43, 学生は「肩書き」欲しさに
北方工業大学 915 西野典枝
担当科目:前期(12時間)高級日語、日本概況(歴史)、古典文法。後期(14時間)高級日語、日語視聴説、近現代文学。大学生倍増計画のあおりで毎年2000名の生徒増、来年は1万名の在籍という。施設・設備が追いっかない状況である。現在13階建ての生徒用宿舎を建設中であるが、教室は後回し、夜9時まで授業がある。(外国人には割り当てない)工業大学なので理系優先。人文学院日本語科(生徒数は約220名)の教室は古くて暗い。
日本人教師は2名。学生は地方出身者が3分の2、女子学生が3分の2。聴覚教室、コンピューター室等の施設も決して整っているとは言えない。おとなしくまじめではあるが学習意欲に欠ける学生が多い。学校間格差(卒業後の就職先も含めて)を如実に感じて劣等感をもっている。殊に入学の際に、点数不足で本校に入学してきた生徒、日本語科に回された生徒の学習意欲は低く、日本語に対する興味もあまりない。「何しろ北京の大学卒業の肩書きがほしい」という生徒が多い。教員もそういう生徒の希望に沿っているわけではないだろうが、比較的穏健な授業をしている。マイペースを貫いて、学生から厳しい大変だと言われながらの授業である。
44, 気持ちよく授業を進められる
遼寧師範大学 918 佐々木正子
1年の会話 2クラス 2時間、3年の精読 1クラス 3時間、3年の作文 1クラス 1時間 計6コマ12時間を担当している。
1年の会話は日本語ゼロの状態からなので、「おはようございます、こんにちは」の挨拶から始める。皆んな元気に大きな声で練習するので、つい、こちらも大きな声を出してしまうのが楽しい。
3年は授業での言葉も読みも普通のスピードで大体理解できるので、やりやすい。精読は、日本の高校レベルの文章をこなしている。国際日本語検定では、例年、1級に6割程度合格しているそうです。文法、読解は良いが、聴解に苦労しているようです。作文も毎回600字〜800字位を時間内に書かせている。新聞のコラムを使ったり、朗読をきかせたり、短編小説を読んだりして、作文のテーマに苦心するが、自分の思いを表現できるようになってきている。
中国の学生は純朴で、熱心に勉強するので、気持ちよく授業を進めることができるので、やりがいがある。
自分の教材研究のための時間もたっぷりあるので、教材になるような資料を持ってくると、よく勉強できると思う。
45, ”日本語が専科に・・・”
焦作工学院 846 柴野たまの
焦作工学院での日本語教育は10年前、姉妹校である北海道、室蘭工業大学の山内先生が、留学生と共に、ここを訪れたのがはじまり。
当初は学生ではなく、医師や教職員対象に開講。その後、日中技能者交流センターに引き継がれ、教養科目として、主に英語の苦手な学生が受講。正規の学生の他、英語教師等、学内、学外からの聴講も多く、年々日本語の人気は高くなってきている。教養科目としての2年間がすぎてからも、学習を続けたいという希望者も増え、来年度から日本語が専科として発足するそうだ。
現在は1・2年生とも2クラス編成で、各136名の登録だが、聴講生を含めると毎回80名以上の受講者数、中国人教師と組んで一緒に授業をすすめている。月〜木の夜間7:30〜9:50(45分授業5分休みの3コマ構成)
1年生5000人中、2年生4000人中の各136名で、ほかにロシア語各十数名以外はすべて英語だが、英語に比べ圧倒的に少ない。日本語学習の学生が中心となって、このたびJAE学社(Japanese & English学社)が発足。大学に正式に認められ、春節あけに活動を開始することになったのは嬉しい。土・日の活動だが、もちろん外教としての役割分担もある。又、専科ができても、1・2年の教養科目としての日本語の授業はあるそうで、今後、外教がどうかかわっていくは不明。
10年前、山内先生の蒔いた日本語の種が芽を出し、花が咲くような春の訪れを感じる。(山内先生は9月7日に亡くなりました。)
46, 三ヶ月で簡単な日常会話が・・・
曲阜師範大学 951 竹田典正
本科1年生の口語を担当。主任教授の意向で、従来型の文法重視の日本語教育より、とにかく話せるようにと、会話を中心に行った。教材も教科書は一応あるが、それにとらわれず、日常会話の色々な表現を、例文を多く掲げて、具体的に使えるようにと心がけた。
また、発音を重視し、発声の矯正に力を入れた。高校時代に日本語をやってきた者に限って、なかなか発声が良くならず、出来はよいのに発音が今一つという状態に苦慮した。
だが、全体的に学習意欲はすこぶる高く、3ヶ月余りで学生のほとんどが簡単な日常会話ならこなせるようになった。
授業の合間に、中国古典(論語、史記、唐詩など)の日本語での読み方を紹介したところ、多くの学生が面白がっていた。
47, 討論を取り入れた授業
佳木斯大学 853 内海満男
昨年七月末、一時帰国を前にして、日本語科主任から、いくつかの要望がありました。その中の最大のものは、4年生の精読教材捜しでした。できたら、学生の自己表現力を高めるためにデベート(debate)を取り入れて欲しいというもの。この課題は、元理科教師であった私にとって大変重たく感じられるものでした。しかし、2年目も担当することを引き受けたからには逃げるわけにもいきません。一時帰国した三週間は、そのために、あっという間に過ぎ去ってしまいました。
元同僚の国語教師数人に相談し、教えてもらったり、国語I、国語III、新現代文、現代語、国語表現などの教科書や指導書、問題集などたくさんいただく一方、図書館や書店をまわる毎日でした。
そして、どうにか初め一週間分の準備を終えて迎えた九月。精読授業は、文字通り、一時間、一時間が新鮮で、真剣勝負の連続。学生の反応がとても気になりました。自分が面白いと思う教材だけを選んだけれど、学生にとってどうかが問題。選んだ九つの教材は、結果として学生諸君にとっても好評だったようです。そして、デベート授業では全員が、それぞれのテーマで発言したのですが、あんなに燃えた討論が出来るとは思いもしませんでした。学生諸君もそうですが、私自身にとっても”やれば出来るものだ”という自信を持つことが出来ました。
ノートパソコンは私にとって”教材倉庫”であり、”日本語教育の必需品”となっています。4年生の学生のほとんどが私のノートパソコンを使って、文書作成したり、就職・進学情報を捜したり、学習との交流の道具にもなっています。
日本語を教える楽しさや喜びを、いま、かみしめています。
48, 授業以外にも、いろいろ多忙
遼寧師範大学 805 安藤桂子
延長3年目です。大学生の拡大募集4年目で、学生数がますます増え、忙しくなりました。今年は2年生の会話2組(48名)、3年生の作文1組(30名)、4年生の精読1組(21名)、院生の精読(7名)と内容も多様になりました。
大連市は日本語の非常にさかんなところで、多大学との競争意識が高く、授業以外にもいろいろ忙しくしています。
1年目に全国日本語作文コンクールで、1位、3位に入賞、昨年は1位、2位(1名)3位(2名)の入賞者があって、(1位は連続優勝、朝日新聞の「人」欄に掲載されました。)今年も大いに期待されており、作文指導は特に気をつかっています。また、昨年度大連市の日本語スピーチコンテストで2位に入賞、これも我が大学は暫く入賞から遠ざかっていましたので、来春も期待されており、課外の指導をしています。
大学生が増えて、競争が厳しくなる将来を心配している者が多く、資格取得に忙しく、またコンクール等への取り組みも熱心です。こちらも熱心にならざるをえません。
その他、卒業論文の指導もあり、学生が増えた分、負担も大きくなります。
49, 部屋に来てもらい、授業を補う
延辺大学農学院 870 中條明子
付属の外語センターで教えている。当センターの歴史は古く、国家や吉林省などの指導のもとに改革変遷を重ねており、教育課程はしっかりしている。
2年目の今年度の授業は、培訓クラスの「会話」と、経貿クラスの「日本世情」「会話」で、合わせて週に14時間ある。学生は1クラス28名〜38名くらい。
培訓クラスの学生は、社会人として一旦は職業に就いた者や、高等学校を卒業後日本の日本語学校への留学を希望している者が多いが、前途は厳しい。経貿クラスには日本の高等学校と同年代の学生が、市内や周辺の朝鮮族自治州から来ている。日本語のほか、コンピューターや中国語、英語、体育なども学んでいて、就学年数も3年である。
教科書は、「日語900句」(会話)と「日本世情」(佐々木瑞枝著)を使用している。「日語900句」は、かなり量が多いし、会話の内容も高度のものがある。初級の学生には難解なため、使用頻度の多いことばや語句を中心に繰り返し読むことから始め、手製のカードや絵を使う、歌で教えるなど様々な工夫を試みている。
日本から持ってきたアルクの「スーパーキット」はとても役にたっているし、自分でも常に黒板に絵を書く。新聞の切り抜きもいい。広告も使う。絵本や子供向けの本を使うこともある。ちょっとした配慮が学生の助けになっているのではないかと思う。
また、(パソコンが無くても、授業はできるが)パソコンも役立てている。センターは印刷を頼んでも快く応じてくれるが、授業以外の教材を作りたい時は、自分のプリンターを使う。
しかし、授業で教えられることは限られるので、できるだけ部屋にも来てもらい、様々な四方山話をしたり、かるたなど日本の文化や遊びなども紹介して、日本世情や会話の授業を補っている。また、しおりを作ったらとても喜ばれた。
最後に、学生たちに明るい前途が開かれることを願ってやまない。
50, 学生はさらなる日本語漬けを期待
遼寧大学 952 岡田重美
学生は全般に勉学意欲が高く、目的意識を持って日本語学習に励んでいる。
約4ヶ月彼らと接していて一番感じることは、日本語および日本への興味・関心の高さである。日本語を学び、その文化を理解したいという、彼らの強い思いが伝わってくる。従って、学習態度も語学習得のみに偏重することなく、日本にかかわるすべての事物に好奇心を抱き、それらを含めて日本語を習得しようとする姿勢が顕著である。そこで彼らが求める日本の情報をどれだけ提供できるか、この点において腐心するところである。具体的には、日本で撮り置いたテレビ番組のビデオ、NHKワールド、様々な情報誌等を活用しているが、彼らはさらなる「日本語漬け・日本漬け」を期待しているのである。それにどう応えていくか、情報機器の整備と併せて今後の課題である。
次に、多くの学生は卒業後、日系企業への就職を視野に入れながら日本への留学を希望するわけであるが、その点においていかなるアドバイスが可能か、また、どのようなアドバイスをすべきか、これも難題である。日本の、中国人留学生の受け入れに関わる情報にも通じておく必要を感じるところである。
51, 日本語が嫌いな学生を相手に
韶関学院 917 宮本みほ
英語を専攻している三年生の第二外国語として日本語を教えています。学生の中には強制的に日本語を選択させられたために反発し、授業中に英語や仏語の教科書を開いている学生もいます。今年赴任した大学卒業したばかりの中国人教師は学生に「私たちの専門は日本語ではないので勉強したくありません」と言われたそうです。このように学生は全体的に学習意欲はありません。しかし、日本の歌をうたうのはとても好きなようで、唱わせるといつも元気一杯唱ってくれます。学生達はほとんど勉強しないので成績もあまり良くありませんが、なぜか、授業は盛り上がります。
僅かですが、学生の中には熱心に日本語を学んでいる者もおります。そうゆう学生のために日々工夫し、より良い授業を提供できるよう努力しています。
大学の設備としてはLL教室はありますが、数が少ないので実際は使えません。プロジェクターはありますが、よく故障します。コピーは係りの女性がしてくれます。コピー代は学生から徴収するように言われましたが、その都度、私が払っています。学生に払わせるのは心苦しいので・・・。
「私は日本語が嫌いです。」と言う学生に、「将来日本語が必要になるときが来るかも知れませんよ。時間を無駄にせず、学んでいきましょう。」と励ましながら、少しでも学生が日本語を好きになってくれるように、これからもいろいろと工夫していきたいと思っています。
52, パソコンは持参して良かったものの筆頭
西南師範大学 941 小池真理
当大学は1950年に創立された総合師範大学である。現在、外語学院日語系学生は1年生34名、3年生25名で、教師数や収容能力などの関係で、隔年ごとの募集である。3年生ともなると、かなり高度な日本語を理解し、直接法の授業で教師自身なんら不自由を感じることはない。現在は3年生の「総合日語」8時間のみの授業で、他に1年生の会話の自習に毎週2時間程度つき合っている。「総合日語」のテキストの内容は日本の中学・高校程度の国語の教科書を想像してもらうとよいだろう。
小説から評論文、紀行文など内容は多彩で、持参した各種参考資料(各種辞典類、地図、国語便覧、各教科の資料集、日本語の文法に関するもの、日本の歌、雑誌、新聞、広告など)が大いに役に立っている。また、学生への最新かつビジュアル的な資料の提供という意味では、パソコンは持参してよかったものの筆頭に挙げられよう。他校の例に漏れず、学生の学習意欲・態度は目を見張るものがあり、専家楼を訪問し「交流」をはかりに来る学生も少なくない。日本語科の先生方との交流は普段はほとんどないが、何か希望があれば快く応じてくださるので、これも特に不自由は感じていない。
53, 日本人の歴史認識欠如に憤り
東北電力学院 897 鈴木 昂
商務外国語学部日本語科の学生は、4年22名、3年29名、2年29名、1年60名(30×2クラス)計140名。中国人の先生7人と私の8人で担当している。授業は任せてくれるし、親切なので、全く問題はない。どうゆう事情があってか、3年生以下は、高校時代に理系だった学生から選抜されているという。在学4年間に、日本語・英語の検定、情報処理の検定をパスするように指導されていて、3・4年生は新年度当初からかなり忙しい毎日を送っている。朝6時頃から授業をはさんで、夜11時頃まで、教室で熱心に勉強する姿は感動的でさえある。(ほぼ全国から集まってくる学生は、全員寮生活(5〜6人相部屋)なので、教室を自習用に提供し、冬の朝でも6時には教室に学生の姿が見える。この頑張りが今の中国の活況の源泉だと納得する。
授業は、会話と作文を担当。発音、イントネーション、日本文化・その他日本事情を中心に、教科書外の教材を任意に用意している。学校でも寮でも日本のTVを見ることができないので、日本の季節感のある風景や、街の様子、伝統行事の写真などを多数用意しておくとよい。またNHKのラジオニュースや対談等の番組もテープで持ち込むといい教材になる。新聞記事を読んできかせるのもよい。教科書がやや古いので、新しい日本を紹介する情報・資料には学生にも喜ばれる。
4年生の半分位が大学院への進学希望を持ち、意欲的に取り組んでいる。日本の経済、文化、伝統、習慣に大きな関心を寄せつつ、日本人の歴史認識の欠如に憤りと怨念を持つ、真面目な学生達である。
54, ソフトの充実が今後の課題
青島濱海職業学院 登録番号 830 長 実
昨2002年10月、当学院は創立10周年を迎えた。教室も全室完備、学院礼堂と称する大ホールも完成。柿落としには青島海洋交響楽団を招いて交響楽が豪華に演奏された。各教室には有線テレビで放映された。創立記念式典や記念文芸公演(学生や教師のいろいろな演技)が披露された。学生寮も狭いながら完備、学生数約8000人を数える私立学園。キャンパスは青島市の黄島地区の小高い丘に偉容を誇って聳え立っている。
10年かかってハードの部分は一応整ってきたかと思われる。が、教育はむしろソフトが肝心で、ソフトの充実がこれからの当学院の課題というべきだろう。
(1) |
教師の定着率がよくない。少なくとも月本語科においてはこの傾向が顕著である。それの原因は学院管理職側に教師を大切にする態度が乏しい。教師の定着が悪いと学問的に日本語科の蓄積が逃げてしまって日本語科のレベルが高まりにくい。それは学生にマイナスである。 |
(2) |
多くの教室を持ちながらそれが統一的に管理されていない。日本人教師に依頼された講演が3回も教室使用の手続きの悪さで延期延期になって結局取りやめになった。 |
(3) |
教科書の選択が適切でない。進級しても2年間同じ教科書を使わせたり、校正が不十分で間違いの多い教科書をそのまま使ったり、興味関心を引きにくい教科書がそのまま使われたりして学生の学習意欲を刺激しにくい現状がある。 |
(4) |
日本語教育の本学の方針や全体像が曖昧で統一的な形で提示されない。 |
(5) |
言語学習に視聴覚教材は有力な力になるはずであるが、先ず視聴覚室が自由に使えず、視聴覚機器は各クラスごとの学生の負担で購入し、ソフトも学生が持っているもので間に合わせるという行き当たりばったりの現状がある。だからソフトに段階性、系統性がなくテレビ観覧の時間になっている。 |
(6) |
教材の印刷が何人ものサインがなくては印刷までたどり着けないという億劫さが教材作りの意欲を減殺させている。
まだまだ挙げればたくさんあるが、今回はこれぐらいにしておこう。 |
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