日本財団 図書館


65, 一人一人とのコミュニケーションを深めたい
武漢大学 911 吉田道昌
 赴任前に大学側と連絡をとり、教材準備をしたのが、役に立った。TVの録画ビデオ、CD、録音テープ、新聞の切り抜き、本のコピーはフル活用している。赴任してからつたえられた四回生の日本近代文学の作家と作品は、準備が不十分で、これは歩きながら考えることにして、俳句→短歌→詩→小説へと、教材を簡単に用意できるものから入って、複雑なものへと進んでいる。日本から送った百余冊の本(文庫本も含め)も役に立っているが、幸い大学図書館に、岩波書店から贈られた全集、単行本など、膨大な書籍があり、それが利用できて、うれしいかぎり。問題は、教材のコピー。印刷機はなく、コピーに依存しているが、費用がかかる。大学側にコピー代について問うと、原則として学生負担という。長編のコピーをどうするか、これからの問題。
 日本から持参したノートパソコンのワードを使って、教材づくり、文集づくりをしているが、作文を添削して、文集にしたものは好評。「キンモクセイと私」「長渕剛の曲を聴いて」「NHK外国人による日本語弁論大会を観て」「ドラマ”北の国から”を観て」などいくつかの感想文集が出来た。
 日本から持ってきた録画ビデオ(VHS)はLL教室で使える。録画テープは13本(6時間もの)、NHKのETV2002、人間ドキュメント、未来への教室など多彩。
 授業は、2回生が日本事情、3回生が作文と会話の2コマ、4回生が近代文学、大学院生が日本文化史。
 視聴覚教材は、寸劇、デイベート、ゲーム、研究発表、唱歌などを入れながら、劇場型の授業をしてきたが、十一月頃から、一人一人の学生が見え始め、改めて、学生の多様さに応じる指導を考えなければならなくなっている。集団の中で、個の指導をどうするか。さらに一人一人とのコミュニケーションを深めたいと思っている。「話が通じている。解っている」とこちらが思っているのも思い込みであることが分かってきた。
 
66, 二つのことを実行
上海市工商外国語学院 786 大中紀元
 この学校に赴任して3年目になります。内部の事情も大部わかるようになり、現在は、私が教える日本語教育も浸透性を高めるべく、またその手立てを考慮に入れながら授業実践をしています。
 卒業生から、年賀状が届き「先生のお陰で、随分、日本語が上手になりました。仕事の面で随分役立っています。」と言った文面を貰う時、さらに計画的に授業を組み、わかりやすく、身に付く授業をしなければと、気持ちを引き締めているところです。
 日本語指導の効果を高めるには、その技術的な面はもちろん大切なことと思いますが、やはり教師と学生との良き人間関係がその基礎になければと考え、私は以下二つの事項を実行しています。
 一つ目は、朝と晩の自習時間の監督です。これはほとんど毎日行っています。私が教室に入ると、必ず2・3人の学生から質問を受け、それに応答するといったところです。学生が思いがけないところに、つまずくんだな〜と考えさせられ、実に楽しいです。良いムードが生まれます。受け持っている学生の名前を完全に覚えるのもこの時です。「ふれあい」ができ、これを大切にしています。
 二つ目は、毎時の指導案を中国人の日本語教師に見習って作成していることです。A版の用紙に裏表三枚に書きます。その中には指導内容に応じて、学生の能力に応じたように指名すべき学生の名前も入り、言うべきジョークの内容、指導資料の説明等何でも書くようにしています。これを今年度から取り組んだのですが、効果として、授業に対する学生の集中度がかなり良くなってきました。
 以上、今年度取り組んだ事、取り組んでいくべきことを書きました。三年目ならそれなりのことをしなければと思ってやっています。
 
67, 現実は厳しい
龍岩師範高等専科学校 936 山田隆之
 四年制大学への移行を目指し、学生寮を新しくしたり、教室環境を整えたりしているというのが最初に着任した印象である。しかし、ヒヤリング室などはまず機能していない。三年制の師範学校で、日本語科は36名の1クラス。2年が28・29名の2クラス。1年は40名の1クラスの編成となっている。教員は日本人教師2名。中国の教師2名しか居ないので、全員が週14時間をたんとうしている。
 私の場合は、3年の「文学選読」「外貿会話」を各2時間。2年の「大学泛読」と「外貿会話」を2クラス各2時間。1年の「日本概況」(前半は会話)が持ち時間である。学校側であらかじめ選定されていたテキストは、学生の現能力にはかなり無理なものであった。したがって、文章を組み替えたり、単語をやさしいものに置き換えたりして、打ち直しプリントしたものを使用することが多い。
 第1回目の卒業生となる現3年生は、12月の日本語能力検定の2級をほぼ全員が受験した。その準備には私の空き時間に、読解・語彙・文法の2級練習テストをプリントで週1回2ヶ月特訓したが、結果は厳しいと思われる。また、ここでは日本語科を卒業しても日本語を使える仕事に就くことは極めて厳しく、検定試験後にガクッと学習意欲を落としている者もいる。
 2年生の「大学泛読」テキストは”範読”のテープもないため、私が朗読したものをダビングして復習には使わせている。語学能力は現3年よりもさらに厳しいと思われるが、気質が明るく前向きであり、新しいことにもよく取り組んでいる。「外貿会話」では毎日ヒヤリングの練習を組んでいる。後半はテキストを変更する予定でいる。また、各授業の頭に2名ずつのスピーチをさせ、それについての感想をその場で言わせるなどで、話させる場を設定するようにしてきた。
 1年生は40名全員が全く日本語に触れるのは初めてで、いきなり日本語でかかれた「日本概況」を持たされても授業は成立しないと考え、前半は会話として設定してもらった。それでも40名を相手に会話をさせるのはなかなか厳しく、4名ずつ組ませて、A〜D4人の会話をプリントし、グループ練習をさせてみている。しかも新入生の授業は11月スタートであり、2ヶ月そこそこで後半に入ることになる。
 学生は意欲的であり、学生同士の関係もよく、授業の雰囲気も穏やかで、私も楽しく取り組めている。また、授業以外でも、寸劇の脚本の校正を持ち込んできたり、日本語のおしゃべりにも部屋までやってくる。週1回水曜日の「日本コーナー」なども設定された。
 
68, 生徒自身の学習に頼って
黄山日語職業学校 874 早川 薫
 今年は昨年に引き続き2年目に入るが、学校には何ら目標がなく、その場の何人かの先生の考えで授業、行事等が決定していく。校長をはじめとする先生方は、日本語教育について知識がなく、また知る必要性を感じていないようだ。生徒は一生懸命に勉強しているが報われることがない。中学生を卒業したばかりの生徒に、1年間で日本語能力試験の1級、もしくは2級を受験させようと授業を組んでいたようだが、12月ごろそれは無理だと判断したらしく、もう一度クラス編成をしなおし、時間割も新しくなった。しかし、授業は自習の時間が多数あり、生徒自身の学習に頼るところが多い。
 1月に入り、中国人の先生が休んだきり来なくなり、その穴埋めのために、自習時間の監督をさせられたり、試験の日時を前の日に変更させられたりした。試験当日は欠席している生徒が多く、変更されたことがちゃんと連絡されているかどうか心配した。
 
69, 2年目、学生の印象に微妙な変化
龍岩師範高等専科学校 850 平山禮二郎
 在任2年目になるが、昨年と違うのは、本校の日本語科が新設3年目になり、学生が1年から3年まで揃ったことと、日本語教師(外籍専家)がふたりになったことである。私自身も、今年は気分的に多少のゆとりができた。
 昨年は、日本人教師が珍しいので学生も大きな期待で迎えてくれていることが実感された。彼等の授業態度にも熱いものを感じた。大きな声で朗読したり、朝夕の自習風景も日本の大学生にはないもものだと思った。
 今年もその印象は、基本的には変わらないし、授業は楽しくて遣り甲斐がある。しかし、2年目になるとお互いに慣れてきたこともあって、少し違った面も感じる。例えば、昨年は全くといっていいほど、欠席が無かったのに、3年生の一部に欠席が目立った時期があった。テストをすると男女を問わず一部の学生にカンニングがある。私は、これらの様子を見て、昨年度私が感じた中国人学生のあの感動にも似た学習態度との差に大変失望していることを話し、自分にももっと厳しくあってほしいと訴えた。
 その後、欠席もカンニングも殆どなくなったが、考えてみると、これは日本でも同じことだろうし、自分の若かりし頃を考えてみると、あまり責められるものではないなーと思うこの頃である。
 
70, 創立10年を迎えた学院
青島濱海学院 872 小倉 充盛
 10月の20日前後を中心に当学院の創立10周年記念行事が行われた。
 学院の外枠はこの一年で大変立派になってきた。大ホールが出来上がり、400メートルのトラックを持つ運動場、7階建の学生寮と教官宿舎、庭園なども。
 2002年度前期の授業は日本語系新入生の半分5クラスの日本語会話を担当した。週二こま2時間で一クラスには60人もの学生がいる。苦労が多く効果のあがらないことが大変悩みであった。どのような授業形態をとると効果があがるのか良い方法があったら教えていただきたい。
 もう一つは、本学院では卒業学年になる3年生の、報道文講読を担当した。教材としてのテキストは10年前の新聞記事であった。それはもう新聞とは言えないので、インターネットから日中に関係した新聞記事を選び教材にした。講読だけでなく新聞作りにも取り組んだ。一つのテーマで一人一人が作った新聞をクラス全体で見ると筋の通った主張が読み取れることは面白い。
 このクラスは32人と40人であるそれに週一こま4時間であるのでこのような取り組みも出来た。
 10周年を向かえ学院の外枠は充実してきたが、教育の中身の充実はこれからと言うところである。
 
71, 教育活動に専念できる環境
延辺大学農学院 817 阿部公一
 長年、日本語教師を受け容れてきた以上、日本語科教師(中国人)の大半が日本への留学経験があり、意志の疎通もスムーズに行うことができ、授業も非常にやり易い。
 教材・教具はかなり整備されており、印刷も枚数を所定の用紙に記入するだけでよく何らの制約もない。又、授業に必要な物については、即、購入してくれるなど不自由を感じない。
 授業は、1年生2クラスの会話8時間(4×2)、2年生の会話4時間と泛読4時間の計16時間を担当している。尚、後期からは、泛読がなくなり、会話が8時間になる予定だそうです。今年度新しい試みとして、1年生を中学・高校で日本語を学習したクラスと英語を学習したクラスの2クラスにしたことで、授業は非常にやり易くなり、効果も上がってきたが、教科書が同じなので、その取り扱いに苦慮している。当然のことながら、自作教材を使ったり、色々工夫をしている。
 学生は、1年生2クラスで65名(内聴講生3名)、2年生1クラスで32名(内聴講生1名)の計97名で、皆、非常に素直で真面目であり、元気に大きな声を出して練習するなど、意欲的に学習にとりくんでいるが、学生の最大の目標は、日本への留学であり、その可能性が判明してくると、出席しなくなる学生も若干いる。純朴で、親しげに接触してくるので、楽しく授業ができる。
 教科書は、1年生2クラスの会話は「今日は日本」初級、中級。2年生の会話は「日語会話」と「日語交際生活会話」、泛読は「日語泛読I」を使用している。
 スタッフは、全員、大変好意的で要望等には迅速に対応し、最大限の便宜を図ってくれる。日語主任は、日本語がとても堪能で、又、職員室での机が向かい合わせ、空き時間も同じということもあって、いつでも授業や学生達の事について話し合いができる。総じて、授業に専念できる恵まれた環境にあると言える。
 外事処の職員は、英語と日本語を話せて、とても親切で要望には迅速に対応してくれる。







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