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【川における刺突漁】
 川における刺突漁は、ヤス(モリともいい、必ずしも機能的な面からの呼称では分離されていません)によるコイ・フナなどを対象とする刺突漁が多くの地域で見られました。主に寒中には、舟の上からコイやフナが動いた時に起こる濁り(にごり)を見つけて突き、産卵期には川岸近くのマコモなどの間に入り込んだものを突きました。
 ウナギガマは、川岸や舟から水底に潜むウナギを引っ掻ける漁具で、水底の泥を切るようにして使用しました。夏用と冬用があり、水底の深い夏は首の長い物が使われました。
 ドジョウタタキは篠竹の先に直交するように木綿針を10本前後植えた単純な道具で、主に夜カンテラの灯りで水田や水路を照らしてドジョウを探し、叩き刺して捕りました。灯りには松の根を細かく割ったヒデボッカや石油カンテラが使われました。
 エビサシも篠竹の先に木綿針を植えた簡単なもので、針が直交するものと平行するものがあります。
 ゲエロツキは、食用蛙(かえる)を捕る道具で、カーバイトランプでカエルの目を眩(くら)まして突き捕る方法でカエルを捕りました。
 
95. ヤス(千葉県立大利根博物館)
 
99. ウナギガマ(千葉県立大利根博物館)
 
97. ドジョウタタキ(千葉県立大利根博物館)
 
96. ゲエロツキ(千葉県立大利根博物館)
 
(高田 博)
(大原 正義)
 
コラム
ヤマアテ
 ヤマダテともいい、漢字では「山立て」と記します。海上で自分の位置や必要な位置を知るための伝統的な方法です。この技術は、陸が見える沿岸で漁撈活動をしていた時代に、漁師が漁を行う場合の獲物が常に多くいるポイントを知るためや、海面近くにある船の航行に危険な暗礁、急な潮の流れるきまった場所などを知るために不可欠な技術でした。
 ヤマアテの方法は、陸上の目立つもの、例えば山や高い木などの海上から見ることのできるものを少なくても二ヶ所、目標物に決めます。この二ヶ所を見通して得られる角度により、自分の位置や必要な位置を知ることができます。
 例えば、非常に多くの漁獲がある場所を見つけた場合、次回も同じ場所に正確に来るためには、海上にあっては印をつけておくわけにもいきません。こんな時、ここから見える陸上の二つの目標物を決めて、この二ヶ所とその場所から得られる角度を測っておけば、次回もまた同じ場所に来ることが容易にできる訳です。こうした場所は、「富出し」「器械根」「ダイゴ根」などの名前が付けられ、現在の海図の中にも表されています。
 また、海上で陸上の山が見えなくなる位置を、「富士一杯」「清澄一杯」などと呼びました。
 房総半島の南端部周辺では、千倉町千田地先にある高塚山(標高206m)が海からよく見通すことができることから、この山が見えなくなる位置を「高塚一杯」と呼びました。
 衛星利用等による科学技術が発達した今日では、次第に廃れ(すたれ)てきたようですが、今でも多くの漁師たちの基本となっているようです。
(本吉 正宏)
 







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