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網漁
 網(あみ)は一度に多くの獲物を獲るために発明された漁撈における画期的な漁具の一つといえます。
 網には、柄をつけて手に持って用いるいわゆるタモ網のような小さなものから、何種類もの網目の網を使い分けてその規模も数百mにも及ぶような、地曳(じびき)網や定置網等の大規模なものまで多くの種類があります。
 
196. 八手網「房総水産図誌」より
(愛知・西尾市岩瀬文庫)
 
 網は、網目に様々な大きさがあります。これは、海や川による違いのほか、捕獲する獲物による違い、さらには網の各部位によっても網目の大きさに違いがあります。タモなどを除くとほぼ共通するのは、魚を取り込む最後の部分の網目は細かいものが多く、それより外側にいくに従って編み目は粗く(あらく)なるようです。
 網は、網本体や、おもりやウキ、さらに枠や幹綱など網の種類により違いがあります。そしてこれに使われる素材は、様々でした。網本体即ち網糸についてみてみると、植物繊維を用いることが長く行われてきました。葛(かずら)・シナノキ・イチビ・ツナソ・シュロ・ワラ・アサ・チョマ等があげられます。また、変わったところでは、生糸(きいと)も用いられました。これらの繊維を紡いで(つむいで)糸を作り、さらにこれを一定の網目の網として編んでいったのでした。機械技術のない時代に、規模の大きな網を作ることは大変であったことが伺えます。こうした苦労をしてまで網を作ったことを考えると、網による漁獲が他の漁法に比べてとても効率が良く、大漁の漁獲をもたらしたことがわかります。
 網には様々の種類がありますが、これら各種の網漁を大別してみると次のようになります。
 (1)刺網(さしあみ)類、(2)掩い(おおい)網類、(3)すくい網類、(4)敷網(しきあみ)類、(5)曳網(ひきあみ)類、(6)巻網(まきあみ)類、(7)建網(たてあみ)類 なお、網の区分の仕方は、いろいろあって、必ずしも一定しているとはいえないようです。
 
【刺網(さしあみ)】
 刺網は、魚の通り道を遮る(さえぎる)ように水中に垂直に仕掛けて、追い立てるなどして驚かせた魚類がこれにからぶつかって網に絡まる(からまる)ようにしたものです。網の上端には、浮木を付け、下端には錘を取り付けて張り立てました。刺網は、水中に仕掛ける位置により、水面近くから水底に向かって浮刺網・中刺網・底刺網に分けることができます。また、刺網は、水中に固定するものと、固定しない流網の場合とがあります。水底のものほど固定する場合が多いようです。流網で用いる場合は、海の沖合操業で行われました。水中のカスミアミとでもいえるかもしれません。
 
 刺網で獲られるものは、ボラ・イナ・ブリ・クロダイ・カニ・イセエビ・キス・コノシロなどでした。この漁法は、現在も行われています。
 
【掩い(おおい)網】
 掩い網は、獲物を覆い(おおい)(掩い)包んで獲る方法の網をいいます。湖沼の浅い場所で行われ、投網(とあみ)や投網に枠をつけた形の提灯(ちょうちん)網がこの仲間です。提灯網による漁は、北総地域ではダッパ漁、オシ漁と呼ばれました。投網は、ラッパ状に投げ開かせた網で魚類を獲るもので、その様子から「撒(く)(まく)」の漢字を充てることもありました。海岸の浅い場所で行うこともありました。この漁では、コイ・フナ・ウナギ・ナマズ・アユ・ハゼ・ボラ等を主に獲りました。
 







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