日本財団 図書館


11, 学生は意欲的
中山大学 895 加藤知恵子
 担当は、2年生(32人)「日本概況」、2年生(16人)「会話」、3年生(11人)「会話」、4年生(15人)「会話」、研究生(17人)「日語教学」である。2年生は珠海校舎なので、水曜日の午後2コマ(1コマとは40分、10分、40分で比較的短い)、木曜日の朝1コマをやって広州に帰ってくる。資料を持ったり、洗面具、宿泊に必要な物をかついで高速バスにて約1時間30分揺られて往復するので、非常に負担である。
 まだ1年しか日本語を勉強していない2年生に日本の歴史、地理、政治経済を日本語だけで教えるのはどうかと思っているが、彼らは難しい、難しいと言いながらついて来ているのでその意欲的な姿勢に感心させられる。3年生の会話は2年生会話のテキストの続き「流暢日語会話」、「臨場模擬日語会話」(アルクの日本語テキスト中国版)、4年生はテキストもないので、ビジネス会話を自主編成して行っている。問題は研究生である。今年から始めたといわれているが、何をどのように教えるのか目標もはっきりしていないし、指示もない。研究生は1年から3年までの学生が一緒であり、先生になりたいと思っているものがいるので、「日本語教授法」なるものを講義したり、実習させたりしているが頭の痛い1コマである。
 
12, 全力を尽くすが限界がある
済南大学 664 和田美枝子
 本校は2001年4月に四つの大学、専門学校が合併してできたとのことで、日本語科は2002年9月に発足したばかりである。そのため、まだ確たる地盤が整っていないように見受けられる。教師陣は27〜34歳の中国人男性2人、女性1人で、よく言えば「若さ溢れる」反面、未熟で物足りないため、相談相手にはならず、孤軍奮闘するしかない。
 外事処には日本語を話せる担当者がおらず、諸連絡が不十分で、どっちを見ても居心地の悪いことこの上なしである。学生に早く日本語を修得させるしか楽しみがないので、目下、捩り鉢巻きで、無い知恵を絞っているところである。
 ビデオが使えず、テープも適当なものがなく、テキスト類の購入には難色を示されるので、手作りの教材準備に追われ、四苦八苦しなければならない。
 紙やマーカーを要求した時、ひと言文句を言われたのが癪で、以後は全て自費で賄い、コピーもはなから諦めて、労力で補っているものの限界があり、時に無力感に襲われてしまう。
 折角、日本から持参した資料や練習問題等を十分活用できないのは残念であり、教育にお金を出し惜しみをするようでは情けない限りだと憤懣やるかたない思いである。
 
13, 学校行事、変更の情報源は学生
浙江大学 923 水谷紀美子
 いろいろ予想外のこともありましたが、学生達の人柄のよいことにおいては先輩の方がたの言われていたとおりでした。2年生(15人)会話、3年生(16人)日本概況、作文、4年生(25人)精読週回、映画鑑賞、古文を担当しました。計、週14時間です。
 土曜日、日曜日は、専家楼の私の部屋に学生数人、図書館で知り合った職員さんなどが集まり、日本語と中国語で雑談をしました。宿舎が遠くなったのに、よく来てくれたと思っています。校舎新築に伴い、教室の設備も完壁になり、テープレコーダーは持参しなくてよくなり、全教室にコンピューターが配置され大変便利になりました。広大なキャンパスは、バスが巡回(未だ本数が少ないが)しており、学生の宿舎もこの中にあります。宿舎の近くには計2万人の人が利用できる4つの食堂があり、食事時間にはひとがあふれています。さながら、杭州市の中のひとつの町のように、自転車と人の多いエネルギーを感じる空間となっています。学校行事や変更などの連絡はきちんとしたシステムになっていないらしく、学生から情報を得た後、こちらから確認の電話を入れなければなりませんでした。
 
14, 中国は何処も同じでしょうか
同済大学 893 磯野達雄
 研修の時に「元を捨てなさい・・・。」と言われた意味の一端が分かった。担当の時間の内「私は元国語教師だからこれはできない。」とは言えない教科がある。あらゆる分野を網羅する「日本事情・社会」とかの教科がこれである。
 これは学生に、テーマに決めさせて演習形式でする。現今の問題、明日につながる出来事が矢っ張り学生の興味をそそる。いまの就職事情、初任給、留学関係、などだ。それに加えて”昨日のニュースから”で短く日本の出来事を発表させる。
 学生はインターネットで調べるので、資料部分には言葉の誤りは無い。自分の感想を述べる段になって、日本語の問題が出てくる。日本の事柄(7)を、日本語(3)で教える、くらいの比率です。
 担当の学生は3・4年級本科生で程度が高く、近代文学、古典、では漢語の熟語など良く知っている。同文同種の共通性を感じて、教えていて嬉しくなる。作文も500字のものを1週に1枚書かせている。添削推敲も学生同士のを入れてやり易くなった。
 コピー事情は悪い。1週前に願書を付して事務に頼むとかでは意欲減退だ。急ぎの時は自分で金を出して、生徒分コピーする。A4で1角。控え室の電気が故障したまま何週間も放置したり、録音機がいつの間にか紛失したり、事の直前に伝達されたり、今ではわざわざ書く気も起こらないほど慣れてきました。中国はどこも同じでしょうか。
 
15, 会議なく自分の判断で授業
甘粛工業大学 939 齋藤友子
 日本語科が出来て3年目、まだ卒業生はいないので、日本語を生かす職業につく、つける学生がどのくらいいるか、未知数である。1年46名、2年39名、3年28名。
 1年は2組に分けたが、2年の39名は会話には多すぎる。日本の出版物(新聞、雑誌、書籍類)は一切店頭では売っていないから、個人的に取り寄せるしかない。大学図書館も日本語関係の本は少なく、各教室にテレビ(ビデオ)は無く、コンセントさえ無い教室もある。
 テレビ、ラジオもチャンネル数は多いが、国際放送(英語)が書く1つ入るのみ。あとは中国語。日本映画もたまにはあるが、すべて中国語に吹き替え。こういった不利な状況は多々あるが、学生は総じて素直、純朴で友好的。学習にも意欲が感じられる。とても教えがいがある。
 日本語科の教師の話し合い(情報交換や共通理解図る場)はなく、一人一人が自分の判断で授業を進めているといった状態で、会議の多い日本と比べると、少し不安になることもある。アンテナを高くし、こちらからどんどん質問し、確認していく必要がある。日本語の堪能な学生、中国滞在の長い日本人の学生などが頼りである。
 体育館ほどもあろうかという広い食堂で、学生達とお喋りしながら食べるピリ辛蘭州料理の味、忘れられそうにない。
 
16, 学校側は2年生育成に力点
天津濱海国際語言専修学校 933 村井優子
 当校は今夏、引っ越しをし、新校舎にて新学期を迎えた。現在300名余りの学生を抱えた新設校である。以下私が担当している2〜3年生について紹介する。
 3年生は中専と呼ばれ、中学校を卒業と同時に当校に入学しており、卒業後は高校卒の資格が与えられる。高校から日本語の専門校に入学できるくらい、経済的に恵まれている学生が多いものの、学習意欲、向上心が著しく欠けている学生が多い。12月の2級試験を全員受験したが、カタカナすら読めない学生も多く、卒業後は親の経済力をもって日本に留学する学生が多いとのことである。
 2年生は高校卒業後当校に入学しており、精神的にも大人で人懐っこく、何事も吸収しようと意欲に燃える学生が多い。現在ロールプレイをさせているが、最初は人前で発表することに慣れておらず、しどろもどろだった学生たちも、今ではユーモア一杯、演技力あふれる会話を展開している。学校側も2年生の育成に力を入れており、12月より私は更に自由参加の会話クラスを担当することになった。今後はディベートやスピーチなども取り入れたく思う。
 設備的には恵まれておらず、古いコピー機(紙の下半分はかすれる)1台、古いビデオ1台あるのみで持参したプリンターや教材に頼らざるを得ない。
 
17, 日本への興味・関心は高い
忻州師範学院 932 市川 崇
 忻州師範学院は現在13学部を有する大学で、学生数は約2090名である。
 私が担当しているのは、外語系(英文専攻)学生の3年生56名の2コマ(4時間)と同じく1年生42名の2コマ(4時間)と外語系教師10数名の1コマ(2時間)、それに教師の会話指導が1コマ(2時間)で、計12時間である。
 教科書は3年、1年とも『標準日本語』の初級上、教師は中級上を使用している。「会話」については、全く自由で、色々は場面を想定した会話のやりとりをワープロで打って、それをコピーして教材にしている。コピーは教師に頼めば何枚でもしてもらえる。
 3年生の中には、中級の教科書が読めるくらいの者もいれば、日本語の学習は初めてという者もいて、習熟の差が大きい上に、56名という人数で机間巡視もままならない。その点1年は、日本語の学習については全員初めてで、同じ歩調で進めることができ、指導しやすい。しかし、両学年とも日本語や日本に対する興味・関心が強く、人なつっこく、真面目に取り組む態度は好感がもてる。
 難点は、照明がちょっと暗いのと、チョークが折れやすいことと、黒板消しが靴磨き用のブラシのような物なので、消すときにチョークの粉が舞い散ることだ。
 
18, 共通の苦手、長音、促音、撥音
青島濱海学院 927 山出明紀
 私は今、応用外語系(日、英、韓、独語)の中の日本語科、2年生1クラス(27人)と3年生2クラス(44人、45人)で「日本語会話」を担当しています。2年生3コマ(6時間)3年生2コマ×2(=8時間)で計14時間です。一応教科書に沿って授業をすすめています。あとについて読ませると、大きな声で比較的うまく読めますが、個別に読ませたり、たずねたりすると、まだまだうまくできません。また、分かって聞いているのかなと思って聞いてみると、理解不十分なところがあったりします。そんなこともあって私は聴解能力を高めることと、できるだけ学生の発話の機会を作るよう心がけながら取り組んでいるところです。中国の学生に共通する長音、促音、撥音の苦手も、気になりながらも、なかなか指導できていないのが実情です。
 たいていの学生は「日本語能力試験」1級・2級合格を目指してがんばります。それを見ると、自分の授業がどれ程役に立っているのか、自らに問いたくなる思いがします。こと印刷に関しては、もっと自由に手近で利用できれば助かるのにと思います。そんな中かで、日本語科主任をはじめ、他の中国人教師も好意的に接してくれるので何とかがんばっています。
 
19, 初級者には直接法で
南平師範高等専科学校 843 中西淑子
 日本人教師は英語学部学生に第二外国語としての日本語を教える立場にある。三年制の短大で日本語学習は二年生から始まる。高校で日本語を学んできた学生が他学部にいて、彼等のために夜の講座がある。今年度は日本語学部卒業の新任教師がいるので、昨年度よりは学生に要求に応じられている。更に来年度は日本語科創設の話がある。
 英語学部の学生に、第二外国語としての日本語を教える事は来年度も変わらないと思われる。入門期の学生に教える場合は直接法が可能で、絵カードやフラッシュカードなどを使えば、学生は十分理解してくれる。しかし、既に日本語を学んでいる学生は、読み書きは出来るけれども、聴力が全くない。言語伝達手段としてどうしても英語を使わざるを得ない。中国語が少しでも出来れば助けになるだろう。三十五名前後のクラスで英語も中国語も出来ない場合は、学生の日本語聴力が身に付くまで、いろいろ工夫しなければならない。最後に私が重宝している辞書をあげると、
新明解国語辞典 三省堂
日本語発音アクセント辞典 NHK放送文化研究所
岩波日中辞典
西索簡明中日辞典
 
20, 中国に来てよかった
遼寧省対外貿易学校 732 塚本潤二
 楽しい2年間でした。センターのお陰で生き甲斐のある定年後を過ごすことができました。今回は再派遣。最初の学校の経験が活きました。この学校は私がセンター派遣第一号なので後に続く方のためにもベストを尽くさねばならないという目的意識がありました。
 学生の目標は日本への留学。明確な目的があるため、学生は意欲があり、素直、熱心、授業に集中します。
 クラスの人数、リーダー性のある学生、授業に対する反応の良さなどに恵まれ、教える側も力が入ります。
 学校の良いところは「これこれをしてください。」とうるさく言わないことです。すべてまかせてくれます。こちらでどうするか、経験を基に考えた方がよい授業、よい教育になるようです。
 学校の良くないところは大規模校なのに、大連校には印刷機が一台もなく、印刷は旅順校でしかできないことです。印刷物を受け取るまで時間がかかり、しかも印刷は常に不鮮明、印刷機やコピー機などにもっと予算をまわし、教育の効果が上がるようにしたいものです。
 しかし、与えられた環境の中でベストを尽くす。これがわれわれの使命です。中国に来て良かった。大連に来てよかった。この学校に来て良かった。本当に楽しい2年間でした。
 
21, 猛勉強のせいか強度の近視多し
山西師範大学 931 前田潤子
 目下、日語系の教師4名のみで(生活環境のせいか教師の脱出願望が強いようです。)主任と私が専科生を、他の2名が第2外国語選択生を担当し、全員オーバーワークです。
 私は書類上聴解4、会話2、作文2の担当ですが、会話は少人数の班に分け10時間別に実施しつつ、文字語彙関連の授業をしています。学生はおしなべて純朴かつ勤勉で、授業のない時間も自習の学生で教室は満員です。ワンランク上の大学の大学院進学を目指したり、3年次の11月に受験する教師資格試験への準備が必要とあって、連日の猛勉強となるようです。電灯が暗いせいもあるのか、ほぼ全員強度の近視というのはいただけませんが、そんなわけで、授業中の態度は熱意に溢れ、真摯ですし、年長者・教師を敬う精神に篤く、彼等と接しているところでオーバーワークも環境の悪条件も相殺される、といったところです。







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