2.11 電路系統図作成要領
2.11.1 概要
電路系統図は、艤装設計の基幹図となる重要な資料であって、検査機関及び船主の承認を得るために提出される。また、艤装工数の算定資料として、予算書作成などに建造仕様書とともに基礎資料となるものである。
小型船舶等と云えども電気装置として小規模ながら動力、照明、無線通信、航海計器及び計測制御装置等をそれぞれ装備しており、これらの電路系統図を作成するにあたっては下記のような事項を考慮に入れて設計する必要がある。
(1)簡単にして理解し易いこと。
(2)合理的なシステムであること。
(3)保護協調が得やすいこと。
(4)材料面で経済的であること。
(5)艤装工事及び保守点検が容易であること。
(6)作業性を考慮したものであること。
ケーブルは艤装材料として価格的に比較的大きなファクターを占めるものである。小型船舶等では船用電線(JIS
C 3410:95)以外に下記に示すような電線も多く使われている。絶縁の種類及び保護被覆等の選定にあたっては 第3編2.2ケーブルの項を参照し、その特性を把握して各布設場所に適応したものを使用する。電路系統図にはケーブルの種類及びサイズを記入する。
(1)600Vビニル絶縁ビニルキャブタイヤケーブル
(VCT):JIS C 3312:93
(2)600V制御用ビニル絶縁ケーブル
(CVV):JIS C 3401:92
(3)自動車用低圧電線
(AV):JIS C 3406:93
(1)ケーブルは、機器の定格電流及びその回路の保護装置の設定電流以上の許容電流を持ったサイズとしなければならない。
(2)電動機へ単独給電する場合のケーブルは、電動機の定格電流に対する余裕度10(%)を考慮に入れて、電動機の定格電流の110(%)以上の許容電流を持ったサイズとする。
(3)配電回路の電圧降下については特に主機、補機始動用電動機回路について注意をすること。
電動機回路のMCCBの設定値及びケーブルサイズの関係図の例を次に示す。
(拡大画面:24KB) |
|
Ib:MCBBの設定電流値
Im:電動機定格電流
Ic:ケーブルの許容電流
Il:電動機以外の負荷又は小形電動機
始動用電動機の始動時の瞬時電流及び始動用電動機と蓄電池間のケーブル長さによる電圧降下を十分考慮に入れ、かつ主機/補機メーカと協議の上、ケーブルサイズを決める必要がある。参考として最近におけるケーブルサイズの使用実績とケーブル長さを約6mとした場合の電圧降下の計算例と舶用ディーゼル主機関の電装関係資料を次表に示す。
始動電動機V−kW |
電流(A) |
ケーブルの種類とサイズ |
R2O |
K1 |
6m時の瞬時電圧降下(V) |
整定 |
瞬時 |
Ω/m |
12−1.3 |
約95 |
約200 |
AV30 |
0.520×10−3 |
1.236 |
1.54 |
SPYC−35 |
0.524×10−3 |
1.260 |
1.58 |
12−1.8 |
120 |
250 |
AV40 |
0.428×10−3 |
1.236 |
1.59 |
SPYC−35 |
0.524×10−3 |
1.260 |
1.98 |
12−2.5 |
175 |
400 |
AV50 |
0.337×10−3 |
1.236 |
2.0 |
SPYC−50 |
0.387×10−3 |
1.260 |
2.34 |
12−4.0 |
170 |
350 |
AV60 |
0.287×10−3 |
1.236 |
1.49 |
SPYC−70 |
0.268×10−3 |
1.260 |
1.42 |
24−5.5 |
230 |
460 |
AV60 |
0.287×10−3 |
1.236 |
1.96 |
SPYC−70 |
0.268×10−3 |
1.260 |
1.86 |
24−6.0 |
250 |
500 |
AV85 |
0.215×10−3 |
1.236 |
1.59 |
SPYC−95 |
0.193×10−3 |
1.260 |
1.46 |
24−7.4 |
310 |
620 |
AV100 |
0.168×10−3 |
1.236 |
1.54 |
SPYC−95 |
0.193×10−3 |
1.260 |
1.81 |
24−10 |
410 |
830 |
AV100 |
0.168×10−3 |
1.236 |
2.07 |
SPYC−150 |
0.124×10−3 |
1.260 |
1.56 |
24−5.5×2 |
460 |
910 |
AV100 |
0.168×10−3 |
1.236 |
2.27 |
SPYC−150 |
0.124×10−3 |
1.260 |
1.71 |
24−9.5×2 |
840 |
1600 |
AV100 |
0.168×10−3 |
1.236 |
3.99 |
SPYC−185 |
0.099×10−3 |
1.260 |
2.40 |
(備考) |
1)AVのビニル絶縁体の場合、最高許容温度は80℃となり、導体抵抗温度係数は1.236となる。 |
2)AV電線のケーブルサイズは呼び100mm2が最大。 |
3)SPYCのEPゴム絶縁体の場合、最高許容温度は85℃となり、導体抵抗温度係数は1.260となる。 |
4)周囲温度、エンジン型式等により電流が大きく変動するので、エンジンメーカに確認するか実測する必要がある。 |
|
直流2線式電圧降下計算式
LD(V)=R20×K1×2l×I
LD(%)=R20×K1×2l×I×100/V
例)24V−6kWの場合(AV電線を使用)
LD(V)=0.215×10−3×1.236×2×6×500
=1.59V
ここで
LD(V):電圧降下(V)
LD(%):電圧降下率
l:ケーブル片道の長さ(m)
I:回路電流(A)
V:回路電圧(V)
R20:導体温度が20℃における導体の直流抵抗 (Ω/m)
K1:絶縁体の最高許容温度における導体抵抗温度係数
主機関連続定格出力
(PS) |
始動用電動機
(V−kW) |
オルタネータ
(V−A) |
標準蓄電池容量
(V−Ah) |
24 |
12−1.0 |
12−55 |
12−100 |
30 |
12−1.4 |
12−55 |
12−120 |
40 |
12−2.5 |
12−55 |
12−120 |
80 |
24−4.0 |
24−25 |
24−120 |
110 |
24−4.0 |
24−25 |
24−120 |
130 |
24−4.0 |
24−25 |
24−120 |
160 |
24−4.0 |
24−25 |
24−120 |
190 |
24−4.0 |
24−25 |
24−120 |
245 |
24−4.0 |
24−25 |
24−120 |
290 |
24−4.0 |
24−35 |
24−150 |
360 |
24−4.0 |
24−35 |
24−150 |
450 |
24−5.0 |
24−35 |
24−150 |
480 |
24−6.0 |
24−35 |
24−150 |
570 |
24−6.0 |
24−35 |
24−150 |
|
|