日本財団 図書館


32, 学生の可能性に期待
桐郷外国語学校 757 志賀洋子
 外国語学校に赴任して2年目を迎える今、冷静な視点で周りが把握できるようになってきたことを感じる。中国生活は、あるがままを受け入れ、”無いものねだりをしない”と言うことを実感している。しなやかに、そして、強かに生き、一日一日の貴重な体験を生かせればと、いま、この時間を大切にしている。
 現在、私の担当は、週12時間で、1年生2クラス(Aクラス38人。Bクラス35人)2年生(40人)計113人の学生に「日本語会話」の指導をしている。
 80分(1コマ40分を2コマ)各クラスに週4コマづつで、どの程度まで会話力を習得できるのか、学生の可能性に期待しているところだ・・・。
 テキストは、「新日本語の基礎1、2」を使用しているが、このテキストは研修生を対象に作成されたので、不備な個所が見受けられるのがネックだが、不必要な点は削除して自作の教材でカバーし、いろいろと工夫する満足感も味わっている。
 文型、文法の導入。例文。談話練習。会話。タスク問題。ヒアリング。と一歩一歩の積み重ねときめ細かな指導を心がけている。
 今後も、初心を忘れずに真撃な姿勢で努力していければと思っている。
(2002年度外国専家「西湖友誼賞」受賞)
 
33, 日本語科の目標、全体像は不明
山東財政学院 670 永田企世子
 今年、日本語科が新設され、1年生61名が入学してきました。
 31名と30名の2クラスに会話と聴解を2時間ずつ教えています。学生は意欲があり、予復習にかなりの時間を割いているので、ことばの習得が早いです。「あいうえお」から始めましたが、最近ではコミュニケーションが可能となり、こちらも楽しく授業に臨んでいます。
 何もないところからスタートした科なので、教材費として10万円分の視聴覚教材を整えてくれ、助かりました。
 聴解は2クラス、それぞれ違う種類の機械を使いますが、時々トラブルを起こし、機械の扱いに慣れるまでが大変でした。
 1台は1980年代の代物で、使っているうちに、テープが吹き上げてきて困り果てました。新しい機器を設置するまでラジカセを使っています。
 日本語科の教師は全部で5人いますが、1度も会合を持ったことはなく、何か分からない時だけ主任に電話で聞きます。
 「日本語科」の組織としての目標とか、全体像は見えなく、各自がそれぞれに任された分だけ教えていればよいようです。
 
34, ”教師冥利”にひたすら感激
山東大学 790 岩下壽之
 赴任3年目を迎えたが、基本的には今までと変わりがない。学生は優秀で勉学の意欲に満ちている。ただ昨年あたりから韓国からの留学生や聴講生が急に増えて、本科生(1学年20名)と同じぐらいの人数になった。授業では彼らを差別することはできないので、教える側の負担は大きくなる。せめて、外国語学部だけは、少数精鋭主義を守ってほしいもの。
 本学では、伝統的に3年生は全員12月の日本語能力試験を受けるが、ほとんどが1級に合格する。教師の方はこれにノータッチで、学生たちが自力で受験する。ただし、日本人の教師は練習問題に関して質問をよくされる。毎年そうだが、解答に間違いが多く、受験生たちは気の毒だ。
 4年生は半分以上が各地の大学院を受験する。これは毎年同じで、去年と今年の卒業生も北京大学、北京外国語大学、復旦大学、南京大学、中山大学などに進学している。
 大学のカリキュラムだけでは院生受験には不十分なので、どうしても日本人教師が補修の形で指導することになる。日本歴史、日本文学史、古典文章解釈、日本語学概説などが中心。学生たちの記憶力は抜群なので、こちらが驚くほどよく覚える。各地の大学院に進んだ教え子たちからは常時Eメールや電話などで連絡があり、こちらが当地へ行くと大歓迎してくれる。”教師冥利に尽きる”とはこのことかと、ひたすら感激している。
 
35, あまりにも専門過ぎるのも
湖北大学 837 清水行健
 湖北大学は湖北省武漢市にある。昨年(2001年)70周年を迎えた。古くなった教室棟や学生寮などの改築が進んでいる。学部は10学部あり、募集定員2500名である。外国語学院日本語学科は30名の定員である。
 私の担当は昨年度前期4年生の総合日語、文学史選読、作文。2年生の会話、聴力、閲読、文法。後期は4年生2年生ともに会話のみだったが、今年度は3年生の日本語概説、文体論、語彙論、作文。2年生の日本歴史、会話。1年生の会話である。特に1年生31名のうち、高校で日本語を既習したものが3名だけで、その他は初めて日本語を学習する学生たちであり、私が中国語で説明できないので、上級生に通訳してもらったりしてやってきたが、大変効率が悪い。2年生の日本歴史のテキストなども、語学学習者用に書かれていないので、読むだけでも大変である。学習内容と順序について工夫が必要と思われる。3年生の語学力は能力試験1級レベルで日本語概説、語彙論、文体論など理解は一応出来、学習態度も良いのでいいのだが、これらの科目もあまりに専門過ぎて、実用面から見るとこれでいいのだろうかと思う。
 
36, 「外国語としての日本語教育」の視点が必要
江蘇大学 739 當間 實
 中国における日本語教育も[外国語としての言語教育の視点]が必要だと思う。以下はコミュニケーションの手段としての言語、スキルとしての言語習得という観点からの提言。
1 信頼できる教科書の選定〜小生の場合、基礎固めの教材として、「標準日語・初級(上・下)、中級(上・下)」。中級の教材として、大連出版の「日本(上・下)」、文化外国語専門学校(編)「文化中級日本語(1・2)」。仕上げの教材として、The Japan Times社の「待遇表現」と「日本語の手紙の書き方」、他に2、3の補助教材を活用。
2 音読(暗唱)と書写の徹底〜特に、「標準日語」については、毎時、各課とも(1)(2)(3)の書写(教科書の後ろにある中国語を活用)、更に(3)については、ペアで対話をさせる。毎時のテスト結果を集計して、それを学期末の評価に代える。
3 言語学習の目的に適った評価〜「教師の評価の方法・内容が、授業以上に、学生の日常の学習方法・内容を決める」ということを常に念頭において評価を行う必要があると思う。訳読・文法中心の評価は学習者の訳読・文法中心の学習をもたらす。
 
37, 施設、設備は充実、印刷の制約もない
曁南大学 935 中村哲彦
 4年(35名)日語精読(2クラス×2コマ。1コマとは50分・10分・50分のこと)教科書は「にほんご 日語(上海外語教育出版杜)」(第7・8冊)が用意されているのだが、古く、紙質も悪いので、前任者のアドバイスに従って日本から持参した高校国語教科書などを毎時間プリントを準備し、指導した。しかし、1学期(前期)が終わろうとしている今振り返ってみると、内容は古いものでも1年次(第1冊)から継続使用している教科書なので、使用すればどうだったかなと反省している。(到着後手渡されたため、内容を検討する時間不足)4年生の授業は1学期(前期)のみで、2学期(後期)は就職実習と卒業論文の完成に当てられている。
 3年(38名)日文写作(2クラス×1コマ=2コマ)使用教科書は「軽松日語写作訓練」(アルクの日本語テキスト中国版)の中から8課を選んで取り上げた。作文を添削したり、誤りを教室で学生に訂正させたりして指導した。表現力には語彙が必要と考え漢字問題集をプリントしたものを準備し、宿題として提出させたり、または教室で指導したりした。大学に入ってから日本語を始めた学生ばかりで、学力差はいかんともしがたい。2学期(後期)は、学生の要望で「卒業論文の書き方」について講義する予定である。
 教育施設、設備等は充実している。4年後の創立百周年に向けて、さらなる施設の整備が進められているところである。印刷、コピー等の制約もない。外国語学院の職員も親切である。日語系の先生方も気さくで、路上・廊下・電話等でよく日本語に対する質問をされることがある。香港、マカオ、インドネシア、朝鮮の華僑の子弟も在籍している。
 
38, 「まだ先生の授業が聞きたい!」
湖北汽車工業学院 834 高橋良江
 湖北汽車工業学院は湖北省十堰市にあり、近郊に世界遺産の武当山があります。その北麓に位置する静かな地方都市です。
 新聞報道にもあったように、東風自動車会社と日産自動車の合併により、この十堰市にも来年早々多くの日本人が出向してくる予定で、街の様子も一変しました。
 当学院は外語系に英語と同本語のクラスがあります。去年、日本語は3クラスでしたが、今年は1クラスに減りました。日本語ブームで、この学院以外に日本語を教える所が増えているようです。その他、大学の一般教養としての日本語クラスがあります。
 外語系は9月に入学、翌年11月中頃修了の学習サイクルになっています。その間に、標準日本語教師冊、テーマ別上級日本語を終えなければなりません。その結果が日本の大学・短大・語言学校へと結びつくわけです。そして、最後が日本語能力検定の1級合格になるというわけです(なかなかそうはなりませんが・・・)。
 入学当初の五十音からスタートして、春節が終わる頃には、それぞれの進路先きが具体的になりだし、学生の日本語にたいする意欲もでてきます。しかし、試験や面接が終わると、もう登校しなくなる者と、さらに本気で勉強しなければと思う者に分かれてしまいます。
 最後までついて来た学生達は、授業が修了しても、「まだ先生の授業が聞きたいね」と嬉しいことを言ってくれます。
 
39, どだい無理! 1クラス60名で会話の授業
青島濱海学院 869 板垣一寛
 建校10年であるが、学部経営、管理に通じた人が居なく、年次的、系統的組織的な計画が無く、あっても部分的であり、効率がとても悪い。
 例えば教科書。教科書の種類が少なく、選定がいい加減で同じ教科書を1年でしたり、3年でしたりする。ひどい時は2度使ったりする。
 また、私立だから仕方がないのかも知れないが、1年生は、1クラス58人から61人で、これで会話の授業となると、無理を通り越している。
 増える学生に、設備面が追いつかず、この時期暖房のない教室の授業もある。らに、教員の日本語のレベルが低い。採用時の面接を見たが、双方がとても低く、日本人には通じない会話が沢山あった。学生に対するテストでも、学長は社会に通じる学力を、と言うが、学部では、全員合格にしてください、と言う。若い先生方や日本人教師の意欲を早々に殺ぐ、上意下達の強い力を、今年は感じる。
 
40, 作文で識る「現代中国の若者」
佳木斯大学 901 大高キク枝
 総合大学である本学の外国語学部には、日本語科、英語科、露語科があります。専家楼には英語科の外教(2名)もいるので、授業の様子や担当する学生について等、話し合う機会があります。
 日本語科は1年から4年まで本科生25名ずつが二クラスに分かれ在籍しています。1・2年は自費生クラスもあります。私は2年の写作(自費生も含め3クラス合併)、3年の精読、4年の日本文学(2クラス合併)を担当しています。
 日本語作文は、実践編として原稿用紙の使い方から取り組みました。
 テーマごと、関連語句、慣用的言い回し、文型を学習し、作文は宿題にします。400字の原稿提出が毎週続くので、書く方も、添削する方も大変ですが、回を重ねるに従い、楽しんで書くという学生が現れ、私の方もいつしか、現代中国の若者観を楽しみに作文の添削をするようになりました。
 精読はクラスごとに週6時間あるので、親密さも増し、学生からの質問も出易く、学生達のアイデアを凝らした表演をするゆとりもあります。一方で彼らは、2〜3分のスピーチや指命時などに「緊張して言いたいことが言えなくなる。何しろ日本語で受ける唯一の授業ですから」ともいいます。気負わず毎日の中で、彼らの希望に応えたいと思っています。
 
41, 悩みは1クラス50名
福建師範大学福清分校 907 望月景子
 私達の分校は11月に25周年を祝いました。現在、学生数は4000人で7学部28学科ありますが、外国語学部は3年制専科です。省都福州からバスで1時間余りの海に近い丘の上に建っています。校時は7時35分からで、午前中5時間。その後に午睡の時間があります。図書館も閉まります。
 応用日本語科は2000年に開設。現在1、2、3年生(各学年1クラス50名)が学んでいます。日本語能力試験は2年生3級、3年生は2級が目標です。私は現在、1年生の会話、2年生の会話、閲読、日本文化、視聴、聴解、各時間で計12時間と週1回、夜日本語コーナーを担当しています。
 学生達は素直で熱心、夜も10時ごろまで教室で自習しています。
 ここ福清では日本語熱は高く、他学部の学生や教師の中にも日本語に関心を持っている人が大勢いるように思います。
 1クラス50人というのが一番の悩みです。それにコピーや印刷のシステムも整っていないので大変不便です。週1、2回のコピーを学生にまかせていますが、彼らは2人に1枚ですませています。
 
42, 日本語、日本に高い関心
燕山大学 894 高橋淑子
 燕山大学の外国語学院の日本語科は、本校と分校に分かれ、中国人教師6人と日本人教師4人で担当している。その分校の里仁学院で2年生3クラス68名の日語会話を週6コマ(12時間)担当し、教科書は「標準日本語」を使用している。2年生は週に、聴解2時間、文法8時間、長文読解2時間、会話4時間、計16時間の日本語授業を受けているが、彼らは一様に「聴解が苦手。会話が苦手。」と話す。秦皇島市には日本企業との合弁会社が数社操業しているが、日本人と接触することは殆どなく、短波放送を聞くしか生の日本語に触れることができないが、話すのが速すぎ、理解不能と言う。街の本屋では日本語ジャーナルが手にいる程度である。「日本の雑誌、新聞が見たい。日本の歌が聞きたい。日本の文化が知りたい。」と皆日本に高い関心を寄せ、向上心に燃えている。11月から学生が自主的に日曜日19時から2時間大教室を借り切って、1・2年生合同で催す「日本語コーナー」にはほとんどの学生が出席する熱意に応えて参加しているが、とても楽しい。小さな普通教室での授業は磁石も使えず、自前のCDデッキ、プリンターを使っている。中国人教師はとても親切で、いろいろと情報交換をし、助けてもらうことも多い。







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