日本財団 図書館


22, 不便さ! とても良い経験
青島濱海学院 940 横田隆志
 青島濱海学院は職業訓練としての学院で、日本語科は応用外国語部に属しており、約800人の生徒が日本語を学んでいる。そのため、就職する手段としての日本語を学んでいる生徒が多い。
 私は会話教育を専門としているため現在は2つの会話クラスと2つの視聴覚教材を使用して日本語を学ぶクラスを担当している。学生は月曜日から土曜日の午前中までの授業、朝、夜の自習とかなり長い時間、日本語を勉強している。能しかし、日本語運用力の面から見ると日本語のレベルは高いとはいえない。本学院は日本人教師の数が7人と、中国における他の大学、学院等と比較しても多い、しかし、一クラス約50人(会話クラスは約30人)という学生数の多さのため日本語を学習する時間は長いが、話す、聞く能力、いわゆるコミュニケーション能力を高めるための学習時間が短いように感じられる。図書館の日本語に関する本、また視聴覚教材等は皆無に等しく、これも教科書のみの学習になりがちな原因だと思う。
 また、高等中学で3年間日本語を学習した生徒、日本での生活経験がある生徒も全く日本語を学習した経験がない生徒も入学時に何の考慮もなく機械的に分けられているため、クラス内での日本語能力の差が大きい。そのため、授業のしにくさだけでなく、授業についていけない生徒、授業が物足りない生徒と生徒たちの学習意欲にも悪影響を与えているように思う。
 このように日本の大学における日本語教育とは全く違い、最初は少し戸惑いもあったが、中国での日本教育の問題点や「無いなら作る」といった教材開発の苦しさ、楽しさなど日本では感じなかったり、気づかなかったりした事を経験している。これらは日本語教育を専門として働いていくにはとても良い経験だと思う。これからも、「不便さ」に感謝しながら学生と供に「日本語」を学んでいきたい。
 
23, 一時帰国の際、後期の準備
南京大学 954 福島 理
 今年で創立100周年を迎えた南京大学は重点大学として、各地から優秀な学生達が集まっており、教授する側の意欲も自ずとかき立てられる。2年生は43名、それ以外の学年は25名程の学生数である。日本人教師は私の他には記者出身の先生が1名の2名。
 日本における高等学校の教員経験は長いが、外国語としての日本語を教えた経験のない私にとり、ここ数ヶ月は試行錯誤の連続であった。その中で次のような授業をした。○日語写作(2年生43名)は、毎回、課題作文を提出させ添削指導。授業では誤文訂正と作文研究と称して指導を行う。添削を通じて、中国語話者の作文においては、(1)文末表現の問題(テンス、アスペクト、「〜ている」形のそれぞれの使い分けに係わる誤用)、(2)文体の問題として作文の中に口語体を混用する問題、(3)語彙の面として漢語表現の影響による誤用などいくつかのパターンに分けられ、それらを指導することで生徒の作文作成上の間違えが減った。○日語会話(2年生43名)は決められた教科書はないので、方法として(a)パターン会話の練習(『標準日語会話(高等教育出版)』、『日語生活交際会話(外語共学研究出版)』の2冊を入手、それを参考にオリジナルプリントを作成)、(b)聴解の練習(新聞記事を読み学生に聴きとらせる。日本の歌等を聴かせ歌詞を書き取らせる等)、(c)二人一組でテーマを与えて10分間会話→発表→指導、(d)5分間スピーチ等を行った。その他に、○日語精読(3年生24名)は中国人教師が日語テキストを使用し、私は日本の高等学校『現代文』(大修館)をもとに授業を行った。○日語実践(4年生24名)では中日貿易会社等に就職希望をしている生徒のために、面接及び小論文対策の授業、履歴書の書き方指導等を行った。
 この冬、一時帰国するので、後期にむけては、DVDやビデオから起こしたVCD等授業で使える視聴覚教材(日本のドラマや「クローズアップ現代」等、日本の今の状況を紹介するもの)を準備したり、日本であらかじめ生徒分の教材を印刷・製本して用意する等の工夫をすることで、より効果的な授業が展開できるのではないかと考えている。
 
24, 学生に支えられている学校
上海市江川日本語寄宿制学校 906 竹本久雄
 学校への赴任は9月15日、授業の初日は9月22日、実質10ヶ月の日本語寄宿制学校(日本の専門学校の合宿学校という感じ)である。上海市の中心地からバスで1時間半程の経済開発区の田園地帯に在る。学校は上海市内でも最も多くの日本人を雇用している事業所(理事長の言)のようである。学生数は400人強で8クラス、12月現在も時々新入生が入ってくる。学生一人一人に日本名、男子は性(田中、山田など)、女子には名(百子、康代など)を付けている。本名はほとんどわからない。教育環境は図書館がない(蔵書無し)、印刷機が無いのでプリント学習はできない。チョークは悪く飛散する粉の吸引に注意を要する。教材は自主編成のテキストで誤りも多く、訂正しながら授業をしている。学生寮、教室には冷暖房は無く、冬期は5度以下の授業にも学生は防寒着で学習をしている。真面目で熱心な学生に支えられている学校と言えようか。学生の将来の希望は、日への留学、日本企業・日中合弁企業への就職、日本語を生かした仕事(観光ガイド、通訳など)であるようだ。礼儀正しく真面目で熱心な中国の青年の将来の開運を祈るばかりである。
 
25, 六割以上が女子学生
上海市江川日本語寄宿制学校 916 篠原正美
学校は、松江区の経済開発区の一番奥にあり、窓からはトウモロコシ畑や稲畑が見える。公害は少なく空気は新鮮であるが、暖かくなると蝿が多く発生し閉口している。
買い物は、近くの大港まで(歩いて15分)行けば、スーパーや市場があり、特に不便はない。衣類などは松江(バスで25分、2元)や上海で購入(上海まで1時間、バス7元)している。
学校は1997年9月創立、敷地面積は1800m2。敷地内に男子寮、女子寮、グランド(サッカー場、バスケットコート)、池、庭などが散在している。
生徒は18歳〜30歳の年齢構成で約400名、学生の6割以上が女子で、出身別では上海が6割を占める。
授業は、午前(3駒)、午後(3駒)、夜(1駒、自習)の構成で淺8:00より開始、60分授業である。授業内容は応用会話、文法、日常国語、聴解、総合練習、日本文化などであり、教科書は「江川日本語」を使用している。学生は20;15分に自習時間が終わって、21;30分までのコーヒールームでの日本人教師との自由会話時間を特に心待ちにし、楽しんでいる。
学生は1クラス約50名で編成されている。全部で8クラスである。礼儀正しく、一部の者を除き、非常に日本語学習に対する意欲は旺盛であり、毎日教える楽しみがある。
 
26, 準備されている教具は黒板とチョークだけ
上海市江川日本語寄宿制学校 929 浅野久美子
 今年度は9月21日始業式。15日に到着し、約1週間の準備期間があった。全校で学生は約400人で8クラスに分かれ、いわば日本の中学・高校のような体形で、教室にいっぱいである。教科は「会話」「口語」「聴解」「朗読」「作文」で、これらは日本人教師が1教科ずつ担当し、「文法」は中国人教師が担当している。1日4クラスに1コマ(60分)ずつ担当(1日に4回同じ授業をする)し、週16時間の時と12時間の時とある。他に課外で夜1時間、自由会話の時間が設けられているが、教師、学生とも参加は自由である。教科書は学校独自のもので、系統立っていないので、非常に進めにくい。また、年7冊あるそうだが、それも使用時期の間際にならないと配布されないので、学習予定も立てにくい。
 そして、聞いていた通り、学校に準備されている教具は黒板とチョークだけである。やはり、日本のチョークは乗りが良い。
 そんな中でも、学生は熱心に勉強し、特に日本の服装や生活様式などに興味がある。雑誌、写真など、実物のものをたくさん持っていくと良いと思われる。
 
27, 学生の誠意と熱意に支えられて
福建師範大学福清分校 908 木本紀子
 担当学年は3年生。初めは、会話、聴解、閲読、商務日語、日語作文の5教科、10時間であったが、11月後半より、産休の先生の精読、4時間が加わり、合計14時間を担当している。
 本校は、3年制専科学校。日語科の歴史は浅く、本年度最初の卒業生を出す。中国人教師3名、日本人教師2名の5名で、各学年48名程度の学生を担当している。学生の能力の差もあり、1クラス48名はあまりにも多すぎて、いきとどいた教育ができないと大学の教務にクラス編成の必要性を訴えている。
 教科書は、ほとんど中国でしか販売されていないもので、なかには、昭和40年代の資料に基づく文章であったり、挿絵の風俗が時代錯誤もはなはだしいものであったりして、使用しにくかった。日本から持ってきた資料、教材で、訂正をし、今の日本を学生に紹介している。
 福清の町は日本との商業取引のさかんなところで、日本語の需要度が高く、大学専科にも商業日本語が重要視されている。はじめは引き受けるのを躊躇したが、ニーズを無視するわけにもいかず、勉強しながら教えている。
 学生は純粋で真面目、授業も熱心で、夜遅くまで(10時過ぎまで)勉強している。3年生ともなると、日常会話は、ほぼできて、困ったときなど学生に頼んで通訳してもらっている。大学のシステムが十分にできていない不便さや、印刷事情の痛感しているが、学生の誠意と熱意に支えられて、授業を進めている。
 
28, どだい無理、1年余で「1級受験」
湖北汽車工業学院 419 小池健司
 当校は、湖北省十堰市の「東風汽車」の傘下にある「湖北汽車工業学院」に付属する「培訓中心」です。昨年は日本へ私費留学したい学生が1年余学ぶ学級が対象となっていましたが、本年は1クラスしかないため、大学のクラスも受け持っています。培訓初級・培訓中級と大学の第二外国語・日語公選課(一般教養)の4クラスを受け持っており、週13時間です(11月現在)。
 培訓初級クラスは「あいうえお」から1年3ヶ月で「日本語能力試験」の一級合格を目標とするには、無理があると思います。当センターと関係のある自動車短大や日本語学校へ留学するのが目的ですから、受験したと言うだけで、合格不合格はあまり関係ないのかも知れません。日語公選課も卒業に必要な単位のためという感じです。なにしろ一クラス63人もいるのですから。
 培訓中級は社会人クラスであり、「東風汽車」には日産自動車と技術提携をした部門もありますので、目的意識を持って取り組んでいます。
 教育機器は一応教室に置いてはあるが、使おうとすると音が出なかったり、リモコンが無かったりで使えたためしがありません。
 
29, 思わぬ学生からの「感謝状」
中国人民武装警察部隊学院 862 宮野和代
 本年の担当は、1年生3クラス、2、3、4年生各1クラスの「総合日本語・会話」を週6コマです。
 授業は1回につき100分(中10分休憩)行います。1クラス40人前後で「会話」はいささか困難です。本校のカリキュラムでは、1年の段階で、中国人日本語教師から、「中日交流標準日本語・上」を修得することになっています。
 学生の大半は、入学後初めて日本語に接し、中・高校時代から勉強してきた者は1割にも満たないそうです。
 学年が進むにつれ、かなりの実力差が認められます。
 学力の低い学生も、多少なりと日本語に親しめるように、ビデオや写真を使って、日本事情を紹介いたしました。この試みは成功で、学生の関心を高め、彼等から思いがけぬ感謝状が寄せられました。
 聴力カバーの為に、授業開始直後は、短いセンテンスの日本語をゆっくり発音するように心がけています。そして、ダイアローグ、ディクテーション、重要表現の暗記、歌唱等を通じて『楽習』を進めます。
 一方、「私の家族、或いは故郷」、「私の好きな人、または事」の題で作文を課し、添削指導も行いました。すると、次の課題を要求する学生や、毎週積極的に文章を書いてきたり、小論文をものしてくる者さえ現れました。その上、自主的に「日本語能力試験」1、2級の受験を目指す学生が増えましたので、彼等の相談には、いつでも乗るようにしています。
 
30, 豊かな時代の一人っ子学生
蘇州職業大学 864 塚本容子
 市立の三年制職業大学、日本語科の他に英語、機械、電子、美術、旅游科等がある。全学生数は約3,000人。
 2000年までは一学年70人の募集だったが、2001年から他大学の日本語学科増設や募集増のあおりで、応募減となり、現在1、2年とも1クラス30人前後だけとなった。
 二年目の本年一学期は、持ち上がりの2年会話「しんにほんごのきそII3時間。やはり持ち上がり3年精読「新編日語」3と4(上海外語教育出版社)8時間、能力試験リスリング補修2時間、計13時間を持つ。
 学生の学力は中程度。3年間に1,300時間以上日本語を学ぶ割には、1級合格者は皆無に近く、2級の合格率も余りよくない。豊かな時代の一人っ子学生は、甘やかされて育ち、勉強がきつく、勉強量は少ない。親元を離れての寮生活は自立心を育てるというよりも勝手気儘を助長している場合も見られる。
 それなのに、大学は未だに能率の悪い組織構造と昔のエリート教育用カリキュラムと教授方法を用いているため、教育効果が上がってないと言える。もう少し手をかけ、細やかに教育する必要があるように思える。
 
31, 朝鮮族、日本語に自信と誇り
延辺大学 924 石田統敏
 延辺大学は、吉林省延辺朝鮮族自治州の首府延吉市にあり、1949年3月創立の民族特色が鮮やかな地方性の濃い総合大学です。
 日語科の学生は、朝鮮族がほとんどを占めており、日常会話は朝鮮語を通用としています。中学から第2外国語として日本語を学習しており、学力は高く、学生自身日本語に対して強い自信と誇りを持っています。しかし、現在は中学校で大学2外国語として日本語ではなく、英語を選択する生徒が増えてきています。だから、大学1年生2クラスの内、クラスは中・高校で日本語を学習してきているが、もう1クラスは日本語初心者のクラスで編成されています。今後、この傾向は強まっていくようです。
 前期の担当教科は、3年生27人1クラスで、作文秀時間、文言日語(古文)週4時間です。後期は、作文指導は継続するが文言日語は他の学習に変更するようです。また、授業以外に卒論指導の担当が課せられるようです。
 語学力のレベルは高く、特に知識・理解の面では優れているので、教えやすい。しかし、発音・会話のレベルはやや劣るので、授業前に5分間のスピーチをしたり、グループ、パネル、ディベート・ディスカッションなど討論の場を作って指導しています。教科書は自作なので、古文は日本の中学・高校の国語教科書などをコピーして使っています。







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