには無理があるということによりました。
 しかし、サケの回帰を現実のものとした地元関係者からは継続の要請も多く、平成12年度からは地元の光町・横芝町が事業主体となり、種苗の生産業務などを栗山川漁業協同組合に委託することで継続されています。平成13年度は、サケの卵を水槽で管理し、ふ化させ、放流することによって、サケとその生育する環境を学ぶ「サケの里親制度」が開始され、平成14年3月には、栗山川流域の光町・横芝町・栗源町などの学校と栗山川漁業協同組合とで育てられた14万8千匹の稚魚が放流されました。
 サケ回帰の南限とされた利根川よりさらに南の千葉県の河川では、サケの放流・捕獲をそのことのみで漁業として成立させることは、その食味の点からも困難なようですが、サケの帰れる川は他の魚種もあわせた漁業の成立する川の環境が保全されるという重要な要素を持っています。今年、小学生に育てられたサケが4年後に川に戻るとき、喜んで戻れる川であることがこの事業の成果として求められています。
(大原 正義)
 
サケ稚魚の放流
 
サケの捕獲
 
栗山川のサケ回帰数







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